質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四〇号

横浜APECと日米首脳会談に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月三十日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   横浜APECと日米首脳会談に関する質問主意書

 我が国外交にとって重要な三か国、つまり米国、中国、ロシアとの二国間関係は、民主党政権樹立後、行き詰まっており、その立て直しが求められている。
 そういう中で、去る十一月十三日、これら三か国の首脳と個別の会談が実現でき、修復への兆しが見られ、ひとまずは区切りがついたとも言えよう。しかし、この機会に、包括的な外交戦略づくりと、それを推進する態勢の練り直しが求められているのではないか。
 領土問題をめぐる中国、ロシアの強硬姿勢の背景として、普天間問題による日米関係の揺らぎを指摘する意見が少なくない。
 そこで、以下質問する。

一 横浜APECにおける日米首脳会談と日米同盟について

 日米関係については、鳩山前総理大臣、菅総理大臣とも我が国外交の基軸と位置付けながら、一番重要な日米間の信頼関係が損なわれ、乖離していった。昨年十一月の日米首脳会談で日米同盟の深化の協議開始が確認されたものの、その後協議は進展せず、日米安保条約締結五十周年の本年にその成果を発表することができなかったことは非常に残念なことである。来年春の総理大臣訪米時に延期されたが、より充実されたものをつくらなければならない。
 日米同盟の深化とは何なのか、今何故必要なのか、そして政府は今後それをどのように進め、取りまとめていきたいと考えているのか、政府の見解を示されたい。

二 在日米軍駐留経費負担について

 日米首脳会談では、在日米軍駐留経費負担についての基本的な考え方が日米間で一致したことに言及している。野党時代に民主党は同経費負担の減額を主張していたが、前記の基本的な考え方とはどのような内容なのか明らかにされたい。
 また、現行の在日米軍駐留経費負担特別協定(平成二十年一月二十五日署名)交渉の際の合意事項として、「両政府は、より効率的で効果的な在日米軍駐留経費負担とするために、包括的な見直しを行うことで一致」していた。この包括的な見直しは行われたのか、併せて明らかにされたい。

三 普天間飛行場移設問題について

 日米首脳会談では、普天間飛行場移設について、菅総理大臣から、本年五月の日米合意に基づき進めていきたい、自分(総理大臣)自身も沖縄の理解を求めつつ最善の努力をしていきたい旨述べたと発表されている。
 鳩山前総理大臣は、「私を信じてほしい」といいながら、何も解決できなかったばかりか、事態をより一層困難にした。菅総理大臣は自らの言葉の重みをかみしめ、来春までに普天間移設の道筋をつける責任を負わなければならない。総理大臣を始め関係閣僚は職を賭してこの問題の解決を図る覚悟はあるのか如何。
 本年八月二日の衆議院予算委員会において菅総理大臣は、「いろいろな機会をつくって、それがより効果的であるならば、何度と決めることなく足を運ぶ用意は十分にあります。」と答弁していたが、その後一度も沖縄に足を運ぶことはなかった。総理大臣自らが行動を起こすことが必要ではないか。沖縄県知事選後、できるだけ早く沖縄に赴き、地元の理解を得る努力をすべきと思うが、認識如何。

四 中国の南シナ海権益における「核心的利益」の取り下げ発言について

 中国は本年三月、スタインバーグ米国務副長官らに、南シナ海を「核心的利益」とする方針を伝え、さらに、五月の「米中戦略・経済対話」において、戴秉国国務委員がクリントン米国務長官に中国政府の立場として正式に伝えた。
 中国は沖縄県・尖閣諸島や、南シナ海のほぼ全海域を自国の権益圏とみなし、領有権を主張した。特に軍事、通商の要衝に当たる南シナ海について、国家の本質的な利益に直結していることを意味する「核心的利益」と位置付け、権益確保のための軍事活動を活発にすることを示唆したが、その後、大きな変化が起こった。
 報道等によれば、中国政府は米政府に対し、これまでの発言を否定し、核心的利益を取り下げるとの発言をした。
 しかし日本政府は、中国の「核心的利益」の姿勢に本質的な変化はないと判断すべきであり、決して南シナ海などの領海等の警戒を怠るべきではない。現に中国は漁船保護を理由に監視活動を常態化する方針を表明しており、日本の領海進入の恐れが十分にあり得ることを考えると、万全の監視体制、警告活動を行うべきである。
 日本政府は中国の核心的利益の取り下げ発言をどのように認識しているのか、見解を示されたい。
 併せて、中国漁船等による公務執行妨害など日本の法律違反が発生したときは、毅然として、日本の法律により具体的に執行すべきである。正に法と証拠に基づいて行うべきであると考えるが、見解を示されたい。
 さらに、中国漁船等が日本の領海内に不当にとどまる際、国内法が未整備のため退去させることができない。国際法にのみ一方的に頼るのではなく、日本の国益を守る視点から、欧米先進国が整備しているような国内法についても十分検討し、早急に整備を行う必要があると考えるが、見解を問う。

五 法務大臣の指揮権発動にかかる処分請訓規程の改訂について

 一般的に法務大臣の指揮権とは、個々の事件について検事総長を指揮することを指すものであるが、処分請訓規程は、本年十一月十八日の参議院予算委員会においても議論になった。
 昭和二十三年法務庁検務局秘第三六号訓令として出された法務省の訓令である処分請訓規程と、昭和二七年法務府検務局秘第一五七〇号訓令として出された破壊活動防止法違反事件請訓規程は、法務大臣が指揮権発動すべきものである。即ちこれらは、検事総長が法務大臣の指揮を受けるべき事件として「内乱罪、外患罪、国交に関する罪等」、「破壊活動防止法違反」など国家のアイデンティティに深く関わる犯罪があげられている。
 指揮権発動問題に関しては、最も権威があるとされる伊藤栄樹元検事総長の「逐条解説 検察庁法」(良書普及会)に明確に示されている。特に重要な事件について、捜査の着手または起訴、不起訴の処分について、法務大臣の指揮を受けるべき旨を、一般的に定めており、これにあたる場合には、具体的事件について、検事総長から法務大臣に対して請訓が行なわれ、これにこたえて法務大臣が指揮をすることとなっている。それが、前記の処分請訓規程と破壊活動防止法違反事件請訓規程に定める若干の事件である。
 両規程には国家のアイデンティティに深く関わる犯罪があげられているが、正に尖閣諸島沖の領海における漁業行為、公務執行妨害は、単なる日本の国内法違反ではなく、国家主権に関わる事件である。同事件は、沖縄の一地検の判断に任せるのではなく、政府自ら判断すべきことであった。処分請訓規程は昭和二十三年に出されているが、前記四で質問したように時代背景は大きく変化している。
 今後、今回のような国家のアイデンティティに深く関わる犯罪、事件についても処分請訓規程の対象にすべきではないか。このことも今回のような事件発生に対しての抑止効果の一つとして働き得るものと考えられる。見解を問う。

六 核廃絶へ向けての今後の取組について

 公明党は、本年八月六日、「核廃絶へ向けて――公明党の五つの提案」を発表した。それは、①オバマ米大統領の広島・長崎・沖縄への訪問、②核兵器の非保有を宣言、③核廃絶サミットを広島、長崎で開催、④核不使用宣言地域の設置、⑤核兵器禁止条約へ取組み、からなるものである。
 今回の日米首脳会談では、核セキュリティ・核軍縮・核不拡散分野における協力についてとり上げられ、「核リスク低減に関する日米協力」の文書が発出された。
 これらは、我が党が重要な課題と認識する核廃絶へ向けてのものと理解するが、今後、具体的にはどのような取組を進めようとしているのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。