質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第二七四号

原子力発電の減少とその影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年八月二十六日

草 川 昭 三   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿



   原子力発電の減少とその影響に関する質問主意書

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、国内の原子力発電所は一部を除いて定期点検に入ったまま運転再開ができない事態となっている。これにより不足する電力を火力発電によって補うと二酸化炭素(CO2)の排出量が増加し、京都議定書に基づく温室効果ガス削減目標の達成は非常に厳しい状況に陥ることが懸念される。よって以下の質問をする。

一 全国の原子力発電所の原子炉のうち、①三月十一日の地震で被災したもの、②首相の要請により停止したもの、③直接的な地震の影響はないものの定期点検後再稼動していないもの、のそれぞれについて、具体名と基数を示されたい。また、①から③それぞれの発電電力量の合計は何キロワットになるか。

二 一の②、③に当たる原子炉が地震前の計画どおりに動いていたとすれば、発電電力量は現在までに累計で何キロワットアワーになっていたのか。

三 二の発電電力量はこれまで他の発電方式によって代替されたものと考えられるが、その結果、現在までにCO2の排出量はどの程度増加したと考えられるのか。その増加量は京都議定書の基準年の排出量の何パーセントに相当するのか。また、仮に全てを火力発電で代替した場合はどうか。その増加量は京都議定書の基準年の排出量の何パーセントに相当するのか。

四 二の発電電力量を火力発電で代替したことによる燃料費の増加額はどの程度か。それによる電気代への影響は一キロワットアワー当たり何円程度か。

五 安全性が確認できた原子力発電所の原子炉を再稼動するに当たっては、政府が前面に立って立地地域の住民および国民の理解を得る活動をする必要があると考えるが、見解如何。

六 温室効果ガスを二〇二〇年までに一九九〇年比で二十五パーセント削減するという目標は、鳩山由紀夫前首相が国内での議論を経ずに国際的に約束したものであり、国内削減分(いわゆる真水)で何パーセント削減するのかさえ、いまだに明確になっていない。政府は、大震災を受けて、国内のエネルギー政策を白紙から見直すとしている以上、鳩山前首相による二十五パーセント削減の目標についても一旦見直し、エネルギー政策を中心とする地球温暖化対策を国内でしっかり議論した上で、改めて国際的に目標を約束するのが、責任ある対応だと考えるが、見解如何。

七 京都議定書の第一約束期間の目標(二〇〇八~二〇一二年で一九九〇年比六パーセント削減)について、達成見通し如何。

八 今後、原子力発電所の原子炉の再稼動がなければ、二〇一二年までに採ることのできる京都議定書の第一約束期間の目標達成のための対策は、現実的には京都メカニズムのうちクレジットの購入しかない。クレジットの購入については「国富の流出」という見方もあるが、今後も国としてクレジットの購入を進めていくのか、あるいは産業界に対して、クレジットの購入を求めていくのかについての見解如何。また、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故により購入額はどうなると考えるのか。

九 京都議定書の第一約束期間の目標達成が難しいとしても、千年に一度とも言われる今回の地震について不可抗力を主張することも可能だと考えるが、見解如何。

十 年末にはCOP17が開催されるが、昨年のCOP16で日本政府は京都議定書第二約束期間における義務を負う意思はまったくないということを明確に示したが、COP17でも同様のスタンスで臨むのか見解を明らかにされたい。

  右質問する。