質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一五四号

第三次嘉手納爆音訴訟及び嘉手納統合案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年五月十九日

糸数 慶子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   第三次嘉手納爆音訴訟及び嘉手納統合案に関する質問主意書

 本年四月二十八日、沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民が夜間・早朝の航空機飛行差し止めや騒音の軽減、損害賠償を国に求める第三次嘉手納爆音訴訟を起こした。原告は嘉手納町、北谷町、沖縄市など五市町村に住む二万二千五十八人で、国内史上最大の原告団となった。このような深刻な事態に至ったのは、嘉手納基地の騒音被害が違法であるとの司法判断が示されたにもかかわらず、日米両政府が合意した騒音防止協定の遵守を米軍側に強く求める等の抜本的な爆音対策を講ずることなく米軍側の運用を優先し、住民の生活環境を守ることをしてこなかったからであり、国の嘉手納爆音対策への不作為によるものである。
 一方、五月十一日(現地時間)に、米議会上院軍事委員会のカール・レビン委員長(民主党)とジョン・マケイン筆頭委員(共和党)、ジム・ウェッブ委員(民主党)が会見し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「実行不可能」と指摘したうえで、米空軍嘉手納基地への統合を中心とする新たな移設案の検討を国防総省に求めたとする声明を発表した。
 報道等によるレビン軍事委員長ら米議員提案は、一つ目に、現行の国防総省の米軍再編計画は非現実的で、機能せず、費用負担もできないこと、二つ目に、日米両政府が在日米軍再編ロードマップに合意した二〇〇六年から状況は大きく変わったこと、三つ目に、自国の財政事情に触れ、現在の米政府の厳しい財政状況下では、見込まれる多大な費用増は負担できないこと、四つ目に、日本側の政治状況についても、沖縄とグアムの政治的な現実や、地震と津波の大災害で日本が負った巨額の財政負担も考慮しなければならないこと、五つ目に、非常に経費のかかるキャンプ・シュワブ沿岸部での代替施設建設よりも普天間飛行場に所属する海兵隊の嘉手納基地移転について現実可能性を検証すべきこと、六つ目に、嘉手納の機能と普天間の海兵隊については、嘉手納基地の空軍機能の一部を、グアムのアンダーセン空軍基地や日本国内の他の地域に分散させることも検討すべきことを指摘したうえで、在沖縄海兵隊のグアム移転について、家族と駐留するのは司令部要員だけとし戦闘部隊はローテーションで派遣することを検討すべきだ、と提起している。
 このレビン軍事委員長らによる嘉手納統合案に対し、嘉手納町議会は五月十七日の臨時議会において、同委員長らによる声明の撤回と、普天間飛行場の県外、国外移設を求める抗議決議・意見書を全会一致で可決した。
 そこで、第三次嘉手納爆音訴訟及び嘉手納統合案について以下、質問する。

一 第三次嘉手納爆音訴訟が深刻な事態に至ったのは、嘉手納基地の騒音被害が違法であるとの司法判断が示されたにもかかわらず、日米両政府が合意した騒音防止協定の遵守を米軍側に強く求める等の抜本的な爆音対策を講ずることなく米軍側の運用を優先し、住民の生活環境を守ることをしてこなかったからであり、国の嘉手納爆音対策への不作為によるものであると考えるが、これまでの対応と今回の訴訟提起について政府の見解を示されたい。

二 米議会上院軍事委員会のカール・レビン委員長とジョン・マケイン筆頭委員、ジム・ウェッブ委員が会見し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「実行不可能」と指摘したうえで、米空軍嘉手納基地への統合を中心とする新たな移設案の検討を国防総省に求めたとする声明に対する政府の見解を示されたい。

三 嘉手納基地と普天間飛行場の爆音対策については、日米両政府の取り決めがある。一般的には「騒音防止協定」と呼ばれ、正式には「航空機騒音規制措置」という取り決めである。離着陸する米軍機の深夜・早朝飛行を制限するため、一九九六年に締結されている。その騒音防止協定が遵守されていない。米軍機の飛行を制限する何の効力もなく、形骸化している。日本政府も強く遵守を求めることはせず、米軍が運用上の事情を理由とすれば、協定はないがしろにされているのが実態である。また、在日米軍の再編に係るロードマップにおいても、嘉手納の騒音軽減は重要な取組の一つに挙げられているにもかかわらず、実効的な軽減策は無いに等しい。騒音防止協定が結ばれた後、日米合同委員会等で、どのような爆音の軽減策が話し合われてきたのか、具体的な対策等や協議の内容を明らかにされたい。

四 騒音防止協定の主な内容は、一、飛行場への進入・出発経路などは、学校や病院など人口が多い地域の上空をできる限り回避すること、二、嘉手納及び普天間基地周辺では原則として海抜一千フィート(約三百五メートル)の最低高度を維持すること、三、着陸訓練を行う航空機の数を最小限に削減すること、四、燃料を排気管内に噴射して排気ガスを再燃焼する「アフターバーナー」を抑制すること、五、嘉手納及び普天間飛行場周辺と沖縄本島の陸地上空における訓練中の超音速飛行を禁止すること、六、午後十時から午前六時までと、日曜日や慰霊の日などの飛行を制限すること、七、午後六時から午前八時までジェットエンジンテストを原則禁止すること、その他には、曲技飛行の原則禁止や関係者への教育の実施とその遵守等となっている。これらの遵守事項について守られていると考えているのか、それとも改善する余地があると考えているのか、政府の見解を示されたい。

五 一九九六年の騒音防止協定の締結以降、嘉手納基地に飛来、訓練等を実施した外来機の機数及び部隊名、訓練期間について政府の把握しているところを年次ごとに明らかにされたい。

六 一九九六年の騒音防止協定の締結以降、嘉手納基地の騒音軽減策の一つとされる嘉手納基地所属の戦闘機等の訓練移転の実績等について政府の把握しているところを年次ごとに明らかにされたい。

  右質問する。