質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三七号

内閣参質一七七第一三七号
  平成二十三年五月十三日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員岩城光英君提出建設現場の足場からの墜落事故に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岩城光英君提出建設現場の足場からの墜落事故に関する再質問に対する答弁書

一について

 厚生労働省としては、建設業における墜落・転落による死亡災害について、「足場」以外にも「屋根、はり、もや、けた、合掌」、「建築物、構築物」等からの墜落・転落による死亡災害を集計して死亡災害の総件数を公表しているものであり、御指摘の「百三十九件」を全て「足場」からの墜落・転落による死亡災害の件数として考えることは適当ではないと考える。このように考えるからといって、「本来、足場が設置されていなければならないにもかかわらず足場が設置されていない建設現場が存在していること」については認識し、このような建設現場については、事業者に対し、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号。以下「規則」という。)第五百十八条に基づき、足場を組み立てるなど、現場の実情に応じた方法による作業床の設置を指導しているところであり、政府の認識が同条違反を放置することにつながっているのではないかとの御指摘は当たらないと考える。
 また、御指摘の緊急要請において同条を引用しているのは、平成二十二年八月七日現在の建設業における墜落・転落による死亡災害の件数が前年同期と比較して増加していたことから、その発生状況を分析した結果、これらの死亡災害を防止するためには、同条に基づく措置を講ずることが有効であると判断したからであり、御指摘の緊急要請において同条を引用していることが「明らかに安衛則第五百十八条違反の現場が多く、見逃すことができない状況にあることを物語っているのではないか」との御指摘は当たらないと考える。
 なお、同条に基づく作業床の設置に当たり、足場を用いる際には、規則第五百六十三条等に基づき、墜落防止措置を適切に講ずるよう併せて指導しているところである。

二について

 厚生労働省としては、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第三条第一項において「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」とされていることを踏まえ、事業者に対し、公共工事、民間工事を問わず、規則に基づく措置の履行確保はもとより、「手すり先行工法」の採用など、現場の実情に応じたより安全性の高い措置の実施について指導を行っているところである。

三及び五について

 厚生労働省としては、平成二十一年六月、規則の一部を改正し、足場からの墜落防止措置の強化を図ったところであるが、その際、「足場等からの墜落等に係る労働災害防止対策の徹底について」(平成二十一年四月二十四日付け基安発第〇四二四〇〇三号厚生労働省労働基準局安全衛生部長通達。以下「安全衛生部長通達」という。)の別添において「今後、足場からの墜落災害について、負傷災害を含め毎年データを蓄積・分析し、その結果を示すとともに、改正省令の施行後三年を目途に、改正省令等の措置の効果の把握を行い、必要があると認められるときは、その結果に基づき所要の措置を講ずる」こととし、厚生労働省の「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会」において、規則や安全衛生部長通達に基づく措置の災害防止効果について検証及び評価を行い、御指摘の報告書を取りまとめたものである。厚生労働省としては、同報告書を踏まえ、現時点においては、「幅木」の設置や「手すり先行工法」の採用の義務付け等の規則の強化を図るまでの必要はないと考えており、引き続き、負傷災害を含めたデータの蓄積及び分析を進めるとともに、規則の遵守徹底等を図ることとしているところである。

四について

 規則第五百六十四条第一項第四号に定める墜落防止措置には、親綱支柱を用いた安全帯取付設備の設置以外に、「手すり先行工法」による手すり枠等の設置も含まれるものであり、御指摘の「手すり先行工法が実施されていれば、墜落・転落事故の何件かは未然に防げたのではないかという分析視点」からは、「墜落防止措置を全く実施していなかった」七十三件のうち、「不安全行動や構造上の問題等」が認められなかった五十二件については、「手すり先行工法」による手すり枠等の設置も含め同号に定める墜落防止措置を実施していれば防ぐことができた可能性が高いものと考えているところである。
 なお、「手すり先行工法」については、設置する足場の種類や形状によっては採用することができない場合がある。