質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一七五号

武器輸出三原則に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月二日

福島 みずほ   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   武器輸出三原則に関する質問主意書

 武器輸出三原則は、三木内閣によって定義されて以来、様々な議論を積み重ねながら、平和国家としての我が国の柱として、堅持し続けている。今年末までに決定される予定の「防衛計画の大綱」策定のために要請された「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」は、その報告書の中で「武器輸出三原則の下での武器禁輸政策については、見直すことが必要である」としている。しかしながら、この懇談会が示す考えは、武器製造のコストという経済的な側面のみを追及する、極めて浅薄な発想でしかなく、我が国が日本国憲法の下、平和主義を標榜し、国際社会の中で存する国としての意思や、それを堅持するための政治的な営みを冒涜するものである。戦後、日本が関与する武器で、誰をも殺すことがなかったという事実の重さを鑑みれば、この提言の示唆するところは、日本外交の姿勢を大きく変貌させるものである。世界に武器を拡散させる主体となりながら、一方で、平和主義を標榜する国のあり方は、欺瞞以外ではありえず、国際社会の中で、これまで築いてきた信頼を失う行為である。ゆえに、その重大さに鑑み、以下質問する。

一 武器輸出三原則の定義及び解釈について

1 武器輸出三原則がいう「国際紛争」の定義を示されたい。
2 国内外の動きについて、それが国際紛争であるかどうかを判断するのは、日本国内において、どのような機関の、どのような役職の者か、示されたい。
3 「国際紛争の当事国」といった場合、イラク戦争における米国及びアフガニスタン戦争における国際治安支援部隊は「国際紛争の当事国」であると考えるが、いかがか。それぞれについて示されたい。また、米国及び国際治安支援部隊が「国際紛争の当事国」ではないとしたら、その理由を示されたい。

二 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会が提出した報告書について

1 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会が提出した「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想-『平和創造国家』を目指して-」によると、「防衛産業の高コスト体質の温存を許してきた」中で、「『国際共同開発・共同生産』という第三の道を選択肢に加える必要がある。」と指摘している。政府は、国際共同開発・共同生産の方が国産武器よりコスト安であると考えるか。コスト安と考えるのであれば、それを示す厳密なデータまたは試算を示されたい。

三 政府の方針の変更について

1 今年末までに決定する予定の「防衛計画の大綱」において、政府は、これまで米国のみに限っていた武器輸出三原則の例外を米国以外の国に拡げる方針であるのか。
2 武器輸出三原則の例外を米国以外の国に拡げること、または武器の「国際共同開発・共同生産」について、米国から要請があったか。
3 これまで日本外交は、武器縮減のために努力してきたと理解している。今後、我が国は、この方針を転換し、武器拡散の主体となるという認識でよいか。

四 政府の武器輸出管理について

1 政府は、一九八三年一月十四日付け内閣官房長官談話を発して以来、米国に、武器輸出三原則の例外を認めてきた。この間に、日本が供与した技術によって、米国がどのような武器を開発したのか、そのすべてを例示されたい。
2 これまで米国に限ってきた武器輸出三原則の例外を米国以外の国に拡げるとすれば、政府は、それによって起こりうる武器の拡散をどのような管理策で防げると考えるのか、示されたい。
3 武器輸出三原則の変更によって想定されている能力向上型SM3の第三国への輸出は、欧州を皮切りとしたグローバルなミサイル拡散につながると考えるが、いかがか。

五 国際的武器輸出管理レジームについて

1 現在、国際的武器輸出管理レジームには、核兵器に関する「原子力供給国グループ」(NSG)、「ザンガー委員会」(ZC)、化学兵器に関する「オーストラリア・グループ」(AG)、ミサイルに関する「ミサイル技術管理レジーム」(MTCR)、通常兵器及び汎用品に関する「ワッセナー・アレンジメント」(WA)等が考えられる。しかしながら、これらの枠組みは法的拘束力をもたない国際取り極めでしかなく、現時点においては、武器輸出を取り締まるには十分な枠組みと言えないと考えるが、いかがか。
2 現在、国際連合では、二〇〇六年に英国を中心に可決された決議を受けて、通常兵器の輸出入に関する国際基準を示し、その管理を強化するための武器貿易条約(ATT)策定に向けた作業が進められている。日本政府は、この武器貿易条約(ATT)に対して、どのような方針で対応しているのか。

六 高コストな装備品調達の背景にある防衛省の構造的問題について

1 装備品調達のコストが高いと指摘されている。しかし、装備品調達については、これまで何度か、防衛省において問題となってきた随意契約や天下りなどの現状にこそ、対策を行う必要があると考える。「防衛計画の大綱」においては、この問題への取組が盛り込まれるという認識でよいか。盛り込まれないのであれば、この問題についての防衛省の取組は、どこで明らかになるのか。
2 本年九月二十日の東京新聞は、「防衛省が毎年一兆円近い武器調達費を支払っている契約高上位二十社に、過去十年間で三百二十人の将官ら幹部自衛官が顧問や嘱託として再就職していることが分かった。」、「天下り数と支払額はほぼ比例しており、『人とカネ』を通じた防衛省と防衛産業の密接な関係が裏付けられた。」と指摘している。このような事実があるか。あるとすれば、極めて問題だと考えるが、いかがか。対応策を示されたい。

  右質問する。