質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一七二号

東京電力株式会社への金融機関融資をめぐる政府の対応等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年五月三十一日

片山 さつき   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   東京電力株式会社への金融機関融資をめぐる政府の対応等に関する質問主意書

 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の原子力発電所事故に伴う損害賠償等の問題に関連して、五月二十九日付日本経済新聞に「薄氷の東電公的管理」と題する検証記事(以下「本検証記事」という。)が掲載されている。これを踏まえ、東京電力への金融機関融資をめぐる政府の対応等について、以下質問する。

一 本検証記事によると、三月十八日に東京電力からなされた緊急融資の要請について、「金融庁は金融機関に融資を実行するか確認した」「『…政府からの事実上の要請だと受け止めた』と大手銀行首脳は明かす」とされているが、事実関係について明らかにされたい。
 また、本検証記事では、東京電力のメインバンクである三井住友銀行の頭取が三月二十五日に経済産業事務次官と話し合ったとされているが、経済産業省から融資の要請若しくはそれを示唆する発言を行ったのかを含め、事実関係を明らかにされたい。

二 政府は、今回の東日本大震災が原子力損害賠償法第三条の「異常に巨大な天災」に当たらないと国会答弁しているが、その判断に変更はないか。
 変更がないとすれば、金額が確定していないにしても、東京電力には原子力損害賠償法上の賠償責任があり、融資の返済が困難となり得る。何故、そうした状況下で金融機関に融資を要請したのか。

三 大手都市銀行の東京電力への融資額は、各行の自己資本等の状況から見て、各行を債務超過に陥れる規模ではないが、政府は、仮に東京電力への融資について全額あるいは大半が損失となる場合には、信用秩序を毀損し、あるいはシステミックリスクを惹起することになると判断しているのか。

四 東京電力の社債は一般担保付社債であり、約五兆円の残高がある。政府は、仮に東京電力が会社更生法や民事再生法の適用を受けた場合には、この全額を一括弁済する法的義務を東京電力が負うものと考えているのか。また、実際に全額の弁済が可能であると見ているのか、それとも一部支払不能となる部分があると見ているのか。

五 一般担保付社債、被災者からの補償請求、銀行からの借入について、東京電力が優先して弁済を行うべき順位は現行法上どのようになると政府として考えているのか。

六 政府は、東京電力の社債のような一般担保付社債の一銘柄がデフォルトとなった場合、社債市場に風評以外のどのような影響を及ぼすと考えているのか。影響があるのであれば、五月十三日に発表した賠償支援策の根拠として説明されていない理由は何か。

七 電力事業の譲渡先を法律上の手当ても含めてあらかじめ決定した上で、東京電力が会社更生法や民事再生法の適用を受けるのであれば、必ずしも電力供給に支障があるとは言えないと考えるが、政府の見解はいかがか。
 また、監督官庁として、電力供給への不安を理由に、電力会社の破綻や事業譲渡を認めないのであれば、それはあらかじめ電力会社に関する何らかの法制度で手当てしておくべきではないか。そのような法制度なしには、電力供給の確保を会社の存続と同等に見ることはできないのではないか。

  右質問する。