質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七一号

内閣参質一七六第七一号
  平成二十二年十一月十二日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 仙谷 由人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員横山信一君提出障害者の就労支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員横山信一君提出障害者の就労支援に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「就労移行支援事業の利用者の一般就労への移行実績」の推移については、厚生労働省が平成十九年度及び平成二十年度において実施した調査(以下「厚生労働省調査」という。)によると、平成十九年度においては、調査対象とした千二百六事業所のうち八百四十三事業所から回答があり、当該事業所が実施する就労移行支援の利用者のうち、千百五十八人が就職を理由としてサービスの利用を停止している。平成二十年度においては、調査対象とした千六百四十九事業所のうち千二百二十八事業所から回答があり、当該事業所が実施する就労移行支援の利用者のうち、千七百四十八人が就職を理由としてサービスの利用を停止している。
 また、お尋ねの「福祉施設から一般就労に移行した者の割合」の推移については、厚生労働省調査によると、平成十九年度においては、調査対象とした一万千二百十二福祉施設のうち七千九百九十七福祉施設から回答があり、当該福祉施設の利用者のうち、一・四パーセントが就職を理由として退所している。平成二十年度においては、調査対象とした一万四千二十福祉施設のうち一万百九十七福祉施設から回答があり、当該福祉施設の利用者のうち、一・六パーセントが就職を理由として退所している。

二、三及び五について

 お尋ねの点については、現在、障がい者制度改革推進本部の下で開催されている障がい者制度改革推進会議等において、いわゆる福祉的就労の在り方及び所得保障の在り方を議論しているところであり、その結果も踏まえ、検討してまいりたい。

四について

 「「工賃倍増五か年計画」を推進するための基本的な指針」(平成十九年七月六日付け障発第〇七〇六〇〇四号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)を発出する前の平成十八年度と、平成二十一年度について比較すると、全施設の平均工賃の額(全国の「工賃倍増五か年計画」の対象となっている福祉施設(以下「対象施設」という。)の利用者に対して支払われた一年間の工賃の合計を、対象施設の一年間の利用者の延べ人数で除した額をいう。)については、平成十八年度が一万二千二百二十二円、平成二十一年度が一万二千六百九十五円である。お尋ねの「工賃倍増五か年計画」の達成状況及び実現見通しについては、平成十八年度に比べ、平成二十一年度は、三・九パーセントの伸びとなっており、同計画の途中段階である現時点では、目標は達成されておらず、同計画の最終年度である平成二十三年度に向け、今後更なる改善に努める必要があると考えている。
 また、施設種別ごとの平均工賃の額(対象施設の種別ごとに、対象施設の利用者に対して支払われた一年間の工賃の合計を、対象施設の一年間の利用者の延べ人数で除した額をいう。)については、対象施設の種別ごとに、平成十八年度及び平成二十一年度の額は、就労継続支援B型事業所が、一万千八百七十五円、一万三千九十一円、身体障害者入所授産施設が、一万八千百十七円、一万七千百九十円、身体障害者通所授産施設が、一万九千三百九十四円、一万八千四百十九円、知的障害者入所授産施設が、一万三百三十四円、一万三百五円、知的障害者通所授産施設が、一万千五百二円、一万千九百二十八円、精神障害者入所授産施設が、一万九百四十六円、九千五百四十二円、精神障害者通所授産施設が、一万二千七百四十五円、一万二千七十四円、身体障害者小規模通所授産施設が、一万四百十五円、九千四百十円、知的障害者小規模通所授産施設が、一万八百九十六円、一万五百九十一円、精神障害者小規模通所授産施設が、七千三百三十五円、六千五百四十六円である。

六について

 お尋ねの「福祉的就労の見直しの基本的方向」については、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成二十二年六月二十九日閣議決定。以下「基本的な方向」という。)に示しているとおりである。また、お尋ねの「論点」については、現在、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会(以下「福祉部会」という。)において、「これまでの就労政策の問題点をどう考えるのか」、「福祉的就労のとらえ直しを含む、これからの就労の制度設計をどう考えるのか」といった論点について議論しているところである。
 福祉部会においては、基本的な方向を踏まえ、議論を進めているところであるが、御指摘の「新たな施設体系に移行すること」と基本的な方向において示した「障害者制度改革の基本的考え方」は矛盾するものではなく、「福祉的就労の在り方そのものが議論されている中で、二十三年度中の移行を迫るのは矛盾があるのではないか」との御指摘は当たらないものと考える。

七について

 御指摘の共同受注窓口については、今年度当初は、全国八ブロックに一か所ずつ整備する方針で都道府県に対する補助を行うこととしていたが、都道府県からの補助の申請状況を踏まえ、当該方針にかかわらず、申請のあった都道府県に補助を行うこととし、これまで、北海道、静岡県、三重県、奈良県及び徳島県に対し補助を行ってきたところである。来年度以降の整備の在り方については、今後、検討してまいりたい。

八について

 現時点においても、事業所が工賃引上げのために業種転換を行う際には、就労訓練設備の購入等について、都道府県の障害者自立支援基盤整備事業による助成を受けることができることとなっており、厚生労働省としては、引き続き、同事業に対する支援を行ってまいりたい。

九について

 お尋ねの国及び地方公共団体による福祉施設等に対する官公需の発注等の取組としては、平成二十一年二月に開催した福祉施設受注促進担当者会議において、内閣府及び厚生労働省から、各府省に対し、福祉施設等に対する官公需の発注等に配慮するよう依頼しているところである。また、厚生労働省から、都道府県等に対し、「障害者を多数雇用する事業所、障害福祉施設等に対する官公需の発注等の配慮について」(平成二十一年二月十日付け職高発第〇二一〇〇〇一号・障発第〇二一〇〇〇二号厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長及び社会・援護局障害保健福祉部長連名通知)を発出し、福祉施設等に対する官公需の発注等に配慮するよう依頼しているところである。
 また、御指摘の発注促進税制については、障害者の働く場の確保や工賃・賃金水準の向上につながり、障害者の自立の支援に資する効果があると認識している。

十について

 障害福祉サービスに係る報酬については、今年度から来年度にかけて実施する予定の「障害福祉サービス経営実態調査」の結果も踏まえ、次期改定を行うこととしている。

十一について

 政府としては、今後、諸外国における社会的企業に係る制度の研究も踏まえ、非営利法人が活動しやすくするための制度の見直し・検討を、非営利法人に係る制度全体の整合性に配慮しつつ進めることとしているが、現時点において、検討の見通しや検討の進め方についてお答えすることは困難である。