質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九三号

菅総理の内閣支持率一%発言の真意と歴史的評価に耐えうる政権運営の意義に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月三日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   菅総理の内閣支持率一%発言の真意と歴史的評価に耐えうる政権運営の意義に関する質問主意書

 菅総理は本年十一月二十七日、仙谷官房長官と馬淵国土交通相への問責決議案が可決されたことから、鳩山前総理と都内で会談し、二〇一一年の通常国会の審議は混乱が予想され、政権運営は厳しさを増しているとの意識を共有しつつ、今後の政権運営への協力を要請した。この会談の最中、総理は最近の内閣支持率低下に触れて、「内閣支持率が一%になっても辞めない」と述べたと複数のテレビ、全国紙等が報道している。
 以上を踏まえて、以下質問する。

一 菅総理の内閣支持率一%発言の真意について

 菅総理は、世論調査の内閣支持率が一%になったとしても辞めないと述べたと報道されているが、この発言は菅総理自身の発言であるのか。また、菅総理自身の発言であるのであれば、その真意について、明らかにされたい。

二 内閣支持率一%発言が今までの発言と矛盾していることについて

 菅内閣の支持率が一%ということであれば、残りの九十九%は菅内閣を不支持ということになる。
 かつて、平成二十一年二月二十七日の衆議院予算委員会において、菅氏は麻生総理(当時)に対し、「事実上、戦後初めて二大政党時代に現実に入ってきているというのが私の認識です。その中で、一方の政党が行き詰まったときにどういう行動をとられるのか。(中略)二大政党になったときには、一方の政党が行き詰まったら、いや、行き詰まっていないと言うんだったらまさに解散すればいい」、「私は、これが本当の意味での二大政党下における、政権が行き詰まったときのやるべき行動だと思います」と述べている。
 また、平成二十一年十二月に菅総理自身が著した「大臣 増補版」において、「政策的に行き詰まったり、スキャンダルによって総理が内閣総辞職を決めた場合は、与党内で政権のたらいまわしをするのではなく、与党は次の総理候補を決めたうえで衆議院を解散し、野党も総理候補を明確にしたうえで総選挙に挑むべきだろう」と記述している。
 もはや、現時点において菅内閣は行き詰まっており、即刻、解散総選挙を実施すべきであると考える。支持率が一%になったとしても辞めないというのは、過去の発言や自書と相矛盾することとなるが、見解、認識を明確に示されたい。

三 民主党政権が行うべき具体的な行動について

 民主党政権は、大衆がどのように考えているか、動向はどうなのか、支持率が少しでも高くなるにはどうすればよいかなどと意識しているが、それはあくまでも政権維持の観点が強いからである。かつての学生運動時に風靡したデラシネ(浮き草)的である。いわばその時々の風向、状況によりどうにでも変わり、依って立つ基盤を持ち得ていないという決定的な欠陥なのではないか。
 その淵源は、民主党に政党の憲法に相当する党綱領がないことにある。即ち民主党は、政権政党を目指してきたにもかかわらず国家観、安全保障などの基本政策においてまとまっていない。民主党は政権政党となったが、各グループが選挙互助的であるがゆえに、党綱領の策定が困難であるという矛盾を内包している政党と指摘され得る。これは従来から言われてきたことである。
 ところで、言うまでもなく国会はねじれてはいるが、依然として民主党は衆議院において三百議席を超える政党であり、国家を運営する政権担当の立場を与えられている。
 権力は、国民のために行使するものであり、一政党のためにあるのではない。一部の民主党国会議員の奢りのような行動に国民は呆れている。
 民主党政権は、政権運営上の巨大な権力を持つものとして十分律しなければならない。その意味からも、民主党政権が第一義的に行うべき具体的な行動は、①節度と覚悟を肝に銘じること、②国民への十分な説明責任を果たすこと、③民主党自身の政治と金などの問題に対して自浄能力を明確に、しかも国民の皆様にわかりやすく説明すべきことなどである。このことについて、民主党政権の見解を問う。

四 菅総理の内閣支持率一%発言と歴史的評価に耐えうる政権運営の意義の明確化について

 内閣支持率一%の極限値になったとしても辞めないとの菅総理の発言は、今までの発言と矛盾していることは既に指摘したところである。菅総理の発言を単なるその場限りの発言とすべきではない。それ相当の意義のある発言であることを明確に示すべきである。
 即ち、どんな状態になったとしても総理の立場を離れないとの発言であることを考えると、千歩譲って、その発言を裏打ちする、歴史的評価に耐えうる日本の将来に係る戦略的政策、我が国の未来の可能性を大きく開く戦略的見解を持ち合わせていなければならない。それを明確に示すべきである。
 菅総理としては、「だからこそ私は、内閣支持率一%になったとしても総理としてとどまらなければならないのです」と、その意義、責任とそれらの説明責任が同時に伴っているのであれば、国民に示すべきである。
 内閣支持率一%発言はそれだけ重大な意義を含んでいるものであり、さらに言うと、この件に限らずそもそも総理の発言は、重大な意義と責任を持つものであることを改めて深く菅総理自身が認識すべきである。以上の種々の指摘事項に対して見解を示されたい。また、内閣支持率一%発言は、いっそのこと国民の皆さんに訴える記者会見を実施すべき重大な発言であると考えるが、見解を示されたい。

五 新成長戦略の種々の政策執行の優先順位について

 菅政権の政策的戦略性を考えるとき、本年六月十八日に閣議決定した「新成長戦略」が対象になり得るとすると、「新成長戦略」には相当数の政策等が存在する。これらを如何に効果的に実行するかが大事である。
 そこで、「新成長戦略」の全体的な戦略を如何なる優先順位で執行するのか。少なくともこのことが重要になってくる。
 「新成長戦略」にあるジョブカード制度の廃止や菅政権の目玉政策である「総合特区制度」の予算計上見送りなどを取り上げるまでもなく、ダッチロール的イメージだけが伝わってくるが、菅政権の基本的な方向性が全く見えてこない。菅政権の路線の明確な実態を掴むに掴めない状態にあり、正に蜃気楼内閣ではないか。
 国民の生命・生活・生存を徹底して守ること、国益を求め抜くことに宰相の使命がある。菅総理は、実質的に一体何をやりたいのか。歴史的評価に耐えることができる基本戦略を持っているのか。現在発表している政策体系において、如何なる優先順位で種々の政策を執行したいのか。この際、その優先順位を明確に示されたい。

  右質問する。