質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七〇号

内閣参質一七七第一七〇号
  平成二十三年六月七日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員浜田昌良君提出歪んだ政治主導による「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」と賦課金負担軽減策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出歪んだ政治主導による「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」と賦課金負担軽減策に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 御指摘の「推計」を行うためには、個別企業の電力購入量及び総付加価値中の電力コストを正確に把握した上で推計を行う必要があるが、国はこれらを網羅的に把握することとはしておらず、したがって、現時点でお示しすることはできない。
 ただし、例えば電炉業については、関係業界団体から聴取した当該業界団体に属する企業の電力購入量のデータを基に、当該業界団体に属する四十七社の全てが御指摘の「ドイツでの軽減措置の基準」に該当していると仮定した上で、その賦課金の負担を九十八パーセント減ずることとして試算を行えば、二千二十年度における負担軽減総額は約八十三億円となり、賦課金総額の約一・七パーセントを占める。また、仮にこの負担軽減分を他の者から回収した場合には、同年度の賦課金額はキロワット時当たり〇・五〇円から約〇・〇一円程度上昇することとなり、一般家庭においては、月当たり百五十円とされる負担額が二円から三円程度上昇すると推計される。

四について

 御指摘の「予算措置」の内容が必ずしも明らかでないが、仮に「軽減した賦課金に相当する金額」について「本法案に規定する「費用負担調整機関」」にエネルギー対策特別会計から支出を行うということだとすれば、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第八十五条に規定する目的に仮に合致すると解釈できるとしても、特別会計に関する法律施行令(平成十九年政令第百二十四号)第五十条又は第五十一条に規定する措置等の中で合致するものはない。また、「軽減した賦課金に相当する金額」について毎年度確実に予算を充当することは必ずしも担保できるものではないと考えられる。

五について

 デンマークにおいては、固定価格買取制度に伴う賦課金は、エネルギーに関連する研究開発に要する費用等と併せてパブリック・サービス・オブリゲーションという名称の料金(以下「パブリック・サービス・オブリゲーション料金」という。)として電気料金と同時に回収される仕組みとなっており、また年間の電力需要量が一億キロワット時を超える需要家に対して、当該超過部分に適用されるパブリック・サービス・オブリゲーション料金が、約五十パーセント軽減されることとなっている。

六について

 仮に一部の業種・企業に軽減策を実施した場合には、当該軽減策の対象にならなかった者から、その負担を軽減するよう要望が出ることが推測される。
 このため、政府としては、我が国の再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入に当たっては、制度の運営によって発生する国民負担は、電力需要家の態様にかかわらず電力使用量に応じて一律に負担されることが適当であると考えている。

七について

 経済産業省としては、「産業界の強い要望がありながらも四のとおりの負担軽減方式を検討しなかった理由」として、御指摘の「民主党の方針として、再生可能エネルギーの振興に予算を投入しないことを原則としている」ことを挙げた事実はない。

八について

 東日本大震災の影響により原子力発電所が停止することによって、発電電力量に占める原子力による発電量の比率が低下すれば、発電コストが上昇し、電気料金を引き上げる要因となる。一方、事業者による経営効率化と経費削減等の取組が進展すれば、これは電気料金を引き下げる要因となる。電気料金の水準は様々な要因により変動するため、中長期的な料金の水準を見通すことは困難であると考えている。

九について

 御指摘の「将来目標」が、本年五月二十六日及び二十七日に開かれた主要国首脳会議における菅内閣総理大臣の「発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を、二千二十年代のできるだけ早い時期に、少なくとも二十パーセントを超える水準となるよう、大胆な技術革新に取り組みます」との発言の中でのものを指すとすれば、これは再生可能エネルギーの導入拡大に向けた決意を述べたものであり、再生可能エネルギー源別の方針を出したものではなく、また、「本法案」に係る御指摘の「前提条件」を変えるものではない。

十について

 エネルギー政策については、東日本大震災を踏まえ、今後、抜本的な検討を行っていくこととしており、御指摘の「送発電分離」を含む電気事業制度の在り方については、そうしたエネルギー政策全体の議論の中で検討していくこととなる。