質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九〇号

内閣参質一七六第九〇号
  平成二十二年十一月十九日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員中西健治君提出自転車利用の促進に向けての環境整備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中西健治君提出自転車利用の促進に向けての環境整備に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 警察庁の統計によれば、平成二十一年中の交通事故において自転車乗用中に死傷した者であって第一当事者又は第二当事者であったものの数は十五万三千九十九人であったが、その約六十五・六パーセントに当たる十万三百八十三人において何らかの道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)違反が認められた。また、同年中の自転車乗用者が第一当事者であって歩行者が第二当事者であった交通事故(人の死傷が伴うものに限る。)の発生件数は、二千八百四十六件であった。
 警察においては、このような情勢も踏まえ、自転車の交通秩序の整序化を図るため、関係機関等と連携しつつ、自転車の通行環境の整備と自転車利用者に対するルール遵守の徹底を並行して進めているところである。具体的には、道路管理者と連携した自転車の通行環境の整備の推進、あらゆる機会を通じた自転車利用者に対するルールの周知徹底、幼児から高齢者まで含めた幅広い層に対する自転車安全教育の推進、自転車利用者の交通違反に対する指導取締りの強化、交通ボランティア等と連携した街頭活動の強化等の対策を進めているところであり、今後とも自転車の交通秩序の整序化に向け、これらの対策を推進してまいりたい。

三について

 お尋ねの「車道の左側を通行する義務」違反、「歩道走行時の徐行義務」違反、「横断歩道における歩行者の優先義務」違反及び「安全運転の義務」違反の取締り状況については、これらの違反別の統計をとっていないため、それぞれの取締り件数は不明であるが、平成二十一年中の自転車利用者に対する道路交通法違反の総取締り件数は千六百十六件であり、その違反別の内訳は、信号無視が四百三十三件、通行禁止違反が三十八件、遮断踏切立入りが四百三十六件、指定場所一時不停止等が百八十二件、無灯火が六十八件、乗車・積載方法違反が三百六件、酒酔い運転が五十七件、その他の違反が九十六件となっている。
 また、取締りには至らないものの、交通ルールを守っていないとして、平成二十一年中に自転車利用者に対して指導警告票を交付した件数は、二百十六万五千七百五十九件となっている。

四について

 自転車の通行環境の整備については、自転車を歩行者、自動車のいずれからも分離した自転車道や自転車が通行可能な幅の広さを有する自転車歩行者道等の整備、普通自転車の歩道通行部分や自転車専用通行帯の指定等の交通規制等の手法により、当該道路の周囲の状況や、自転車、歩行者及び自動車の交通量に応じて、地域住民の意見等を聞きながら行っているところである。
 「新成長戦略」(平成二十二年六月十八日閣議決定)には、自転車の通行環境の整備に関する具体的な施策は盛り込んでいない。

五について

 お尋ねの「自動車損害賠償責任保険のように公的機関が保険料率を決定する画一的保険を、自転車利用者が簡便に利用可能な方法で提供」するとはどのようなことを指すのか必ずしも明らかではないが、現時点においては、自転車利用者に対して自動車損害賠償責任保険のような保険を提供し、その契約の締結を義務付けることについては、これによる負担の増加に対する理解が得られるか議論を要するほか、公正な保険料率を算出し、保険契約の締結を担保する上で必要となる自転車の利用実態等の把握を正確に行うことができないため、困難であると考えている。