第177回国会(常会)
質問第八八号 地上デジタル放送への完全移行に向けた対策に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十三年二月二十三日 加藤 修一
参議院議長 西岡 武夫 殿 地上デジタル放送への完全移行に向けた対策に関する質問主意書 国家の政策によるテレビ放送のアナログ放送から地上デジタル放送(以下「地デジ」という。)への完全移行は、放送分野における国際的な展開等の観点から重要な政策であり、総務省が完全移行に向けて懸命な取組をしていることは重々承知をしている。多様な地域における対応を機敏に進めてきていると一定の評価をしているところである。 アナログ放送の場合、受信電波の強さや質が多少悪くても、画質は低いながらも視聴できるケースが多いと言われているが、デジタル放送では、電波が一定の水準を下回ると全く映らないこともあり、また気象条件やチャンネルの違いなどでも、映ったり映らなかったりすると言われている。 電波は送信距離が長くなるほど空気のゆらぎ等による影響を受け、画質が悪化したり、降雪や豪雨の影響も無視できないと言われている。さらにデジタル放送で使われるUHF(極超短波)ではこれらの影響が大きく「約五十キロメートルが限界の目安」とも指摘されている。 心配された受信障害対策も全国で九十八パーセント以上終了しているが、それでも最大二百十五万世帯が未対応であると発表されている。総務省は、本年一月二十一日現在、ビル陰の受信障害など地デジ未対応の世帯は昨年十二月末時点で二百万~二百五十万世帯(全国約五千万世帯の約四~五パーセント)と推計した。多くの重層的な対応を取っているようではあるが、全世帯の地デジへの完全移行は困難が予想される。 また、総務省は、低所得世帯向けに無償で受信機を配布する支援措置について、これまでのNHK受信料免除世帯に加え、市町村民税非課税世帯にもその対象を拡大するため、平成二十二年度補正予算と平成二十三年度予算案に約百億円を計上し、本年一月二十四日から申し込みを受け付けているとのことであるが、言うまでもなく、当該措置は必要十分条件ではなく、結論は「地デジ難民」を生まないように種々の手立てを拡充することである。 さらに、群馬県など中山間地域を多く抱える地域と首都圏などの平野部とでは、自ずと地デジ対策は異なってくると考える。 そこで、以下の質問を行う。 一 簡易チューナー無償配布対象となる低所得世帯や高齢者世帯の都道府県別世帯数について 総務省は簡易チューナーの無償配布を強化するにあたって低所得世帯、高齢者世帯への戸別訪問などを実施する方針としているが、そもそも当該無償配布の対象世帯数はどの程度の規模数になるのか。都道府県別の具体的な無償チューナーの配布世帯数を明らかにされたい。 二 米国、韓国における地デジの現状と我が国の対応について 米国、韓国では地デジへの完全移行が困難と判断し移行時期を延期したとの報道があった。日本においても決して楽観を許さない。政府は米国、韓国の現状についてどのように把握し、考察・精査しているのか。両国の移行率、難視聴世帯数などの数字を含めて明らかにされたい。 さらに、それらの精査の結果によっても、当初の予定どおり地デジへの完全移行を延期しない考えなのか見解を示されたい。 三 NHK受信料前払世帯数と難視聴世帯への受信料返還について 視聴者の中には、NHK受信料を六か月又は十二か月分一括で前払している者がいるはずである。地デジ化に伴い難視聴になった場合には、当該視聴者に受信料を返還すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 また、現在の前払世帯は全国でどのくらいの数になるのか。都道府県別に、六か月一括前払、十二か月一括前払の世帯数を示されたい。 さらに、二か月単位で支払う世帯数は、どのくらいか。地デジ化による難視聴世帯は、支払い拒否をすることにもなりかねないが、どのくらいの世帯に及ぶと推計しているのか。 このような地デジ化による難視聴を理由とした、受信料の返還と受信料の支払い拒否によって、NHKはどの程度の減収になるのか、推計総額を示されたい。 四 NHKテレビ等の深夜放送について NHKに関し、NHKテレビの深夜放送の現状はどのようになっているのか示されたい。 昨年、改正省エネ法が施行され、各事業者が省エネ等に取り組むことが求められている。災害時の対応のため、テレビ等がいつでも即時対応できるようにすることは重要な危機管理の役割を果たしていると捉えることができる。しかし、即時対応するために、放映(映像を送ること)しなければならないわけではない。例えばテストパターンでも十分なのである。映像を流せば視聴者がテレビ番組を見ることになり、その分、各家庭においてエネルギーを深夜でも使用することになる。NHKという大事業者は省エネについて十分な対応をすべきである。 このことについて、深夜に視聴している世帯数をどの程度と推計しているのかを含め、政府の見解を示されたい。 五 カーテレビの地デジの普及率四十四パーセントについて 地デジ対応が進む中、カーナビゲーションなどに付属している車載型テレビの地デジ対応は遅れていることが指摘されている。カー用品大手民間事業者によると、カーテレビの地デジの普及率は四十四パーセントである。家庭用テレビの半分以下と遅れており混乱が想定される。 地デジの受信には、地デジチューナー内蔵のカーナビに買い替えるか、専用チューナーを取り付ける必要がある。しかし、これらに関する啓蒙活動は浸透していないのが現実である。 この状態で推移すると、平成二十一年三月のETC購入助成制度の終了間際に希望者が殺到し混乱したのと同じ事態が起こることが想定される。カーナビ専用チューナーの取り付けにはETCの二~三倍の時間がかかるとも言われており、七月二十四日直前に希望者が殺到すればカー用品店などの現場は混乱することが想定される。地デジ化最終盤に混乱しないよう、効果的な対応を取るべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。 六 テレビ以外のビデオレコーダーなどの機器への対応について 総務省は、地デジ化について注意喚起を行ってきたが、家庭用テレビ以外の機器についての注意喚起は、ほとんど浸透していない。家庭用のアナログ型のビデオレコーダーなども地デジ対応が進んでいない。しかも、従来型では録画の画質が劣ると言われているが、このようなことは一切知らない人が多い。 総務省等は、家庭用テレビ以外の機器についての啓蒙活動も強化・拡充すべきではないか。また、買い替えなどを促進するための支援策等について、どのように考えているのか。言うまでもないことであるが、ビデオレコーダー等の機器に関しても、七月二十四日を迎えて困惑する人がないように対策を講ずる必要があると思うが、見解を示されたい。 七 ラジオのデジタル化について 総務省の研究会は、テレビと同様にラジオについても二〇一三年秋にもデジタル化を目指すことを柱とする報告書をまとめている。 ラジオのデジタル化については、本年七月の地デジへの完全移行後に、空いたアナログテレビ放送の一~三チャンネル(V-Low)を活用すると言われているが、デジタル設備への投資負担が大きな課題である。 世帯カバー率が九十パーセントになるように放送設備を整備するには、約七百億円かかるとされるが、さらに問題なのは、ラジオ受信機の普及台数はテレビ受信機の普及台数以上であると想定できることである。そこで、現在、ラジオ受信機の普及台数はどのくらいあると推計しているのか明らかにされたい。 また、従来のラジオ受信機が使用できなくなることから、その買い替えにかかる家計負担に対する助成等はどのように考えているのか。特に低所得世帯への対応も含めて見解を示されたい。 八 学校等における地デジ化の進捗率と対策について 小中高校などの学校施設、幼稚園、保育所、文教施設及び福祉施設等における地デジ化の進捗率及び対策について示されたい。 右質問する。 |