質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇二号

有害物質のリスク管理と施設廃止後の地下水汚染の未然防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年六月二十日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   有害物質のリスク管理と施設廃止後の地下水汚染の未然防止対策に関する質問主意書

 水質汚濁防止法では、有害物質の使用自体に対する規制はなく、排水や地下浸透といった排出段階でその濃度を規制するのみである。リスク管理の観点からは、可能な限り、有害物質の代替化や低減化を図ることで、環境中に排出される有害物質の総量も削減していくべきである。また、施設の使用廃止後においても適切な対応が求められる。
 そこで、以下質問する。

一 リスク管理の必要性について

 今後は、リスクトレードオフにも十分注意した上で、PRTR制度を通じて事業者の自主的な管理の改善を一層促進すること、また、SAICMの精神に則ることなどにより、リスク管理の視点を重視し、新たなリスクの増加にも十分注意しつつ、使用される有害物質の代替化や低減化を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 リスクコミュニケーションの重要性について

 有害物質を取り扱う事業場のある地域の住民の安全・安心を確保するため、当該事業者は、有害物質の処理状況や排出状況等に関し、日頃から情報公開に努め、地域住民とのリスクコミュニケーションを推進するとともに、地下水汚染が発生した場合にも、速やかな情報公開を行う必要がある。リスクコミュニケーションの重要性とこうした取組を促進する必要性について、政府の見解を示されたい。

三 施設の使用廃止後の地下水汚染の未然防止対策の在り方について

1 改正水質汚濁防止法に基づく地下水汚染の未然防止対策は、有害物質使用特定施設や有害物質貯蔵指定施設を使用している間のみ義務付けられるものである。しかしながら、施設の使用廃止後の地下水汚染の未然防止対策も重要であり、廃止の届出の際には、土壌汚染に伴う地下水汚染への波及が懸念されることから、有害物質の除去や適正処分について確認をするなどの対応が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 倒産などにより廃止の届出がされず施設の管理が行われていない場合にも、残された有害物質の漏洩・地下浸透防止対策について汚染者負担の原則(PPP)に基づいて、適切な対応が求められるが、政府の方針を示されたい。

四 土壌汚染対策法第三条調査の在り方について

1 土壌汚染対策法第三条では、使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について調査が義務付けられているが、有害物質貯蔵指定施設については条文上の規定がない。
 しかしながら、有害物質使用特定施設以外の施設に係る地下水汚染も確認されているほか、改正水質汚濁防止法では、有害物質貯蔵指定施設は有害物質使用特定施設と同様の措置の対象となる。また、有害物質貯蔵指定施設が必ずしも有害物質使用特定事業場内にあるとは限らないことも踏まえ、今後、土壌汚染対策法第三条の規定の在り方について、検討していく必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 第三条調査は、当該土地が引き続き工場又は事業場の敷地として利用される場合には、都道府県知事の確認を受けることでその実施が猶予されることになっている。
 したがって、使用が廃止された有害物質使用特定施設であっても、工場又は事業場の敷地内である間は調査を行わず、住宅地などに転用する際に調査を行うことになっている。
 しかしながら、使用が廃止されてからは改正水質汚濁防止法に基づく構造等の基準は適用されなくなるため、こうした対応では、暴露の防止は図られても、汚染の未然防止は図られず、問題があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 東日本大震災による倒壊後の工場跡地の適正な対応について

 大震災後の瓦礫からのアスベスト、PCB等の飛散による健康被害が懸念されているところであるが、倒壊したアスベスト関係施設(アスベスト使用建物)の数、及びPCB保管施設数と保管量を明らかにされたい。
 また、同施設からのPCBを含んだトランス、コンデンサーなどの回収個数を示されたい。

六 東日本大震災におけるボランティア活動者等に対するアスベスト、PCB等の安全対策の周知徹底について

 東日本大震災におけるボランティア活動者等に対し、マスクなどの着用等、具体的な安全対策の周知徹底は行われているのか、明らかにされたい。

七 後年における中皮腫等の発症のリスクに対応できる存在立証の仕組みの構築について

 東日本大震災におけるボランティア活動者等に対するアスベスト対策の一環として、二十年~三十年後に中皮腫等の罹患が診断された際に、当該地域での作業等の存在立証などが明確になるような仕組みを作るべきであると考えるが、政府としてどのように対応するのか明らかにされたい。また、今後の石綿健康被害救済法の改正に向けた政府の議論の中では取り上げられたのか、併せて明らかにされたい。

  右質問する。