質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五七号

内閣参質一七六第五七号
  平成二十二年十一月二日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出猛暑による農業・畜産業・水産業への影響と今後の対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出猛暑による農業・畜産業・水産業への影響と今後の対策に関する質問に対する答弁書

一について

 本年の夏の高温により、農作物の品質又は収量の低下が発生している。具体的には、水稲うるち玄米については、同年十月二十日に農林水産省が公表した同年九月三十日現在の農産物検査結果(速報値)のとおりであり、一等比率が昨年同期に比べ低下し、野菜については、同年十月上旬の市場出荷量が昨年の同期に比べ減少している。暑熱により死亡し、又は廃用された家畜の頭羽数は、本年九月十六日に農林水産省が公表した「暑熱による畜産関係被害状況と技術指導の徹底について」のとおりであり、夏に高温であった平成二十年の同期に比べ、大きく増加している。水産物の具体的な被害の状況は現在調査中であるが、高水温の影響による養殖ほたて貝のへい死等が発生している。
 農林水産省は、本年八月以降、累次にわたり、都道府県に対し、高温による被害を防止するための技術指導についての通知を発出している。また、地球温暖化に関し、当面の適応技術並びに短期及び中長期な研究開発課題を、平成十九年六月に「品目別地球温暖化適応策レポート・工程表」として、また、農業生産現場における具体的な影響と取組を、平成十八年度以降毎年度「地球温暖化影響調査レポート」等として、それぞれ取りまとめている。これらの通知及び報告書は、農業生産現場における営農指導にいかされ、高温による被害を少なくすることに役立ったと考えている。

二について

 現時点における本年の高温による農畜産物の被害状況は、一についてでお答えしたとおりであるが、今後、必要に応じて更に被害の状況把握を行うこととしている。農業災害補償制度については、御指摘の「弾力的な運用」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)の適切な運用を行っている。また、融資については、株式会社日本政策金融公庫等による農林漁業セーフティネット資金の円滑な融通等を行っている。今後とも引き続き、これらの取組により農業者の経営の安定のための支援に努めてまいりたい。

三について

 農畜水産物加工業者に対しては、株式会社日本政策金融公庫等による経営環境変化対応資金の円滑な融通等を行っており、今後とも引き続き、これらの取組により農畜水産物加工業者の経営の安定のための支援に努めてまいりたい。

四について

 農業災害補償制度及び漁業災害補償制度においては、共済掛金率は、農業災害補償法第百七条等及び漁業災害補償法(昭和三十九年法律第百五十八号)第百十二条等に基づき、過去一定年間の各年の被害率を基に、農業災害補償制度にあっては三年ごと、漁業災害補償制度にあってはおおむね三年ごとに国が算定する率を下らない範囲内において、農業共済組合、漁業共済組合等が自ら定めることとしている。したがって、気候変動に伴い被害率に変化が生じた場合には、その変化は共済掛金率に適切に反映されることとなっている。
 また、御指摘の「補償率」の意味するところが必ずしも明らかではないが、補償される共済金の額は、農業災害補償法第百六条及び第百九条等並びに漁業災害補償法第百十条、第百十一条及び第百十三条等に基づき、平年の収穫量又は生産金額を基礎として、被害率とは関係なく定められている。

五について

 気候変動による農業水利施設への影響については、現在、農林水産省において検討しているところである。農業水利施設の老朽化の進行に対しては、これまでは事業の実施地区のすべての施設を一体的に更新することを基本としていたが、今後は、補修又は更新が必要となる施設を計画的かつ効率的に整備していくことを基本とする考えである。