質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八七号

内閣参質一七六第八七号
  平成二十二年十一月十九日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員秋野公造君提出鹿児島県奄美地方集中豪雨被害の災害対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員秋野公造君提出鹿児島県奄美地方集中豪雨被害の災害対策に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、本年十一月十九日に「平成二十二年十月十八日から同月二十五日までの間の豪雨による鹿児島県奄美市等の区域に係る災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」を閣議決定したところであり、この政令の制定により、御指摘の災害(以下「本件災害」という。)を激甚災害として指定し、公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助、農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置、小災害債に係る元利償還金の基準財政需要額への算入等の措置を適用することとしている。

二について

 本件災害が発生した当初の段階においては、通信の寸断等により被害の全容の把握が遅れたところであるが、通信の寸断等の解消に応じて適切に状況が把握されているところである。
 また、公共土木施設の被害の把握に当たっては、鹿児島県からの要請を受け、既に、国土交通省において、本省、地方整備局及び国土技術政策総合研究所並びに独立行政法人土木研究所の職員からなる緊急災害対策派遣隊を派遣して被害状況の調査等を実施し、その結果を同県、奄美市等の関係地方公共団体に伝達するとともに、国土技術政策総合研究所又は独立行政法人土木研究所に所属する土砂災害の専門家を被災地に派遣し、同県に対して土砂災害に関する技術的助言を行ったところである。

三について

 奄美大島においては、市町村から住民に向けて防災情報を伝達する防災行政無線(同報系)が各市町村に整備されているが、各種通信の寸断等により災害が発生した当初の段階における被害の全容の把握が遅れたところである。
 奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町及び龍郷町において把握している範囲では、本年十月二十日及び同月二十一日に防災行政無線(同報系)が使用できなかったのは、奄美市笠利地区及び住用地区並びに龍郷町戸口地区である。その理由は、奄美市笠利地区にあっては同市役所本庁と笠利支所を結ぶ有線光ケーブルのがけ崩れによる途絶、同市住用地区にあっては同市役所本庁と住用支所を結ぶ有線光ケーブルのがけ崩れ等による途絶及び停電、龍郷町戸口地区にあっては停電である。なお、奄美市笠利支所及び住用支所には無線室があり、自らの地区に対し放送可能であったが、住用支所では同月二十日の数時間、二メートルを超える浸水により無線室庁舎に入室ができず、使用できなかった。
 また、お尋ねの「携帯電話の通信可能な地域とするための取組」については、離島地域等の条件不利地域における地方公共団体による携帯電話基地局施設の整備及び無線通信事業者による伝送路施設の整備に対し、その整備費用の一部を補助する事業を行っているところであり、この事業は、奄美地方のような離島地域における地域振興及び防災対策に一定の効果があるものと考えている。

四について

 御指摘の「被災住民への心のケア」については、被災地において関係機関が連携して適切な対応を行うことが必要であり、厚生労働省から各地方公共団体に対して、「災害時地域精神保健医療活動ガイドライン」を示しているところである。今後とも、関係地方公共団体の要望を踏まえつつ、必要に応じ、被災者生活再建支援法(平成十年法律第六十六号)第三条の規定による被災者生活再建支援金等の各種支援施策も活用し、被災住民に対して適切な生活支援等を行ってまいりたい。

五について

 お尋ねの「後片付けの早期執行の支援」については、関係地方公共団体からの相談があれば、適切に対応してまいりたい。
 また、お尋ねの「災害ごみへの対応」については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二十二条の規定に基づき、市町村に対し、災害により特に必要となった廃棄物の処理に要する費用の一部を補助することができるとされているほか、当該補助に係る事業の市町村負担分については、特別交付税により、所要の措置を講じているところである。

六について

 災害に係る住宅の被害認定については、被害の実態に即して適切な運用が図られるよう、内閣府において、「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を定めるとともに、同指針に基づく調査が迅速に実施されるよう調査票等の参考資料を作成し、各地方公共団体に周知している。
 なお、本件災害においては、政府としては、内閣府の担当職員を奄美大島に派遣し、被災地の市町村の担当職員に対して被害認定に関する実地指導を行うなど、被害の実態に即した適切かつ迅速な被害認定の実施を支援しているところである。

七について

 本件災害に係る二次災害に対する全般的な対応は鹿児島県及び関係市町村において検討されるものであり、二次災害が起こり得る地域について、お尋ねのような情報提供はなされていないが、奄美市の住用川及び冷川、龍郷町の勝川等については、二についてで述べた国土交通省の緊急災害対策派遣隊が実施した被災状況の調査等の過程において、同県に対し、復旧工法の助言に併せて二次災害への対応についても助言を行っている。
 また、御指摘の「深層崩壊の調査」については、国土交通省において、過去の深層崩壊の発生事例等の情報を基に、奄美地方を含めた日本全国の深層崩壊の相対的な発生頻度を推定する調査を行っている。

八について

 御指摘のとおり、浸水被害の発生を未然に防止し、被害の拡大を防止するための取組は重要であると認識しており、「防災基本計画」(昭和三十八年六月十四日中央防災会議決定)において、防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項として、災害時において危険な区域の調査の実施等について定めるなど、各地方公共団体が地域特性に応じ地域防災計画を作成する際の基準を示しているほか、河川の氾濫を伴わない浸水被害のおそれのある箇所等の情報を示したハザードマップの作成や活用を促す等の取組を行っているところである。

九について

 災害応急対策、災害復旧事業等に要する経費については、単独で実施するものを含め、関係地方公共団体の実情を十分に聴いて、地方交付税や地方債による措置を講じ、その財政運営に支障が生じることのないよう適切に対処してまいりたい。

十について

 政府としては、大島紬の生産者を含む被災中小企業者対策として、本年十月二十一日に商工会議所等における特別相談窓口の設置や公的金融機関における災害復旧貸付の実施及び貸付条件の変更に関する柔軟な対応等を要請したところである。これを受け、同日より、当該各機関において被災中小企業者からの相談への対応や災害復旧貸付の申込みの受付を開始している。
 これらの対策により、引き続き、本件災害により被災した大島紬等奄美大島の伝統産業の復興支援に努めてまいりたい。

十一について

 お尋ねについては、本件災害のような被害が再度発生することのないよう、被災地の復旧・復興を支援してまいりたい。
 なお、奄美群島振興開発計画は、奄美群島振興開発特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)第三条の規定により鹿児島県が定めることとされており、政府としては、今後、当該計画の見直しに関して同県から相談があれば、適切に対応してまいりたい。

十二について

 政府としては、被災地において観光関連の風評被害が発生した場合には、地域の要望を踏まえ、関係団体等と調整の上、当該地域の観光宣伝等に協力することを検討してまいりたい。