質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第六一号

内閣参質一七七第六一号
  平成二十三年二月二十二日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員山田俊男君提出EPA・WTO・TPPにおける農業の取扱いに係る我が国の主張に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山田俊男君提出EPA・WTO・TPPにおける農業の取扱いに係る我が国の主張に関する質問に対する答弁書

一の1について

 我が国とオーストラリアとの経済連携協定(以下「日豪EPA」という。)交渉については、政府としては、「包括的経済連携に関する基本方針」(平成二十二年十一月九日閣議決定。以下「基本方針」という。)に基づき、センシティブ品目について配慮を行いつつ、全ての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指すとの立場で臨んでいる。交渉の具体的な内容については、現在交渉中であることから、お答えすることは差し控えたい。

一の2について

 環太平洋パートナーシップ(以下「TPP」という。)協定については、政府としては、我が国がTPP協定に参加した場合のメリット、デメリット等を勘案した上で、交渉参加について判断することとしており、そのために必要な情報を得るべく、関係国との間で協議を行ってきている。オーストラリアとの間においては、昨年十二月十四日に協議を行っており、オーストラリア側から、その直前に開催された第四回TPP協定交渉会合に関し、市場アクセス等の主要交渉分野を中心とした交渉の現状と見通し、交渉の基本的な考え方等について説明を受けた。

一の3について

 日豪EPA交渉とTPP協定に関するオーストラリアとの協議は、それぞれその趣旨及び目的が異なるものであり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

二について

 本年一月二十九日に行われた世界経済フォーラム年次総会(以下「ダボス会議」という。)において、菅内閣総理大臣は、「開国と絆」と題する特別講演を行い、大きく変化する国際情勢の中で、「開国」を大きな目標とし、世界貿易機関(以下「WTO」という。)ドーハ・ラウンドや経済連携の推進、農業の再生、イノベーションによる成長制約の克服等に取り組む考えを表明した。具体的には、経済連携を推進すれば日本の農業が危うくなるという意見があるが、貿易の自由化か農業の存続かという二者択一の考え方には立っておらず、経済連携の推進と農業の再生とは両立可能であり、日本の農業も成長産業として再生することができる旨を発言した。また、ダボス会議に合わせて同日行われたWTO非公式閣僚会合において、海江田経済産業大臣は、我が国としては、鉱工業品等の分野における提案を通じ、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結に向けて貢献していく旨を、また、篠原農林水産副大臣は、「多様な農業の共存」を基本理念としつつ、各国のセンシティビティに配慮した貿易ルールの構築を目指し同ラウンドの議論に参加していく旨を、それぞれ発言した。さらに、同じくダボス会議に合わせて同日行われた食料輸入国による閣僚会合において、篠原農林水産副大臣は、WTO非公式閣僚会合における発言と同趣旨の発言を行った。
 菅内閣総理大臣、海江田経済産業大臣及び篠原農林水産副大臣によるこれらの発言は、貿易自由化の推進と我が国農業の強化が重要であるとの趣旨を述べたものであり、発言の間に矛盾があるとは考えていない。

三の1について

 一の2についてで述べたとおり、TPP協定については、政府としては、随時、関係国との間で情報収集を目的とした協議を行ってきており、米国との間においても、本年一月十三日及び十四日に行われた日米貿易フォーラムの中で、情報収集の一環としてTPP協定も取り上げた。米国側からは、TPP協定交渉の現状等について情報提供を受けたほか、米国が過去に締結した自由貿易協定に基づき市場アクセス、サービス等の主要交渉分野において米国が追求する規律のレベルについて説明を受けた。

三の2について

 政府としては、基本方針に基づき、特に、政治的・経済的に重要で、我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域経済連携については、センシティブ品目について配慮を行いつつ、全ての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指すこととしている。TPP協定については、我が国がTPP協定に参加した場合のメリット、デメリット等を勘案した上で、本年六月を目途に交渉参加について判断することとしており、そのために必要な情報を得るべく、関係国との間で協議を行ってきている。

三の3について

 政府としては、現段階では、我が国はTPP協定交渉に参加しておらず、同交渉における関係国の立場が必ずしも明らかでないことから、仮に我が国がTPP協定に参加した場合に予想される影響については、御指摘の医療・製薬・介護福祉、政府調達(公共事業)、通信、教育等を含めどの分野にどのような影響があるかを具体的にお示しすることは困難である。