質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第二三〇号

内閣総理大臣の選出と国民主権、憲法第十五条第一項との関係に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年七月十四日

熊  谷   大   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿



   内閣総理大臣の選出と国民主権、憲法第十五条第一項との関係に関する再質問主意書

 政党は、憲法第二十一条に規定する結社の自由を根拠として自律的活動が保障されており、「政治上の意見を同じくする人々が、政治権力に参加して、その意見を実現するために組織する集団」(清宮四郎「法律学全集 憲法Ⅰ〔第三版〕」七十一頁)とも定義される。
 しかし、議院内閣制を採用する日本国憲法において、政党が議会と国民とを媒介する政治的役割を果たしてきたことを踏まえれば、公的な機能を担う存在であることを否定できないと考える。
 民主党の代表選挙においては、投票権を党員・サポーターに付与しているが、それらの資格に国籍要件を設けていない。また、昨年九月の代表選挙の広報ポスターには、二名の候補者の写真とともに「あなたが選ぶ総理大臣」との文言が掲げられていた。
 このようなことから、内閣総理大臣の選出と国民主権、憲法第十五条第一項との関係について、本年六月十五日に質問主意書(質問第一九九号)を提出した。
 この質問に対し政府から、「お尋ねは、政党の代表者の選出という政党内の手続に関するものであり、政府としてお答えする立場にない」旨の答弁書(内閣参質一七七第一九九号。以下単に「答弁書」という。)を受領した。この答弁書の内容を踏まえ、以下再質問する。

一 政党助成法、政治資金規正法、政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律は、政党が公的な機能を担う存在であることを踏まえ制定されたと考えるが、政府は、政党が公的な機能を担う存在であることを肯定するのか、それとも否定するのか。その理由は何か。

二 政治資金規正法第二十二条の五の規定は、我が国の政治や選挙が外国人や外国の組織、外国の政府など外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止しようという趣旨で設けられた。この規定は、国民主権、憲法第十五条第一項の規定を担保する意義があると考えるが、政府は、国民主権、憲法第十五条第一項の規定との関係で政治資金規正法第二十二条の五の規定の意義をどのように考えているか。

三 前述の広報ポスターの「あなたが選ぶ総理大臣」との文言は、党員・サポーターが直接内閣総理大臣を選び出すことを想起させるものであり、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」との憲法第六十七条第一項の規定に抵触し、適切ではない。
 政党が公的な機能を担う存在であることと「あなたが選ぶ総理大臣」との文言を踏まえれば、民主党の代表選挙は、「政党内の手続に関するもの」と割り切ることはできないと考える。政府は、それにもかかわらず、当該代表選挙を「政党内の手続に関するもの」と考えるのか。その理由は何か。

四 昨年九月の民主党の代表選挙で外国人が投票権を行使し得たという事実とその代表が内閣総理大臣に指名されたという事実を踏まえれば、内閣総理大臣の選出過程において外国の勢力によって影響を受けたと考えられるのではないか。このことはまさに国民主権、憲法第十五条第一項の規定に違反すると考えるが、政府の認識はどうであるか。内閣総理大臣の地位の正統性が問われる問題であるので、その理由を併せて示されたい。

五 答弁書には、「なお、内閣総理大臣は、憲法第六十七条の規定により、国会議員の中から国会の議決で、これを指名することとされている」とある。この答弁は、外国人にも代表選挙の投票権を与える政党の代表が内閣総理大臣となることについて、内閣総理大臣自身が国会議員であり、国政選挙において国民による信託を得ているので、国民主権、憲法第十五条第一項の規定に反しないとの政府見解を示すものか。それとも、内閣総理大臣は、国民の信託を得た国会議員の中から国会の議決で指名されるので、国民主権、憲法第十五条第一項の規定に反しないとの政府見解を示すものか。当該答弁の真意を明らかにされたい。

  右質問する。