質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七六号

内閣参質一七六第七六号
  平成二十二年十一月十二日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 仙谷 由人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出地域における猛暑対策の取組への支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出地域における猛暑対策の取組への支援に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「老健施設、保育所等の高齢者・幼児の熱中症予備軍」の意味するところが必ずしも明らかではないが、老健施設(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十五項に規定する介護老人保健施設をいう。)に入所している高齢者に対する熱中症対策については、本年九月に厚生労働省が各都道府県等あてに発出した文書において、特に高齢者に対する熱中症の予防法等について情報提供を行ったところである。また、保育所(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所をいう。以下同じ。)に入所している子どもに対する熱中症対策については、保育所保育指針(平成二十年厚生労働省告示第百四十一号)において、保育所に対し施設の温度、湿度、換気等を常に適切な状態に保持することを求めているところである。
 お尋ねの「WBGT(暑さ指数)の地域データの収集及びそれらを利用した熱中症ハザードマップの導入・策定等」による「熱中症予防管理の仕組み」の構築については、環境省において、WBGT(湿球黒球温度)を全国八か所で測定するとともに、WBGTの三時間ごとの予測値を翌日分まで四十七都道府県ごとに算出し、当該測定値及び予測値をホームページで公表しているところである。

二について

 お尋ねの「通報時の緊急レベルの判断マニュアルの作成」については、総務省消防庁が、平成二十三年度予算概算要求において、救急要請時等の段階で医学的知見に基づく基準によって緊急度を判定し、その度合いに応じた救急対応を行う仕組みを整備するための予算を要求しているところである。
 また、お尋ねの「緊急措置のマニュアル化」については、救急隊員は、消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)に基づき熱中症の応急処置に関する講習を受講していることから、現在でも、各消防機関において熱中症が疑われる傷病者の搬送に適切に対応していると考えているが、本年夏における熱中症の頻発を受けて、総務省消防庁として改めて熱中症に対する応急処置に関する留意点を各消防機関に示すこととしている。

三の1及び6について

 お尋ねの「熱中症啓発用マニュアル、リーフレット、カードの配布」については、環境省において、熱中症の症状、予防法、対処法等の情報を取りまとめた保健活動に指導的にかかわる者等向けのマニュアルのほか、一般国民向けのリーフレットや当該リーフレットの要点を記載したカードを作成し、地方自治体、国立大学、老人福祉施設等に配布するとともに、ホームページにも掲載しているところである。また、厚生労働省においては、職場における熱中症予防のためのパンフレットを作成し、都道府県労働局及び労働基準監督署を通じて関係事業場等に配布するとともに、ホームページにも掲載しているところである。さらに、文部科学省においては、教育関係者向けの熱中症予防のためのパンフレットを作成し、教育委員会等に配布するとともに、ホームページにも掲載しているところである。
 お尋ねの「希望者に対する「熱中症注意情報」の電子メール送信」については、既に、このようなサービスを提供している事業者等があると承知している。
 その他のお尋ねについては、一についてで述べたとおり、環境省において、WBGTを全国八か所で測定するとともに、WBGTの三時間ごとの予測値を翌日分まで四十七都道府県ごとに算出し、当該測定値及び予測値をホームページで公表しているところである。

三の2について

 事業所、工場、建設現場等職場における熱中症対策については、「職場における熱中症の予防について」(平成二十一年六月十九日付け基発第〇六一九〇〇一号厚生労働省労働基準局長通知)に基づき、WBGT値等により職場の暑熱の状況を把握し、必要な作業環境管理、作業管理、健康管理等を行うといった熱中症対策を的確に実施するよう、都道府県労働局及び労働基準監督署から事業場に対して指導しているところである。
 また、運動時における熱中症対策については、文部科学省において、熱中症の予防のための参考資料を作成し、教育委員会、スポーツ団体等へ配布するとともに、教育委員会、スポーツ団体等の関係者が集まる会議等において指導を行っているところである。また、同省が主催するスポーツ行事においては、熱中症事故等に対応するため、救護所の設置並びに医師及び看護師の配置を行っているところである。

三の3について

 三の1及び6についてで述べたとおり、関係省においては、熱中症に関する知識の普及及び啓発のためのパンフレット等を作成し関係先に配布するとともに、ホームページにも掲載しているところである。
 また、職場における熱中症に関する学習機会の強化については、「職場における熱中症の予防について」に基づき、熱中症の症状、予防方法等について労働衛生教育を行うよう、都道府県労働局及び労働基準監督署から事業場に対して指導を行っているほか、熱中症が原因である職場における死亡災害の発生状況等の公表等により、職場における熱中症に関する知識の普及及び啓発を図っているところである。
 さらに、学校教育における熱中症に関する学習機会の強化については、中学校、高等学校等の保健体育の教科において、身体の環境に対する適応能力や応急手当について指導する際に熱中症についても扱うこととしている。また、教育委員会等に対し、熱中症事故等の防止について依頼する文書を毎年度発出しているほか、教職員向けの参考資料を作成し配布するなど、熱中症に関する知識の普及及び啓発を図っているところである。

三の4について

 お尋ねの「役所・保健所等における専任者による熱中症対応の強化」については、保健所において、地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)に基づく地域住民の健康の保持及び増進に関する事業の一環として、熱中症対策に取り組んでおり、主に医師や保健師が中心となって、医学的な専門的知識に基づく健康相談等や、ホームページ、広報誌、講演等による情報提供等を行い、熱中症予防のための知識の普及及び啓発を図っていることから、専任者による対応は考えていない。
 なお、お尋ねの「熱中症に対応するための特定機関の設置」については、関係省庁が、その所管に応じ、熱中症に係る取組を適宜実施していることから、当該機関の設置は考えていない。

三の5及び四について

 お尋ねについては、民生委員等地域の関係者の連携による「声かけ運動」等地域の実情に応じた取組が市町村地域福祉計画(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第百七条に規定する市町村地域福祉計画をいう。以下同じ。)に盛り込まれるよう、厚生労働省として必要な助言や指導を行うとともに、本年九月に厚生労働省が各都道府県等あてに発出した文書において、独り暮らしの高齢者を周囲の方々が協力して注意深く見守ること等が重要である旨注意喚起を行ったところである。

五について

 熱中症が疑われる場合の対応としては、涼しい場所への避難が重要であると認識している。御指摘の「クールシェルター」については、大阪府吹田市内の四か所の消防署に、猛暑の際の一時的避難所である「熱中症シェルター」が設置された例があると承知している。

六について

 お尋ねの「「携帯型熱中症計」などの開発と普及」については、既に事業者において携帯型熱中症計が開発され、市販されていると承知している。
 また、お尋ねの高齢者世帯等への支援措置については、一についてで述べたとおり、WBGTの翌日までの予測値を四十七都道府県ごとに算出し、環境省のホームページで公表しているところであるが、今後、地方自治体等による高齢者等に対する熱中症対策も考慮しながら、地方自治体等における予測値の活用が一層進むよう、取り組んでまいりたい。

七について

 一般世帯及び生活保護を受給している世帯における夏季の電力消費実態及びエアコンの保有実態については、現在、厚生労働省において調査を行っているところである。御指摘の「夏季加算制度」の創設については、これらの調査結果等を踏まえ、現行の冬季加算の在り方を含めた生活保護基準全体に関する多角的な検証を行った上で、慎重に検討する必要があると考えている。
 また、水道、電気等のライフラインが停止された生計困難者の把握については、水道、電気等の事業者と地方自治体の保健福祉部局等との間の連携及び連絡体制を確保するよう、地方自治体に対して通知している。
 市町村地域福祉計画には、熱中症対策を含め、日常生活上の支援が必要な者に対する見守り等地域の実情に応じた取組が盛り込まれるべきものと考えており、市町村がそのような取組を盛り込むよう、厚生労働省としても、必要な助言や指導を行ってまいりたい。