質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一六八号

尖閣諸島沖における中国漁船衝突事件に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月二日

森 まさこ   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   尖閣諸島沖における中国漁船衝突事件に関する質問主意書

 尖閣諸島沖における中国漁船衝突事件に関して、以下のとおり質問する。

一 平成二十二年九月七日に警戒中の我が国の巡視船に体当たりし、海上保安庁が公務執行妨害で逮捕した中国人船長を、海上保安庁から送致を受けた那覇地方検察庁は平成二十二年九月二十五日に処分保留のまま釈放した。那覇地方検察庁のこの判断はいかなる法的根拠をもってなされたものか。

二 那覇地方検察庁は、中国人船長を釈放する以前の平成二十二年九月二十三日、外務省の担当官を呼び意見を聴取したことが明らかとなっているが、法と証拠によってのみなされる検察の判断において、何故、外交を担当する外務省の意見を聴取することが必要であったのか。また、この時聴取した内容を具体的に示されたい。

三 仙谷官房長官兼法務大臣と柳田前法務大臣は、検察が中国人船長を処分保留のまま釈放したことに関する根拠法について「刑事訴訟法第二百四十八条の趣旨を踏まえたもの」と国会で答弁しているが、「趣旨を踏まえる」とはいかなる法解釈によるものか明らかにされたい。また、過去において検察が刑事訴訟法第二百四十八条の趣旨を踏まえて被疑者の釈放を行った前例があるのか、具体的に示されたい。

四 平成二十二年九月二十四日付けの発表のなかで、那覇地方検察庁は、中国人船長の罪となるべき事実について巡視船みずきに対する公務執行妨害のみを挙げているが、それ以前に衝突を受けた巡視船よなくにに対する加害事実については触れていない。これはいかなる理由によるものか。

五 釈放された中国人船長については、いまだ処分が決定されていないが、今後の起訴の可能性について、仙谷官房長官は平成二十二年十月十二日の衆議院予算委員会で事実上公判は開かれないと認識していると答弁した。これに対し、柳田前法務大臣はしかるべき時に起訴不起訴の判断がなされると答弁するなど、この時点で内閣内部での見解の不一致が見られるが、この点に関する政府の統一見解を示されたい。また、処分保留とされた中国人船長の処分はいつ、いかなる形で決定されるのか示されたい。

六 中国漁船衝突事件の当日、周辺の海域には、領海線の外に百隻、領海線内に三十隻の中国漁船がいたということが分かっている。仙谷官房長官はそのことの報告を受けていたことが、平成二十二年十一月二十五日の参議院法務委員会の答弁で明らかになったが、何故これまでその事実を公表しなかったのか。

七 那覇地方検察庁は、中国人船長を釈放した時には捜査はほぼ終了していたと証言しているが、何故、捜査をほぼ終了した時点でビデオを公開しなかったのか。また、捜査がほぼ終了しているにもかかわらず、中国人船長に対して終局処分をしないのは何故か。

八 検察はこの事件に関する告発を一般国民から受けていながら、二週間以上も受理せず放置していた可能性が示唆されているが、この告発を通常の処理に反して受理していなかった理由は何故か。また、この告発を受理したのはいつか。

  右質問する。