質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第九八号

国立大学法人練習船の整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年三月一日

横山 信一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   国立大学法人練習船の整備に関する質問主意書

 国立大学水産系学部の専攻科学生の減少に伴って、水産系学部の船舶の在り方が検討されてきた。平成十九年五月には、商船型練習船を含め、八大学により、共同利用、運航を積極的に進めることや練習船の一元的管理運用体制の構築などが合意された。これに基づき、広島大学の豊潮丸、三重大学の勢水丸の代船が建造され、平成二十一年度からは、鹿児島大学のかごしま丸の代船建造が続いている。
 国立大学法人練習船は国際共同研究や調査航海を担っており、その役割の重要性は年々高まっている。一方、中国をはじめ、各国が排他的経済水域内での資源探査に積極的に乗り出すなど、国際的にも海洋開発に注目が集まっている。このような状況の中で、予算削減を前提とした国立大学法人練習船の縮小は、我が国の海洋権益の保持意欲の縮小を対外的に示す結果となっている。
 我が国の海洋権益の確保に必要な人材育成機関としての水産系大学教育の重要性は、海洋調査機能と併せて、ますます高まっている。そこで、これらの役割を果たすことのできる国立大学法人練習船の整備について、以下質問する。

一 水産系大学の学部学生及び大学院生の就職率がほぼ百パーセントという現状は、水産業や海洋関係の指導的立場に立つ人材に対するニーズの高まりを反映したものと考えられるが、政府の認識を示されたい。

二 国立大学法人練習船により進められてきた国際共同研究や海洋観測データの公開などに対する国際的な評価は高い。このような中、敬天丸、北星丸、鶴水の三船の廃船と相次ぐ代船の減トンが実施されているが、これまで継続してきた海洋観測を今後どのように進めていくのか、政府の見解を示されたい。

三 国立大学法人練習船には、大学院生を乗船定員に含めることになっており、その教育的な意義は重要である。近年の若者のコミュニケーション不足の解消など、副次的効果は絶大との報告もある。海洋関係の人材育成機関としての大学院教育における練習船の役割に対する政府の認識を示されたい。

四 国立大学法人練習船が教育関係共同利用拠点制度に基づいて運航される場合には、共同利用を前提とした居住、調査研究スペースが必要になる。そのための乗船定員当たりのトン数についての政府の見解を示されたい。

五 各国立大学法人の練習船運航日数は、修理点検日数を含め年間百五十日を超えている。このような状況で乗組員の年次休暇及び振替休日の取得状況はどうなっているか、過去五年間の各船の状況を示されたい。さらに、共同利用の運航を進めれば乗組員への負担は大きくなるが、政府はどのように対処しようとしているのか。

六 国立大学法人練習船には、専攻科学生の教育機関としての役割と海洋開発や水産科学の進展に必要な人材養成機関としての役割と相異なる役割がある。水産系の海技免許取得のための教育には、船橋と漁労デッキの充実は欠かせない。一方で、海洋環境の保全を担う人材育成を行うには、これらに加えて海洋観測機器類の運用スペースと複数のサンプル処理を同時に行う船内実験室が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

七 国立大学法人練習船の役割は、単に学生教育にとどまらず、我が国の海洋環境の解明と保全、海洋利用の安全確保、海洋産業の発展など、我が国の国益確保に欠かせないものとなっている。そのため、代船建造に当たっては、極域から赤道海域までの耐候性の高い船体が求められると考えるが、政府の見解を示されたい。

八 現在建造を進めているかごしま丸や、今後代船建造の時期を迎えるおしょろ丸、長崎丸では、現船建造時と建造基準(防火構造や天井高など)が変更されており、現船の定員を確保するだけでも、一割以上の増トンが見込まれる。この分を考慮しないとすれば、乗船定員の削減ないしは、船舶運航機能や調査機能を低下させることになるが、政府の方針を示されたい。

九 近年、北極海や米国二百カイリ内では、生活排水の排出規制が強化され、入港後の必要物資の補給や船員の休息などに必要な日数を確保するには、汚水処理装置や汚水タンクなど連邦汚染物質排出除去制度に対応した装備が必要になっている。現船規模を維持しようとするだけでも、代船建造時には増トンが必要になるが、政府はどのような考えに基づいて環境対策を進めるのか。国立大学法人練習船の耐用年数確保に関する方針と併せて示されたい。

十 水産高校の練習船では、えひめ丸の事故の教訓から安全対策を強化し、浸水に強い二層全通甲板を採用することになっている。さらに、船員資格のない教員・生徒の居住区は、満載喫水線下方一・八メートルより上方へ設置することになっている。一方、代船建造が進められているかごしま丸は、学生定員四十名、教職員定員三十二名に対し、九百三十五トンであるが、このトン数で学生居室の第二甲板への配置は可能なのか。えひめ丸事故の教訓を国立大学法人練習船ではどのように考えているのか、政府の見解を示されたい。

十一 広島大学の豊潮丸、三重大学の勢水丸、鹿児島大学のかごしま丸の代船の規模は、現船より縮小されてきたが、前記のように現有機能を確保するだけでも増トンとなる現状及び国際情勢の変化にともなう国益にかんがみ、柔軟に対応すべきと考えるがどうか。

  右質問する。