質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第二八六号

内閣参質一七七第二八六号
  平成二十三年九月六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員秋野公造君提出諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係る環境アセスメント結果素案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員秋野公造君提出諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係る環境アセスメント結果素案に関する質問に対する答弁書

一の1について

 諫早湾干拓事業(以下「本事業」という。)に関する平成二十二年十二月六日の福岡高等裁判所の判決(以下「福岡高裁判決」という。)に従い、潮受堤防の排水門(以下単に「排水門」という。)を開門するに当たっては、開門の方法、時期及び期間について、検討を行いつつ関係者と話合いを行っているところである。排水門を開門すれば、調整池に海水が流入し塩水化するとともに、諫早湾における潮流速が変化するなど、諫早湾を含む有明海の漁場環境に変化を生じさせる可能性があると考えている。

一の2について

 平成二十三年六月十日に農林水産省が公表した「諫早湾干拓事業の潮受堤防の排水門の開門調査に係る環境影響評価準備書(素案)」(以下「準備書素案」という。)においては、開門の方法について、①開門当初から排水門を全開とする方法(以下「ケース一」という。)、②調整池への海水導入量を段階的に増加させ、最終的には排水門を可能な限り全開とする方法(以下「ケース二」という。)並びに③調整池の水位や流速を制限する方法のうち調整池の水位の上限を高く設定するもの(以下「ケース三―一」という。)及び調整池の水位の上限を低く設定するもの(以下「ケース三―二」という。)を選定している。
 このうち、ケース三―二については、開門の方法は、御指摘の平成十四年の短期開門調査と同じであるが、開門の期間を、同調査の約一か月間に対し、五年間としており、両者は大きく異なっている。

一の3について

 準備書素案においては、ケース一及びケース二では護床工を設置することにより、また、ケース三―一及びケース三―二では排水門付近の流速を制限することにより、排水門周辺における著しい洗掘等を防ぎ、諫早湾内の漁業への影響が極力生じないよう努めることとしている。

一の4について

 準備書素案においては、農業用水の代替水源について、既設井戸への影響、地盤沈下等が生じないよう、既設井戸が主に取水している帯水層より深部にある深度約三百メートルの帯水層から取水することとしている。
 また、地下水を利用した農業用水の代替水源の設置については、排水門の開門を行う国が責任をもって対応する必要があると考えている。

一の5について

 準備書素案においては、御指摘の塩害の問題について、開門に伴い塩水が浸透すると想定される排水路に排水ポンプを設置することにより、農地への塩水の浸透を抑え、塩害を防止することとしている。また、御指摘の潮風害の問題について、風向及び風速のほか、飛来する塩分量を調査した上で、散水を行うこととしている。
 これらの対策の具体的な方法については、関係者と協議しつつ検討していきたいと考えている。

一の6について

 準備書素案においては、調整池に流入するほとんどの河川が三十年に一回程度の大雨に対応できるよう整備されてきていることから、これと同様の水準により、調整池の周辺に設置されている堤防に対する影響を検討している。また、調整池の周辺に設置している排水ポンプが十年に一回程度の大雨に対応できるよう配置されていることから、これと同様の水準により、排水ポンプを増設することを計画している。
 御指摘のような土砂の排除、施設の管理等については、排水門の開門を行う国が責任をもって対応する必要があると考えており、今後、関係者と協議していきたいと考えている。

一の7について

 準備書素案においては、ケース一及びケース二について、大潮時に三十年に一回程度の大雨が降った場合でも、背後地の既設堤防の安定性に問題は生じないとしている。また、既設堤防の老朽化等に対する補修を計画している。

二について

 福岡高裁判決について上告しなかった理由は、先の答弁書(平成二十三年二月八日内閣参質一七七第三二号)一の1、4及び6、五の2並びに七の4についてでお答えしたとおりである。他方、本事業に関する平成二十三年六月二十七日の長崎地方裁判所の判決(以下「長崎地裁判決」という。)については、国が漁業協同組合との間で漁業補償契約を締結しているにもかかわらず、当該漁業協同組合の組合員である漁業者に漁業補償を行ったとは認められないとして当該漁業者の損害賠償請求を認めたことが、国としては受け入れられないものであることから、控訴したものである。
 長崎地裁判決が確定した場合の公共事業への影響については、長崎地裁判決が確定していないことから、現時点で答弁することは差し控えたい。