質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第二七四号

内閣参質一七七第二七四号
  平成二十三年九月六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員草川昭三君提出原子力発電の減少とその影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員草川昭三君提出原子力発電の減少とその影響に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「三月十一日の地震で被災したもの」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「今回の地震」という。)により自動停止した原子炉は、東北電力株式会社(以下「東北電力」という。)の女川原子力発電所第一号機から第三号機まで、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所第一号機から第三号機まで及び福島第二原子力発電所第一号機から第四号機まで並びに日本原子力発電株式会社の東海第二発電所の合計十一基である。
 お尋ねの首相の要請により停止した原子炉は、中部電力株式会社(以下「中部電力」という。)の浜岡原子力発電所第四号機及び第五号機の合計二基である。
 御指摘の「直接的な地震の影響はないものの定期点検後再稼働していないもの」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十四条の規定に基づく定期検査中の原子炉のうち、現時点において、当初の定期検査申請書における検査の終了予定日までに当該検査が終了していない原子炉(以下「定期検査が予定どおり終了していない原子炉」という。)は、北海道電力株式会社の泊発電所一号機、東北電力の東通原子力発電所第一号機、中部電力の浜岡原子力発電所第三号機、北陸電力株式会社の志賀原子力発電所第二号機、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)の美浜発電所第一号機及び第三号機、高浜発電所第一号機並びに大飯発電所第一号機及び第三号機、四国電力株式会社の伊方発電所第三号機、九州電力株式会社(以下「九州電力」という。)の玄海原子力発電所第二号機及び第三号機並びに川内原子力発電所第一号機の合計十三基である。
 また、御指摘の「発電電力量の合計は何キロワット」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、同法第四十七条に規定する工事の計画に記載されている発電所の出力の合計は、今回の地震により自動停止した原子炉については九百七十二万キロワット、首相の要請により停止した原子炉については二百四十・四万キロワット、定期検査が予定どおり終了していない原子炉については千百八十五・一万キロワットである。

二について

 御指摘の「地震前の計画」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、電気事業法第二十九条の規定に基づき各電気事業者が作成し経済産業大臣に届け出る平成二十三年度の供給計画によれば、一についてでお答えした原子炉のうち、首相の要請により停止した原子炉及び定期検査が予定どおり終了していない原子炉を、今回の地震が発生した平成二十三年三月十一日から同年八月三十一日まで運転した場合の発電電力量の合計は、約三百四十三億キロワットアワーである。なお、東北電力の東通原子力発電所第一号機の発電電力量については、東北電力の平成二十三年度の供給計画が、東日本大震災の影響を踏まえ、今後提出されることとなっているため、この発電電力量の合計には含まれていない。

三及び四について

 御指摘の他の発電方式によって代替した場合の二酸化炭素排出量の増加量については、二についてでお答えした発電電力量を代替した発電所を特定できないこと等から、お答えすることは困難である。仮に、全てを火力発電により代替した場合には、「当面のエネルギー需給安定策」(平成二十三年七月二十九日エネルギー・環境会議決定)の策定に当たり用いた前提等を基に試算すると、二酸化炭素排出量が約千六百万トン増加するものと算出される。この排出量は、基準年の温室効果ガスの排出量の約一・三パーセントに相当する量である。
 また、御指摘の燃料費の増加額を試算すると、約四千億円となる。この燃料費の増加に伴う一キロワットアワー当たりの影響額については、現時点においては、各電気事業者の平成二十三年三月十一日から同年八月三十一日までの販売電力量を把握していないため、お答えすることは困難であるが、燃料費の増加額の試算額、昨年の同期間における販売電力量等を基に経済産業省において試算したところ、一キロワットアワー当たり約一・五九円の費用の増加が見込まれる。ただし、電気料金の変更については、燃料費や経費を含め、総体的な原価の動向を踏まえた上で各電気事業者が判断するものであり、政府としては、現時点においてお答えすることは困難である。

五について

 政府としても、原子炉の再起動を含む原子力発電の利用に当たっては、御指摘のとおり、政府が前面に立って立地地域の住民及び国民に対し、原子力発電への理解を得るべく説明することが重要であると考えている。

六について

 東日本大震災が、今後の我が国のエネルギー需給、経済等に与える影響については、現時点においては見極めることが困難である。全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を前提とした温室効果ガスの排出量を二十五パーセント削減するとの目標については、現時点においては変わりはないが、いずれにせよ、地球温暖化対策については、地球温暖化問題の地球規模での解決に向けてどのように貢献できるか、引き続き検討してまいりたい。

七から九までについて

 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(平成十七年条約第一号。以下「京都議定書」という。)の目標達成については、二千八年から二千十二年までの五年間の温室効果ガスの排出量及び吸収量に基づき評価されるものであり、当該目標の達成の見通しについては、現時点においてはお答えできる状況ではない。このため、御指摘の「クレジットの購入」の必要性について、現時点においては判断できる状況ではない。政府としては、引き続き当該目標の達成に向けて取り組んでいく所存であり、現時点においては、御指摘の「不可抗力を主張すること」についての検討は行っていない。

十について

 政府としては、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際的枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の速やかな採択という最終目標を目指し、引き続き粘り強く関係国に働きかけを行っていきたいと考えている。御指摘の京都議定書の第二約束期間の設定については、我が国を含む一部の先進国のみが温室効果ガスの排出削減義務を負う現行の枠組みを固定化することとなり、地球規模での排出削減につながらないため、賛同できないとの立場に変わりはない。