質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一九〇号

内閣参質一七六第一九〇号
  平成二十二年十二月十四日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出海上保安体制の構築と装備の強化等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出海上保安体制の構築と装備の強化等に関する質問に対する答弁書

一について

 海上保安庁においては、平成十八年から、昭和五十年代に集中的に整備された巡視船艇及び航空機の緊急かつ計画的な代替整備等を推進してきており、平成二十二年度第一次補正予算までに、当該代替整備等の対象としている巡視船艇百十八隻、航空機三十三機のうち、巡視船艇九十七隻、航空機二十七機に係る予算措置が講じられたところである。

二について

 海上保安庁においては、我が国の周辺海域をめぐる情勢が緊迫化していることや、遠方海域及び重大事案への十分な対応が求められていることを踏まえ、外洋や遠方海域での対応能力の向上を図るため、荒天下での航行能力、夜間捜索監視能力等を備えた大型巡視船や、航続性、高速性等を備えたヘリコプターの整備等を重点的に図ることとしている。
 また、お尋ねの「海上警備行動」については、個別の事案における具体的事情に基づき判断すべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、一般論として言えば、海上における治安の維持については、第一義的には海上保安庁の任務であるが、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十二条の規定により、防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができることとされている。

三について

 海上保安庁においては、平成二十二年十二月三日現在、不審船を捕捉するために必要と考えられる十分な速力等を有する、高速特殊警備船等の巡視船十二隻、及び夜間監視能力を備えた航空機四十三機を保有しており、不審船対応を主目的とする巡視船の整備は完了しているところであるが、引き続き、巡視船艇及び航空機の整備を進めるとともに、各種訓練の実施、関係機関等との連携を図ることにより、不審船対策を含む任務の遂行に万全を尽くしてまいりたい。

四について

 海上保安庁においては、耐用年数を超えた巡視船艇の代替整備等を計画的に進めてきたところであるが、平成二十二年十二月三日現在、耐用年数を超えた巡視船艇八十五隻を保有しており、引き続き、その代替整備等を適切に進めていくこととしている。
 お尋ねの「海上保安庁の通信装備」については、これまでアナログ無線機を主体としていたが、平成二十二年度第一次補正予算において、秘匿性に優れたデジタル無線機の導入に係る経費を計上したところである。また、海上自衛隊の艦船との秘匿通信については、防衛省と協議の上、情報共有が可能な秘匿通信装置を必要に応じ整備してきているところであり、今後とも同省と密接な連携を図りつつ、適切に対応してまいりたい。
 また、現在、海上保安庁においては、巡視船艇の整備に合わせて、レーダー、船舶自動識別装置(AIS)、夜間における撮影が可能な赤外線監視装置等の装備の強化を進めているところである。

五について

 政府としては、平成二十六年度以降に、現在使用している暗号アルゴリズムの安全性の低下が政府機関の情報システムの脅威になると予想されることから、同年度以降においても、当面、安全と考えられる暗号アルゴリズムに移行するための指針として、「政府機関の情報システムにおいて使用されている暗号アルゴリズムSHA-1及びRSA1024に係る移行指針」を平成二十年四月二十二日に開催された情報セキュリティ政策会議において決定している。
 各府省庁においては、この移行指針に基づき、平成二十六年度以降においても、当面、安全と考えられる暗号アルゴリズムへ平成二十五年度末までに移行できるよう、情報システムの整備及び更新に取り組んでいるところである。
 なお、当該移行が完了する前に新たな攻撃方法が発見され、急激に安全性が低下する事態が生じる場合に備え、暗号の安全性についての情報収集と状況の評価を継続的に行うとともに、各府省庁において、一時的な情報システムの利用停止、暗号鍵の運用の見直し等を含む緊急対応計画を策定しているところである。

六について

 海上保安庁においては、我が国の領海や排他的経済水域において、巡視船艇及び航空機によりしょう戒を行うとともに、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(平成十六年法律第三十一号)等に基づく外国船舶等からの通報や関係機関との情報共有によって得られた情報等を活用しつつ、不審な行動等を行う外国船舶や違法操業を行う外国漁船に対する厳正な監視や取締りを行っている。
 今後とも、巡視船艇及び航空機の効率的な運用を図るとともに、関係機関との緊密な連携の下に適時適切な情報収集に努めること等により、厳正かつ的確な監視や取締りを行ってまいりたい。

七について

 お尋ねの「領海進入等の監視」に係る人工衛星の活用等に関しては、今後の技術の発展等を踏まえつつ、検討してまいりたい。