質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一六六号

内閣参質一七六第一六六号
  平成二十二年十二月十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員田村智子君提出ゲフィチニブ(商品名「イレッサ」)の再承認申請に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田村智子君提出ゲフィチニブ(商品名「イレッサ」)の再承認申請に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「再承認申請」は、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条の四に規定する製造販売の承認に係る再審査の申請を指すものと考えるが、イレッサについては、現在、製造販売業者からの申請に基づき、再審査が行われているところである。
 再審査においては、申請者より提出された資料等に基づき、有効性、安全性等を確認することとなるが、申請者に対して更に照会を行う必要がある場合があることなどから、お尋ねの独立行政法人医薬品医療機器総合機構による審査報告書が完成する時期及び薬事・食品衛生審議会における審議時期の見通しを現段階で明らかにすることは困難である。

二について

 薬事法第十四条第一項の規定に基づくイレッサの製造販売の承認に際しては、無作為化比較試験を国内で実施することが条件として付されており、申請者により国内で無作為化比較試験が行われている。再審査においては、当該試験の結果を踏まえつつも、その時点で得られている最新の知見に基づき、イレッサの有効性、安全性等を確認することとしている。

三の1及び2について

 米国及び欧州連合における御指摘の経過については承知している。御指摘の措置及び承認については、米国食品医薬品局及び欧州医薬品庁がそれぞれ米国の法令及び欧州連合の指令に基づき、適切に判断して行ったものであると考えている。

三の3について

 イレッサについては、平成十四年七月の承認以降、同年十月に、イレッサ投与による間質性肺炎等の発症に関する「緊急安全性情報」を発したほか、平成二十二年十一月までに、少なくとも、「ゲフィチニブ安全性問題検討会」において二回、「ゲフィチニブ検討会」において四回、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会又は同審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において四回の審議が行われ、その安全性等について検討が行われるとともに、その都度、当該検討結果を踏まえ添付文書の改訂などの安全対策が講じられてきたことから、承認の見直しが必要であるとは考えなかったものであり、このことが異常であるとは考えていない。

三の4について

 再審査においては、その時点で得られている最新の知見に基づき、当該医薬品の有効性、安全性等を確認することとしており、米国及び欧州連合における対応等も勘案しつつ、適切に審査を行ってまいりたい。

四について

 お尋ねの一般名及び商品名並びに承認条件としての全例調査の義務付けの有無は、一般名イブリツモマブチウキセタン(遺伝子組換え)及び塩化イットリウム(90Y)、商品名ゼヴァリンイットリウム(90Y)静注用セットが義務付け有り、一般名イブリツモマブチウキセタン(遺伝子組換え)及び塩化インジウム(111In)、商品名ゼヴァリンインジウム(111In)静注用セットが義務付け有り、一般名エキセメスタン、商品名アロマシン錠二五ミリグラムが義務付け無し、一般名エルロチニブ塩酸塩、商品名タルセバ錠二五ミリグラム、タルセバ錠一〇〇ミリグラム及びタルセバ錠一五〇ミリグラムが義務付け有り、一般名塩酸アムルビシン、商品名カルセド注射用二〇ミリグラム及びカルセド注射用五〇ミリグラムが義務付け無し、一般名オキサリプラチン、商品名エルプラット注射用一〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名カペシタビン、商品名ゼローダ錠三〇〇が義務付け無し、一般名クラドリビン、商品名ロイスタチン注八ミリグラムが義務付け無し一般名ゲフィチニブ、商品名イレッサ錠二五〇が義務付け無し、一般名ゲムツズマブオゾガマイシン(遺伝子組み換え)、商品名マイロターグ注射用五ミリグラムが義務付け有り、一般名サリドマイド、商品名サレドカプセル一〇〇が義務付け有り、一般名スニチニブリンゴ酸塩、商品名スーテントカプセル一二・五ミリグラムが義務付け有り、一般名セツキシマブ(遺伝子組換え)、商品名アービタックス注射液一〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名ソラフェニブトシル酸塩、商品名ネクサバール錠二〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名ダサチニブ水和物、商品名スプリセル錠剤二〇ミリグラム及びスプリセル錠五〇ミリグラムが義務付け有り、一般名タミバロテン、商品名アムノレイク錠二ミリグラムが義務付け有り、一般名タラポルフィンナトリウム、商品名注射用レザフィリン一〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名テムシロリムス、商品名トリーセル点滴静注液二五ミリグラムが義務付け有り、一般名テモゾロミド、商品名テモダールカプセル二〇ミリグラム及びテモダールカプセル一〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名ニロチニブ塩酸塩水和物、商品名タシグナカプセル二〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名ネララビン、商品名アラノンジー静注用二五〇ミリグラムが義務付け有り、一般名パニツムマブ(遺伝子組換え)、商品名ベクティビックス点滴静注一〇〇ミリグラム及びベクティビックス点滴静注一〇〇ミリグラム「タケダバイオ」が義務付け有り、一般名ベバシズマブ(遺伝子組換え)、商品名アバスチン点滴静注用一〇〇ミリグラム/四ミリリットル及びアバスチン点滴静注用四〇〇ミリグラム/一六ミリリットルが義務付け有り、一般名ペメトレキセドナトリウム水和物、商品名アリムタ注射用五〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名ベンダムスチン塩酸塩、商品名トレアキシン点滴静注用一〇〇ミリグラムが義務付け有り、一般名ボルテゾミブ、商品名ベルケイド注射用三ミリグラムが義務付け有り、一般名ミリプラチン水和物、商品名ミリプラ動注用七〇ミリグラムが義務付け無し、一般名ラパチニブトシル酸塩水和物、商品名タイケルブ錠二五〇ミリグラムが義務付け有り、一般名レトロゾール、商品名フェマーラ錠二・五ミリグラムが義務付け無し、一般名レナリドミド水和物、商品名レブラミドカプセル五ミリグラムが義務付け有りである。
 また、お尋ねの承認後一年経過時点及び二年経過時点の累積投与者数については把握しておらず、副作用報告のうち死亡症例数については、調査に時間を要するため、お答えすることは困難である。

五の1について

 イレッサについては全例調査は行われていないが、平成十四年十二月に厚生労働省から製造販売業者に対し、積極的に副作用情報の収集を行うよう指導したことなどにより相当数の症例が報告されており、全例調査が行われたネクサバールと比較することについては問題ないと考えている。

五の2について

 お尋ねについては、調査に時間を要するため、お答えすることは困難である。

六及び七について

 全例調査については、薬事法第七十九条第一項の規定に基づき、医薬品の製造販売承認の際の条件としてその実施を義務付けているものであるが、同条第二項において、保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な最小限度のものに限り、かつ、承認を受ける者に対し不当な義務を課すこととなるものであってはならないとされていることから、当該医薬品の承認前に実施された治験に係る症例数が少ない場合、重篤な副作用の発現が多い場合等、副作用の発現状況等を把握するため追加の情報を収集することが必要な場合に限り、全例調査を義務付けているものである。
 イレッサについては、国内において実施された百例を超える治験に基づき副作用の発現状況等を整理分析できたこと、国内外の治験結果によると通常の抗がん剤に見られる骨髄抑制による白血球の減少等の発現が他の抗がん剤と比較して少なかったこと等から、全例調査を義務付けなかったものであり、製造販売後の副作用報告の集積等を勘案すると、現時点においても義務付ける必要はないものと考えている。
 なお、御指摘の平成十七年三月二十四日に開催された「第四回ゲフィチニブ検討会」において提案された全例調査の実施については、参加委員による議論の結果、「企業は、患者情報の把握に一層努めるとともに、関係学会と協力するなどして、ゲフィチニブの有効性と関係する変異の解明、EGFR遺伝子変異検査方法の確立等に向けて努力し、得られた成果については積極的に公表し、医薬関係者及び患者に対して情報提供すること。」とされ、全例調査を義務付けるべきとの結論には至らなかったものである。