質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第二一七号

福島県内の放射性物質に汚染された災害廃棄物の処理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年七月一日

川 田 龍 平   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿



   福島県内の放射性物質に汚染された災害廃棄物の処理に関する質問主意書

 環境省は、福島県内(避難区域、計画的避難区域、会津地方及び本年五月二十七日に処理を再開することとした十町村を除く)で発生した災害廃棄物について、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(平成二十三年六月二十三日)(以下「処理の方針」という。)によりその処理を進めることとしている。
 処理の方針においては、焼却施設や最終処分場の周辺住民及び作業者の安全を確保することを大前提としながらも、可能な範囲で焼却を行い、これに伴って発生する主灰等は放射性セシウム濃度が一キログラム当たり八千ベクレル以下であれば埋立処分を認め、また、再生利用についても放射性物質の濃度がクリアランスレベル以下であれば、原則としてこれを認めるとしている。
 しかし、セシウムのうち、セシウム137は半減期が約三十年であり、従来から放射性廃棄物を対象としていない「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という。)等の枠組みの中で、今後、約三十年以上の長期にわたり最終処分場等において、また再生利用の工程において適切な放射線管理が行えるのか、甚だ疑問である。さらに、東京二十三区清掃一部事務組合が本年六月二十七日に発表した「焼却灰等の放射能測定結果」では、一部の清掃工場で飛灰の放射性セシウム濃度が一キログラム当たり八千ベクレルを超える状況にある。こうした状況を考えると、福島県内においてすでに処理が行われている災害廃棄物に加えて、福島県外での廃棄物処理についても、長期間にわたる放射線管理体制が必要となる。
 そこで以下のとおり質問する。

一 廃棄物処理法では、対象となる廃棄物について「放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く」とされているが、今回、放射性物質に汚染された災害廃棄物の処理を環境省が検討しているのはなぜか。また、市町村に加えて一般廃棄物処理業者などの民間業者による処理も考慮すれば、安全な処理を確保するために、処理方法を処理の方針のような形で示すのではなく、法律に基づく処理基準を示して、これを遵守させる仕組みを構築することが必要と考えるが、政府はどのように考えているのか、明らかにされたい。

二 処理の方針では、埋立処分の目安である一キログラム当たり八千ベクレルは「作業者の安全も確保される濃度レベル」とされている。しかし、膨大な量の災害廃棄物を処理していくに当たり、特に最終処分場においては、周辺住民の安全も考慮し、一キログラム当たりの放射性物質の濃度にとどまらず、放射線の累積線量も勘案して基準を示すべきと考えるが、政府はどのように考えているのか、明らかにされたい。

三 処理の方針では、被災地や仮置き場から焼却施設又は焼却施設から最終処分場までの収集運搬について、何ら言及されていないが、政府は具体的にどのような方法を考えているのか、明らかにされたい。

四 処理の方針では、再生利用について、放射性物質の濃度がクリアランスレベル以下であれば可能としている。しかし、膨大な量を扱うことになる再生利用の工程において、クリアランスレベル以上のものが混入するリスクもあり、また、下水汚泥については民間事業者の引取りも一部困難な状況にあることも踏まえれば、災害廃棄物の処理については再生利用よりも一時保管又は埋立処分を優先すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 災害廃棄物又は一般廃棄物にとどまらず、福島県内外の産業廃棄物についても、放射性物質に汚染され、その処理の工程において作業者や周辺住民の健康に影響が出ることが懸念されるが、引き続き、産業廃棄物の安全な処理に関しても何らかの措置を講じる考えはあるのか、政府の見解を示されたい。

六 今後、放射性物質に汚染された災害廃棄物を処理する市町村においては、放射線の測定、一キログラム当たり八千ベクレルを超える主灰や飛灰の一時保管、埋立場所や排水の管理、埋立処分終了後の跡地管理など、放射性物質による汚染に伴う管理も行わなければならない。したがって、市町村においては通常の一般廃棄物に加えて、前例のない放射性物質に汚染された災害廃棄物の安全な処理を確保することは困難であると考えるが、政府は今後の市町村における安全な処理を確保するための体制構築の必要性について、どのように考えているのか、明らかにされたい。

七 未曾有の事態に対して、長期間にわたる安全な処理の体制を確保するには、国が直轄で専用の焼却施設や保管施設、最終処分場などの施設を整備し、被災地からの災害廃棄物の撤去・処理・管理のすべてを行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。