質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八〇号

内閣参質一七七第一八〇号
  平成二十三年六月十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員藤井基之君提出新型インフルエンザワクチンに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤井基之君提出新型インフルエンザワクチンに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの国産ワクチンと輸入ワクチンの買上げ価格の差については、輸入ワクチンにのみ免疫補助剤が含まれていること等の理由でワクチンの原価に差があること等から生じたものである。

二について

 厚生労働省としては、お尋ねの買上げ価格及び払出し価格の設定に当たり、財務省に対し、随時、事務的に情報提供を行っていたが、同省との間で協議を行ったことはない。

三について

 お尋ねについては、平成二十二年十月以降、新型インフルエンザワクチンと同じ有効成分を含み、より安価な季節性インフルエンザワクチンが供給されることとなったことから、当該季節性インフルエンザワクチンの価格を踏まえて新型インフルエンザワクチンの価格を引き下げたものである。

四について

 厚生労働省としては、お尋ねの医療機関において在庫となっていた国産ワクチンの回収費用(以下「回収費用」という。)を国が負担することについての検討に当たり、財務省に対し、随時、事務的に情報提供を行っていたが、同省との間で協議を行ったことはない。
 また、回収費用について国が負担しないこととした理由は、厚生労働省から医療機関に対して国産ワクチンの払出しを行うに当たり、その当時、世界的にワクチンの需給がひっ迫している中で、不当な買占めを防ぐ等のため、払い出したワクチンの返品を認めないこと等を条件とし、医療機関に国産ワクチンの払出しを行っていたからである。厚生労働省としては、今後、新型インフルエンザが発生し、今回と同様に国がワクチンの流通管理を行う場合には、医療機関における過剰在庫の発生防止のための対策等を検討してまいりたい。

五について

 政府としては、新型インフルエンザワクチンの接種回数については、新型インフルエンザ対策本部において「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種の基本方針」を定めた平成二十一年十月一日の時点では、これまでの国内外の知見から国際的に二回接種が前提と考えられていたことから、危機管理の観点から、二回接種を前提として、必要な量のワクチンを確保することとしたものである。なお、その時点においても、一回接種の有効性について議論があったが、その国際的な評価は一定ではなく、ワクチンの接種回数の見直しのためには、国内の臨床研究の結果等に基づく検討が必要であった。
 このため、国内における健康な成人を対象とした臨床研究(以下「成人対象臨床研究」という。)を実施したところ、一回接種で良好な効果が得られるとの中間的な結果が得られたことから、同月十六日及び十九日の「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」(以下「意見交換会」という。)において、当該結果等について検討を行い、その検討結果を踏まえ、同月二十日、新型インフルエンザの診療に直接従事する医療従事者については一回接種、十三歳未満の者については二回接種、それ以外の者については、更に知見を収集して判断するという方針で対応することとし、各都道府県等に対し、その旨を周知した。
 その後、成人対象臨床研究を継続して実施したところ、一回接種と二回接種による効果に差が見られない等の中間的な結果が得られたことから、同年十一月十一日に開催した意見交換会において、当該結果等について検討を行い、その検討結果を踏まえ、同日に、高校生に相当する年齢を超える者(妊婦を含む。)については一回接種、基礎疾患を有し著しく免疫反応が抑制されている者については二回接種としても差し支えないこと、十三歳以上であって高校生に相当する年齢以下の者については当面二回接種とするが更に知見を収集して判断するという方針で対応することとし、各都道府県等に対し、その旨を周知した。
 さらに、国内における中学生及び高校生を対象とした臨床研究において一回接種により免疫が得られるとの中間的な結果が得られたことから、同年十二月十六日に開催した意見交換会において、当該結果等について検討を行い、その検討結果を踏まえ、同日、十三歳以上であって高校生に相当する年齢以下の者については一回接種とすることとし、各都道府県等に対し、その旨を周知した。

六について

 厚生労働省としては、今後、ワクチンの製造・流通業者等との意見交換の場を設け、これらの者から意見を聴取した上で、ワクチンを迅速かつ円滑に供給できる体制の構築に関する検討を行うとともに、ワクチンの製造・流通業者も参加している「新型インフルエンザ専門家会議」において、新型インフルエンザ対策行動計画や関連するガイドラインの見直しの検討等を行ってまいりたい。

七について

 お尋ねの事業については、全ての国民に必要とされるワクチンを生産する期間を半年に短縮するため、ワクチンの新たな生産方法を開発し、当該方法による生産体制を五年間で整備することを目的とするものである。現在、実験用工場において新型インフルエンザワクチンの実生産規模での製法の検討等が終了し、実生産工場の整備を行うために、平成二十三年三月に公募した事業者の採択に向けた申請者の評価を行っているところである。