質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇二号

内閣参質一七七第二〇二号
  平成二十三年六月二十八日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出有害物質のリスク管理と施設廃止後の地下水汚染の未然防止対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出有害物質のリスク管理と施設廃止後の地下水汚染の未然防止対策に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成十一年法律第八十六号。以下「化管法」という。)に基づき、化管法第二条第五項に規定する第一種指定化学物質等取扱事業者が同条第二項に規定する第一種指定化学物質の排出量及び移動量を主務大臣に届け出なければならないこととするとともに、指定化学物質等取扱事業者が講ずべき第一種指定化学物質等及び第二種指定化学物質等の管理に係る措置に関する指針(平成十二年環境庁・通商産業省告示第一号)を制定すること等により、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進している。また、第三次環境基本計画(平成十八年四月七日閣議決定)に基づき、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)に沿って、国際的な観点に立った科学的な環境リスク評価の推進や、有害な化学物質を代替するための技術開発も含めた効果的・効率的な環境リスク管理の推進等の取組を実施している。
 これらの取組により、例えば第一種指定化学物質の環境への排出量が平成十三年度の約三十一・三万トンから平成二十一年度の約十七・六万トンに減少する等、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質の代替や排出の低減は進んでいると考えられるところであり、政府としては、なお一層の化学物質の環境リスクの低減に向けて、引き続き最新の科学的知見を踏まえつつ、科学的な環境リスク評価、効果的・効率的な環境リスク管理等の取組を進めてまいりたい。

二について

 御指摘のとおり、リスクコミュニケーションは重要であると認識しており、その推進を図ることができるよう、水質汚濁防止法の一部を改正する法律(平成二十三年法律第七十一号。以下「改正法」という。)の施行までに事業者等向けのマニュアルを作成することとし、御指摘の内容についても、今後、関係する検討会において外部有識者による検討を進めてまいりたい。

三及び四について

 改正法において、有害物質使用特定施設及び有害物質貯蔵指定施設に係る構造基準等の遵守義務が創設されるとともに、これらの施設の定期点検やその結果の記録等が新たに義務付けられたところである。都道府県知事においても、これらの施設の状況を詳細に把握できるようになることから、御指摘の点について、改正後の水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)の施行状況等を十分に見極めた上で検討してまいりたい。

五について

 倒壊した石綿関係施設(石綿使用建物)の数並びにポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)の保管施設の数、当該施設におけるPCBの保管量並びに当該施設からのPCBを含んだトランス及びコンデンサの回収個数については、把握していない。なお、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成十三年法律第六十五号)第八条の規定に基づき届出が行われている同法第二条第一項に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管の状況については、関係県市による調査の結果、平成二十三年六月二十日時点において、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県及び千葉県においてトランス三十六台、コンデンサ八十六台が保管場所にないことが確認されている。

六について

 お尋ねの安全対策の周知徹底については、首相官邸や環境省等のホームページにおいてボランティア等への石綿に関する基礎知識の情報提供等を行っているところである。また、ボランティアを受け入れる被災地の地方公共団体に対して、ボランティア等への石綿対策に関する情報提供及び防じんマスクの着用方法についての周知徹底を依頼するとともに、ボランティアを送り出す被災地以外の地方公共団体に対しては、被災地に入る予定のボランティアが防じんマスク等の装備を持参するよう注意喚起を依頼しているところである。なお、防じんマスクについては、関係省庁において無償配布等を行ってきたところである。
 さらに、石綿及びPCBが混入した廃棄物の取扱いに関して、被災地の地方公共団体に、飛散防止等の安全対策について周知徹底を依頼するとともに、環境省のホームページにおいて周知しているところである。

七について

 東日本大震災におけるボランティア等の個々の作業の内容や期間等の把握は、従事する作業の内容や期間が多岐にわたること等のため困難と考えているが、政府としては、石綿の飛散している可能性が高い地域を含めて大気環境モニタリングを実施しており、その数値も参考にしながら、引き続き必要な未然防止策を図ってまいりたい。また、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)については、平成二十三年六月に中央環境審議会の答申「石綿健康被害救済制度の在り方について」が取りまとめられたところであるが、その中で、「東日本大震災により、倒壊した建築物等からの石綿飛散が懸念され、それによる健康被害が将来起こるおそれも存在することから、引き続き、こうした未然防止策の推進を図ることが重要である」と指摘されているところであり、このような指摘も踏まえ、適切に対応してまいりたい。