第177回国会(常会)
質問第六〇号 石垣市による尖閣諸島への上陸に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十三年二月十日 島尻 安伊子
参議院議長 西岡 武夫 殿 石垣市による尖閣諸島への上陸に関する質問主意書 石垣市による尖閣諸島への上陸について、以下のとおり質問する。 一 「国の機関を除き上陸等を認めないという魚釣島等の所有者の意向を踏まえ、また、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の魚釣島等の賃借の目的に照らして、政府としては、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっているところである」とする政府見解について 1 平成九年四月、魚釣島等の所有者(以下「所有者」という。)から、国の機関を除き上陸等を認めない、また、第三者による権利侵害行為に対して厳重な対処を求める旨の要請(以下「平成九年要請」という。)がなされているものと承知しているが、当該要請の形式及び内容について、所有者の個人名、住所等の個人情報を除き、詳細を明らかにされたい。 2 平成九年要請について、なぜ所有者は上陸等が認められる主体から地方公共団体を除外したのか。その趣旨及び背景事情について政府の把握しているところを明らかにされたい。 3 所有者の個人名、住所等の個人情報を除き、所有者と政府との間の賃貸借契約の内容について、詳細を明らかにされたい。明らかにできないのであれば、その理由を明らかにされたい。 4 「国の機関を除き上陸等を認めないという魚釣島等の所有者の意向」は、①平成十四年に結ばれた所有者と政府との間の賃貸借契約の内容となっているか。②現在の賃貸借契約の内容となっているか。③現在の賃貸借契約の内容となっているのであれば、なぜ所有者は上陸等が認められる主体から地方公共団体を除外しているのか。④政府が国の機関以外の者を尖閣諸島に上陸させることは、現在の賃貸借契約の解除事由となっているか。 5 4②において「国の機関を除き上陸等を認めないという魚釣島等の所有者の意向」が現在の賃貸借契約の内容となっていない場合、①「所有者の意向を踏まえ」ることの法的な意義は何か。②政府は、法的には、民法上の賃借人として、所有者の意向のいかんにかかわらず、国の機関以外の者の上陸の可否を決めることができると理解してよいか。 6 平成十九年三月三十日衆議院議員鈴木宗男君提出「尖閣諸島への日本政府職員の上陸に関する再質問主意書」(第一六六回国会質問第一五二号)における「「前回答弁書」において、「尖閣諸島への日本政府職員の上陸を禁止する法令はないが、国の機関を除き上陸等を認めないという魚釣島等の所有者の意向を踏まえ、」という答弁がなされたが、政府は「魚釣島等の所有者の意向」をいつどのような形で確認したか。」との質問に対し、政府は、平成十九年四月十日「衆議院議員鈴木宗男君提出尖閣諸島への日本政府職員の上陸に関する再質問に対する答弁書」(内閣衆質一六六第一五二号)において、「魚釣島等の賃借契約について魚釣島等の所有者と連絡を取る際等に、当該所有者の意向を確認しているところである。」と答弁している。「賃借契約について魚釣島等の所有者と連絡を取る」について、どのような目的で、どのようなときに、どのような内容の連絡を取るのか。 7 平成十九年四月十日「衆議院議員鈴木宗男君提出尖閣諸島への日本政府職員の上陸に関する再質問に対する答弁書」中「魚釣島の所有者と連絡を取る際等に」の「等」の具体的内容について明らかにされたい。 8 所有者と政府の契約形態について、「賃貸借契約につきましては、期間一年間の契約を基本的には自動更新するという形で安定的な賃借権を確保しているところでございます」(第一七六回国会参議院外交防衛委員会平成二十二年十月二十一日古澤ゆり政府参考人)との答弁があるが、政府は、賃貸借契約を自動更新する際、国の機関以外の者を尖閣諸島に上陸させないことについて、所有者の意向の確認を実際に行っているか。 9 政府は、6から8までの所有者の意向の確認の際に、上陸等が認められる主体から地方公共団体を除外することについての意思確認を実際に行っているか。所有者が上陸等が認められる主体から地方公共団体を除外するとする理由は何か。 二 総税固第一号平成二十三年一月七日「尖閣諸島への上陸要請に対する政府の検討結果について」(以下「政府の検討結果」という。)について 1 政府の検討結果は、石垣市による尖閣諸島への上陸要請に対する賃借人としての政府の判断を示したものと理解されるが、地方税法第四百八条を所管する総務省自治税務局固定資産税課長名で発出され、同課長が「政府において検討した結果」を連絡するものとなっている。同課長はどのような立場で「政府において検討した結果」を連絡しているのか。同課長の権限としては、同条は強制的に立ち入って調査を行う権限を与えているものではないという解釈を示すことや、「石垣市は尖閣諸島に上陸調査をせずに固定資産税を課税しても違法ではないと考えてよいか」という照会に対し「地方税法第四百八条に基づく固定資産税課税のための実地調査については、これまで上陸調査をせずに課税してきており、島の現況にも変化がないこと、徴税費用最小の原則、同条は強制的に立ち入って調査を行う権限を与えているものではないこと」から、石垣市が尖閣諸島に上陸調査をせずに課税をしても違法ではないという解釈を示すことにとどまるのではないか。 2 「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」とする地方税法第四百八条の規定は、市町村長に対する規範にすぎず、同条に基づく固定資産税の実地調査(以下「実地調査」という。)を受ける者が立入りによる実地調査を拒否できるかどうかは同条の関知しないところであり、固定資産税の課税対象である当該固定資産の賃借人が立入りによる実地調査を拒否できるとする法的根拠は、民法上の賃貸借契約に基づき賃借人が有する占有権及び管理権であると理解してよいか。 3 「国の機関を除き上陸等を認めないという所有者の意向を踏まえ、また、尖閣諸島の『平穏かつ安定的な維持及び管理』のためという政府の賃借の目的に照らして、政府としては、原則として政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針」の箇所について、政府は、魚釣島、北小島及び南小島を目的物とする民法上の賃貸借契約における賃借人として、民法上の賃貸借契約により取得した自らの占有権及び管理権に基づき上陸を認めないという理解でよいか。 4 民法上の賃貸借契約により取得した土地に対する占有権及び管理権に基づく当該土地への立入り拒否の事由には、法律や契約に規定のある場合を除き、制限がないものと考えられるが、尖閣諸島の賃借人たる政府は、民法上の占有権及び管理権に基づく立入り拒否の事由として、「地方税法第四百八条に基づく固定資産税課税のための実地調査については、これまで上陸調査をせずに課税してきており、島の現況にも変化がないこと、徴税費用最小の原則、同条は強制的に立ち入って調査を行う権限を与えているものではないこと」を挙げているものと理解してよいか。 5 4のように理解してよいとすれば、尖閣諸島の場合に限らず、一般的に、固定資産税の課税対象の土地を目的物とする民法上の賃借をしている私人が、当該土地に対する民法上の占有権及び管理権に基づき、①課税対象である固定資産の現況に変化がないこと、②徴税費用最小の原則、③地方税法第四百八条は強制的に立ち入って調査を行う権限を与えているものではないことを主張して、市町村長による立入りによる実地調査を拒否することもやむを得ないと認めているということか。それとも、尖閣諸島については、①、②及び③の理由のみによって、例外的に実地調査を拒否することもやむを得ないと認めているということか。尖閣諸島については例外的に拒否してもよいのであれば、尖閣諸島については解決すべき領有権の問題がそもそも存在せず、一般の土地と何ら異なることがないはずであるのに、なぜそのような例外的な措置が認められるのか、法的根拠を示されたい。 6 「国の機関を除き上陸等を認めないという所有者の意向」について、平成二十二年十月四日及び二十六日における石垣市・石垣市議会からの要請を受けて、政府は、所有者に実地調査のための上陸の可否について意向を確認したか。確認したとすれば、所有者の意向はどのようなものであったのか。 7 6について、今回政府が所有者の意向を確認していないとすれば、その理由は何か。 8 6について、今回政府が所有者の意向を確認していないとすれば、固定資産税の課税対象である当該固定資産の賃借人が、当該固定資産の所有者である納税義務者たる賃貸人の意向を確認することなく、実地調査を拒むことができるのはなぜか。また、政府は、実地調査のための上陸を拒否することが「所有者の意向」であるとその意向を確認せずに判断したのだとすれば、それはどのようにして判断したのか。 右質問する。 |