質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四三号

内閣参質一七七第一四三号
  平成二十三年五月十三日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員丸川珠代君提出福島第一原発の状況及び放射能放出量に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員丸川珠代君提出福島第一原発の状況及び放射能放出量に関する質問に対する答弁書

一について

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)の原子炉施設のうち原子炉内に燃料が装荷されている第一号機から第三号機までについては、制御棒に含まれるホウ素に加え、原子炉内に注入したホウ酸により、核分裂を生じさせる中性子を吸収できることから、再臨界に至る危険性は極めて低く、今後も適切にホウ酸を注入していくことにより、再臨界を防止できるものと考える。
 また、独立行政法人原子力安全基盤機構の専門家も、これと同様の考え方を有していると承知している。

二について

 米国原子力規制委員会が承認した、改良型沸騰水型軽水炉に関する御指摘の「設計認証(DCD)」においても、仮に再臨界が生じた場合には、未臨界状態に戻すためにホウ酸を注入することとしている。福島第一原子力発電所の第一号機から第三号機までは全て沸騰水型軽水炉であるが、一についてでお答えしたとおり、原子炉内に適切にホウ酸を注入していくことにより、再臨界を防止できるものと考える。お尋ねの「放水という措置」とは、原子炉内への注水措置のことを指すと考えられるが、当該措置は原子炉を冷却するために引き続き講じていくことが必要なものである。

三について

 お尋ねの福島第一原子力発電所の第三号機及び第四号機の使用済燃料プールの水量の発災後の経過の詳細については、全交流電源喪失により水位監視装置が作動していないため、把握できていない。現在は、スキマサージ槽の水位監視装置による使用済燃料プールからの溢水確認、コンクリートポンプ車のブームに取り付けたカメラによる水位確認及び同ブームから使用済燃料プールの水面まで熱電対をつり下げた距離を計測することにより行う水位確認を、可能な範囲で行っているが、これらによって確認するデータは確度の低いものであり、お答えすることは差し控えたい。

四について

 福島第一原子力発電所から大気中に放出された放射能量について、主要な放射性物質ごとに、経済産業省原子力安全・保安院が独立行政法人原子力安全基盤機構による原子炉の状態等の解析結果を基に試算を行ったところでは、ヨウ素百三十一が十三万テラベクレル、セシウム百三十七が六千百テラベクレルと推定される。また、原子力安全委員会がモニタリング測定の結果から逆算することにより試算を行ったところでは、ヨウ素百三十一が十五万テラベクレル、セシウム百三十七が一万二千テラベクレルと推定される。なお、原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置により大気中に放出された放射能量に限った試算は行っていない。
 海洋に放出された放射能量について、主要な放射性物質ごとに東京電力株式会社が試算を行ったところでは、福島第一原子力発電所の集中廃棄物処理施設並びに第五号機及び第六号機のサブドレンピットに滞留していた放射性物質を含んだ水の放出による放射能量は、ヨウ素百三十一が六十六ギガベクレル、セシウム百三十四が四十二ギガベクレル、セシウム百三十七が四十二ギガベクレルと推定され、また、第二号機取水口付近の立坑からの放射性物質を含んだ水の漏えいによる放射能量は、ヨウ素百三十一が二千八百テラベクレル、セシウム百三十四が九百四十テラベクレル、セシウム百三十七が九百四十テラベクレルと推定される。

五について

 お尋ねの「ジルコニウムが酸化されていない面積の割合」については把握していない。

六について

 福島第一原子力発電所の原子炉施設等の事故記録については、電源の未復旧等の事情により、これまで収集が完了していなかったが、経済産業省においては、平成二十三年四月二十五日に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十七条第一項の規定に基づき、東京電力株式会社に対し、福島第一原子力発電所の事故の今後の適切な応急の措置の実施のため、過渡現象記録装置に記録されている原子炉圧力容器内の水位及び圧力等の記録等について可及的速やかに報告すること、また、当該記録等が放射性物質の濃度の高い区域に存在し収集が困難な場合等その報告が困難であると見込まれる場合には、当該記録等の保管状況、報告時期の見通しその他の状況について確認し、その結果について速やかに報告することを命じたところである。当該命令に基づき、東京電力株式会社から当該記録等が提出された場合には、速やかに公開する所存である。また、政府としても、必要に応じて当該記録等の解析を行うこととしている。