質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一九四号

内閣参質一七七第一九四号
  平成二十三年六月十七日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員礒崎陽輔君提出東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害に関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員礒崎陽輔君提出東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害に関する第三回質問に対する答弁書

一の1及び2について

 お尋ねの「所要の工事を行って電源車から電力を供給すること」ができなかったこと及び「同時刻まで淡水注入を行うこと」ができなかったことについて、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)によれば、大津波警報発令の中で障害物散乱等による劣悪な作業環境であったことに加え、度々の余震の発生で作業中断を強いられたことなどから、作業が難航したことが理由であるとのことである。

一の3について

 御指摘のとおり、平成二十三年六月七日に、政府が公表した「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)においては、東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)第一号機から第三号機までについて、現時点での解析結果として、原子炉圧力容器の底部が損傷し、溶融した燃料の一部が原子炉格納容器内に堆積している可能性があると考えられる旨を記述していることは事実である。お尋ねの「メルトスルー」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、仮に当該記述の事象をいうのであれば、当該事象が既に発生している可能性はあると考えられる。ただし、ここで得られた解析結果は、現時点の限られた情報等に基づくものであり、今後、原因調査が進むに従い、新たな解析結果が得られることがある。

二の1について

 東京電力によれば、平成二十三年三月十二日午後二時五十三分までに八万リットルの淡水を注入したが、その後、どの時点で淡水の注入が停止したか不明であるが、同日午後三時三十分過ぎに水素爆発と思われる爆発が発生するなど作業の実施が極めて困難な状況であったため、原子炉圧力容器への海水注入が開始されない状況が続いていたとのことである。

二の2について

 東京電力によれば、どの時点で淡水の注入が停止したか不明であり、淡水注入の停止時刻については、政府に連絡していなかったとのことであるが、菅内閣総理大臣、海江田経済産業大臣を始めとした関係者は、淡水がなくなった場合には、原子炉の冷却のために海水注入が必要となるとの認識で一致していた。こうした認識の下、平成二十三年三月十二日午後六時より、同内閣総理大臣、同経済産業大臣、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)、原子力安全委員会、東京電力等の間で、その時点において準備段階にあった海水注入についての協議を行った。

二の3について

 御指摘に係る政府内の情報共有の在り方については、今後検証してまいりたい。

二の4について

 福島第一原子力発電所について、海江田経済産業大臣は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十四条第三項の規定に基づく命令であることを念頭に、東京電力に対して口頭による原子炉容器への海水注入の実施を命令した事実は認識していたところ、同命令が東京電力に確実に伝わったことを示す根拠がなかったことから、これまでは、平成二十三年三月十二日午後八時五分の同項に基づく海水注入等の実施命令の公文書の完成をもって、同大臣が同項に基づく海水注入の実施を命令した時刻としていた。
 その後、同年五月二十九日に、東京電力から、同年三月十二日午後六時五分に同大臣から法令に基づく指示を受けたことを示す資料が見つかったとの報告があった。これにより、同大臣の同項に基づく口頭による海水注入等の実施命令は、確実に東京電力に伝わったことが確認され、これを契機とし、改めて関係資料の精査や同大臣を含む関係者に確認を行った結果、同命令が同日午後五時五十五分に行われたものとすることが妥当であると判断したものである。

二の5について

 東京電力によれば、東京電力が官邸に派遣した者が、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器への海水注入は菅内閣総理大臣が判断するものであり、同内閣総理大臣の判断がない中で、同容器への海水注入は実施できないというのが官邸の様子であった旨の連絡をしたとのことである。なお、東京電力によれば、同容器内への海水注入を停止するとの決定は、このような連絡を受けた東京電力の本店原子力緊急時対策本部及び福島第一原子力発電所原子力緊急時対策本部の双方が協議した結果であるとのことである。

二の6について

 先の答弁書(平成二十三年六月七日内閣参質一七七第一六九号)三の2の(11)については、菅内閣総理大臣が、平成二十三年三月十二日午後七時四分に開始された海水注入に関する全体の経緯や関係者の対応状況も含めて承知したのは、同年五月二十日に報道がなされた後であるということをお答えしたものである。また、海江田経済産業大臣が御指摘の海水注入について承知したのは、同年四月下旬である。