質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第二九号

電磁波に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年一月二十七日

山谷 えり子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   電磁波に関する質問主意書

 私たちの身の回りには、目に見えない電磁波が飛び交っており、携帯電話、ワイヤレスブロードバンドなどの普及により、電磁波の量は飛躍的に増加していると考えられ、それにつれて、これらの電磁波が健康に影響を及ぼしているのではないかと不安を感じている人が増加している。特に携帯電話やワイヤレスブロードバンドの基地局から発せられる高周波の電磁波に対しては、その安全性について疑問の声があがっている。
 そこで以下のとおり質問する。

一 電磁波過敏症について、政府はどのように認識しているのか。

二 電磁波による健康被害について、政府が把握している件数とその概要を示されたい。

三 欧州諸国では、電磁波過敏症は社会的に認知されつつあり、公的保険の対象として治療が受けられる。また、アメリカでも電磁波過敏症の専門医が患者のケアを行っている。日本においても専門医の設置、公的保険の適用を推進していくべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 スウェーデンのストックホルム市では、自治体が、電磁波過敏症の発症者に対し、より電磁波漏えいの少ない電化製品への交換や、遮蔽フィルムを貼ったり塗料を塗ったりといったリフォーム費用を負担または補助しており、さらには、電磁波過敏症の発症者が働き続けられるように雇用主にも対策を求めているという。日本においてもこのような支援や対策を考えていくうえで、調査を進めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 欧米では疫学調査に基づき、低周波の規制値を四~十ミリガウスまでとしているのに対し、日本では千ミリガウスとしている。世界保健機関は、低周波の新環境保健基準を発表し、この中で四ミリガウス以上での小児白血病のリスクを認めており、日本でも低周波の規制値を欧米並みに強化する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。また、日本の規制値を甘くしたことについて、規制値の具体的根拠を示し、経緯を説明されたい。

六 高周波の規制値は、欧州などでは、一平方センチメートルあたり〇・一~十マイクロワットとされているのに対し、日本は千マイクロワットとされている。欧州などのように予防原則の立場から、より厳しい規制に改める必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 携帯電話の電磁波を規制する動きとして、比吸収率(SAR)という安全基準が設けられている。フランスの法律では「フランス国内で販売される全ての携帯電話は、比吸収率(SAR)をフランス語で明確に表示しなければならない。また、通話中の頭部への電波ばく露を制限する付属品の使用推奨にも言及しなければならない。」とされている。日本でも総務省令により、毎キログラム当たり二ワットの許容値を満たすことが義務づけられてはいるが、一般的にこの比吸収率(SAR)について知られていないのが現状である。携帯電話購入の際の検討要素として、この比吸収率(SAR)も、より周知されるようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

八 岩手県滝沢村では、電磁波や低周波による影響などの調査研究や規制について「滝沢村環境基本条例」が施行されており、全国の他の市町村においても、携帯電話基地局の設置に関する条例などが施行されている。電磁波の人体への影響を考慮した法律の制定、規制の強化が急務と考えるが、政府の見解を示されたい。

九 フランスでは、電磁波による子供の健康への影響を考慮して「保健省は、六歳以下の子ども向けの電波放射機器の販売または無料配布を禁止する法律を制定することができる。」と法律で定められている。ロシアの国立非電離放射線防護委員会は「十六歳以下の子供は携帯電話を使うべきではない」、イギリスの国立放射線防護委員会は「八歳未満の子供には携帯電話を使わせないように」、カナダのトロント市公衆衛生局は「八歳以下の子供達には固定電話を」、アイルランドのアイルランド医師環境協会は「十六歳以下の子供には携帯電話を使用させないように」と、携帯電話の子供達の体への影響を考慮した規制・勧告・要請を行っている。日本においても電磁波の子供達の体への影響を考慮した法律の制定、規制の強化が急務と考えるが、政府の見解を示されたい。

十 携帯電話基地局の設置に関する住民と携帯電話会社との紛争について、政府が把握している件数と概要を示されたい。

  右質問する。