質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二一五号

視覚障害者への情報バリアフリー化対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月三日

秋野 公造   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   視覚障害者への情報バリアフリー化対策に関する質問主意書

 わが国の視覚障害者の総数は三十一万人を超えるが、その八十七%以上は点字の判読が困難な現状にあるなど活字文書の情報把握が非常に困難である。平成十五年に厚労省が「音声コード」活用の「活字文書読み上げ装置」を日常生活用具に指定し、視覚障害者に紙で音声情報を提供できる環境が整いつつある。しかし、プライバシー情報(税金、預金、年金、公共料金等)と生活情報については、自立した生活と社会参加を行うために不可欠の情報源であるにもかかわらず、「ねんきん定期便」の個人記録に音声コードを導入する方針が示されたのみで、現時点では全く情報提供がなされていない。
 平成十六年に改正された障害者基本法の第三条第三項に「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と規定されているが、現状は情報提供の面で大きく立ち遅れている。視覚障害者が情報を取得する機器の普及促進・開発支援や、行政機関のデータベースのプライバシー情報を音声コード化するシステムの整備など、早急に対策を講ずる必要がある。
 こうした実状を踏まえ、全ての視覚障害者が健常者と同じようにプライバシー情報や生活情報を入手できるようにして、視覚障害者本人が自分自身でそれらを確認できる「情報バリアフリー化」の早期実現が重要である。よって以下のとおり質問する。

一 視覚障害者への情報バリアフリー化について

 視覚障害者の自立と社会参加及び行政事務の効率化・公正化のために、点字や録音図書では対応不可能な行政機関が保有するプライバシー情報や生活情報を、健常者と同じように視覚障害者一人一人が自分自身で確認できる「情報バリアフリー化」を実現する社会を構築することが必要と考える。なかでも、平成二十二年版情報通信白書の「チャレンジドの推移」では、身体障害者に占める六十五歳以上の高齢者の割合が年々増加していることが記されており、ICT(情報通信技術)を用いたコミュニケーションの権利は等しく国民に享受されるべきものであることから、視覚障害者への「情報バリアフリー化」の推進をさらに充実・強化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 プライバシー情報への対応について

 全ての視覚障害者に対して、プライバシー情報を確実に保障する責務を果たすために、電子政府自治体の取組において、行政機関のデータベースのプライバシー情報を音声コード化するシステムを整備することが必要と考える。具体的には、住民票・印鑑証明・謄本など各種証明書の発行と税金通知書・公共料金・障害者控除対象者認定書など各種通知文書の送付を行う行政基幹システムを、音声コード化に対応できるシステムに改善することが必要であると考えるが、政府の取組について明らかにされたい。
 さらに、視覚障害者への「情報バリアフリー化」の環境整備については、「活字文書読み上げ装置」を国の関係機関及び地方自治体の窓口に設置するとともに、平成二十一年度補正予算による視覚障害者等情報支援緊急基盤整備事業において国及び地方自治体も含めて音声コード導入促進に向けた研修会を開催している。そこで、現時点における地方自治体における研修会の実施状況と、全ての自治体関係者が「音声コード」の意義を理解し視覚障害者への情報提供を促進させるための研修会の開催に向けた取組について、政府の対応を明らかにされたい。

三 選挙公報における対応について

 憲法では基本的人権として参政権を保障している。よって、選挙においては、投票する権利を行使するための情報は、誰にでも等しく保障されるべきである。全国の選挙管理委員会が候補者の情報として有権者に提供する選挙公報について、点字化・音声コード化による視覚障害者への対応は、地域によって格差があるようだが、その実態について明らかにされたい。
 そして、現状は、点字版・音声コード版の選挙公報は、号外扱いで希望者のみにしか配布されていない。このことは、憲法の基本的人権を侵害しており、健常者と同様に視覚障害者に対しても全戸配布すべき体制整備を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
 さらに、平成二十三年度の統一地方選挙において、全国の選挙管理委員会が全ての視覚障害者に点字版か音声コード版の選挙公報を提供し、候補者の情報を視覚障害者本人が確認できるようにすることで、地域間による情報格差を解消すべきと考えるが、政府の取組について明らかされたい。

四 医療・薬剤に関する情報提供について

 生命を守るために、正確な医療・薬剤情報を視覚障害者が確認できることが必要不可欠であることから、薬の処方箋や医療費請求書などを音声コード化して、視覚障害者に医療・薬剤情報を提供する必要性があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 預金残高及び公共料金における対応について

 銀行・郵便局など金融機関の預金通帳残高や、電気・ガス・水道等の各種公共料金及びNHK受信料の請求内容について、障害者基本法の第三条第三項「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」という規定を遵守するために、銀行法・放送法・日本郵政株式会社法・郵便局株式会社法における規定も踏まえ、視覚障害者本人が金額を確認できるように音声コード化の導入を図ることが情報のバリアフリー化のために必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。