質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一一七号

やむを得ず税を滞納した中小企業に対する金融機関の融資判断弾力化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年三月十日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   やむを得ず税を滞納した中小企業に対する金融機関の融資判断弾力化に関する質問主意書

 近年、景気の回復が進まない中で、中小企業の資金繰りもいまだ厳しいままである。特に、やむを得ず税金を滞納しなければならなくなった企業については、金融機関から融資を受けることが非常に困難となり、苦境に陥っているとの報道等もしばしば見受けられる。例えば、平成二十二年十二月二日付けの毎日新聞では、材料価格の高騰で資金繰りが悪化し、消費税を滞納した企業が、銀行からの新規融資を止められている等の事例が報じられている。
 国税庁の統計によれば、消費税の整理中の滞納件数(その年度の新規発生滞納及び前年度からの繰り越された滞納のうち、滞納整理が済んでいないもの)については、平成十九年度で約百三十六万二千件、平成二十年度で約百四十万二千件、平成二十一年度で約百四十四万五千件と把握している。国税の滞納に占める消費税の滞納の割合は高い状況にあり、改善の兆しが見えない。この多くは、平成十九年夏ごろからのサブプライム住宅ローン危機、平成二十年九月のリーマンショックに端を発する世界金融危機等により、苦境に陥っている中小企業等がやむを得ず滞納しているものではないかと推察される。こうした企業に対する金融機関の融資判断について、可能な限り弾力化する必要があるのではないかと考える。
 そこで、以下質問する。

一 平成十九年度から平成二十一年度の消費税の滞納状況を見ると、整理中の滞納税額は減っている一方で、整理中の滞納件数が増えている。これは故意の巨額な税の滞納というより、やむを得ず小額な税の滞納をしている者が増えているとも考えられるが、政府はどう認識しているのか。

二 国税庁の調べによると、平成二十一年度における国税滞納者数が約九十二万五千人であるのに対して、国税通則法第四十六条に基づく納税の猶予を受けた人数は、三百十二人にとどまっている。一方、国税徴収法第百五十一条に基づく換価の猶予を受けた人数は、約十九万八千人となっている。

1 国税滞納者数に比較して、納税の猶予を受けた人数が非常に少ないのではないかと思われるが、その理由は何か。
2 換価の猶予は、納税の猶予とは異なり、滞納処分手続が既に進行していることを前提としている。納税者の立場に立った場合、換価の猶予を受けることにより、納税の猶予の許可を受けた場合と比較して、金融機関に対する信用が低下し、融資等が受けにくくなるのではないかと懸念する。換価の猶予を受けた企業に対する金融機関の融資の実態について、政府はどのように把握しているのか。
3 納税の猶予や、換価の猶予の許可を受けて分割納付を行っている場合には、単に滞納しているものではないことから、少なくとも、これらの場合は、金融機関では返済見込みがあるものとして融資を継続すべきものと考えるが、政府の見解如何。
4 納税の猶予及び換価の猶予は、国税通則法第四十六条、国税徴収法第百五十一条に基づき、原則一年以内の期間認められており、やむを得ない場合は、さらに一年間(二年を超えない)延長できることになっている。
 この制度についても、納税の猶予を積極的に活用するように改めるとともに、進まない景気回復、中小企業金融との関連を踏まえ、さらなる期間の延長や運用面での弾力的な措置を講じていく必要があるのではないかと考えるが、政府の見解如何。

三 日本政策金融公庫の中小企業等向け貸付の中には、小規模事業者経営改善資金融資(マル経)やセーフティネット貸付のように、消費税を除いた所得税・事業税等の義務納税額をすべて完納していることや一年以内に完納する目途があれば融資の対象となる等の要件をあげているものもある。中小企業が厳しい状況に置かれている現状に鑑み、例えば経済情勢が好転するまでの間のみ、このような完納要件を一時的に緩和するなど柔軟に対応することも一つの方策として考えられるが、政府の見解如何。

四 中小企業経営者の方から、消費税を滞納しているために、政府系金融機関から融資を受けられなかったという声をしばしば聴いている。平成二十一年五月二十六日の衆議院財務金融委員会では、日本政策金融公庫の安居総裁が、「税金だとかあるいは公共料金だけでどうこうということはございません」と答弁しているが、各現場ではその答弁のとおりに実行されていないのではないか。単に税金の滞納という事実だけで判断せず、必要な資金を融通することが政府系金融機関の役割ではないかと考えるが、政府の見解如何。

五 民間金融機関については、貸倒れの発生が収益減少や自己資本比率低下につながることから、税金の滞納を厳しく見ていることが推察される。例えば、かつて東京税理士会が緊急要望を行った「税金滞納分を納付するための融資に付ける信用保証の枠を設ける」などの方策により、民間金融機関が融資に応じやすくする仕組みをつくるべきではないかと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。