質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一四三号

福島第一原発の状況及び放射能放出量に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年五月二日

丸川 珠代   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   福島第一原発の状況及び放射能放出量に関する質問主意書

 東日本大震災の津波災害による福島第一原発の事故は、過去に例のない膨大な量の高濃度の放射性物質を大気中と地中と海洋に撒き散らす結果となった。それにより、周辺市町村の多くの住民が避難生活を余儀なくされているとともに、農産物はもちろんのこと工業製品にいたるまで、日本のブランドを地に貶めることとなった。今後、長期にわたる放射能汚染との闘いを国民に強いることは明らかである。
 発災後、いったんスクラム停止した福島第一原発の原子炉への対応に関しては、スクラム停止後は極めて起こり難い事象とされている再臨界事象についての技術的な評価や判断が事前に実施されていなかったのか、あるいは発災後そのような評価や判断が迅速にできなかったのか不明であるが、そのような杞憂だった可能性もある事象に惑わされていたようにも見受けられる。無秩序な放射性物質の撒き散らしを長期にわたって容認し続け、適切な対策のための舵を切るのが遅れ、未だに改めようとしない理由を政府は明らかにすべきである。
 よって以下、福島第一原発について質問する。

一 政府は福島第一原発の原子炉について、今後再臨界が起きる可能性があると考えているのか。再臨界が起きる可能性があるというのであれば、それはどのような状況において起きるのか。専門家による定量的な評価を示されたい。

二 再臨界が極めて起こり難い事象であるとの見解については、ABWR=改良型BWR(沸騰水型原子力発電プラント)に対しては、ゼネラル・エレクトリック社が作成し、米国原子力規制委員会が承認した設計認証(DCD)があり、その内容は、今回の福島第一原発の事象にも当てはまると推測される。政府は、このような技術的な見解に反対するだけの合理的な理由をもっているのか。その上で、有効性が十分ではない一方で有害性が明らかである放水という措置をこれからも続けていくつもりなのか。

三 福島第一原発三号機、四号機の使用済み核燃料プールの水の量について、発災後どのような経過であったのか。政府の認識の変化を時系列で示し、その変遷の根拠を詳細に示されたい。

四 政府の判断によって、これまでに大気中と海洋に放出した放射能量(総ベクレル数)の推定値を、主な核種毎に示されたい。その上で、経済開発協力機構原子力機関が一九九五年十一月に公表した、チェルノブイリ事故後十年の放射能による健康への影響に関する報告書二十頁の表1(OECD/NEA,“Chernobyl Ten Years on Radiological and Health Impact”, Page 20 of 70 Table 1)にならって、今回の放射能放出量の規模を定量的に示されたい。現時点での状況が示せない場合は、いつ示せるのか。

五 放射性物質の飛散は水素爆発の可能性をコントロールできるかどうかにかかっているが、燃料棒の被覆管の表面積のうち、ジルコニウムが酸化されていない面積の割合は、一号機、二号機、三号機でそれぞれ何パーセントか。

六 発災後、非常用の無停電バッテリーが稼働していた間に記録された過渡現象記録装置の記録は現在どのように保全されているのか。すでに解析は行われているのか。記録を公開し、被害拡大の原因分析のため、広く世界からの叡智を集めるべきと考えるが、今後の記録公開についての政府の考え方を示されたい。

  右質問する。