質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三六号

横浜APECと日中・日露首脳会談に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月二十九日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   横浜APECと日中・日露首脳会談に関する質問主意書

 横浜APECでは、今後のアジア太平洋地域の経済統合の方向性について、中国が推進するASEANプラス三(日中韓)、日本が提案しているASEANプラス六(日中韓+インド、豪州、ニュージーランド)に加え、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)が大きく存在感を示した結果となった。
 このTPPについては、農業県としての群馬県においても大きな関心を呼んでおり、農家にとって極めて大きな悪影響を受けることが想定される協定である。
 我が国の食糧自給率は先進国中最も低いこと、また、我が国にとって、気候変動に伴う海外の農耕地の災害等に起因する輸入難が生じかねない時代であることからしても、TPP導入検討は唐突すぎる。我が国の農業を守るとの視点に立つことこそが、国民生活を守ることに繋がるとの認識を持つことが重要である。
 そこで、以下質問する。

一 APECとTPPの今後の取組について

 菅総理大臣は、APECにおいて日本のTPPの協議開始を正式に表明し、APEC閉幕後のTPP参加交渉九か国の首脳会合にオブザーバーとして出席するなど、TPP参加に向けた積極姿勢を示した。
 こうした総理大臣の一連の姿勢を見る限り、今後のアジア太平洋地域の経済統合については、米国主導のTPPに大きく軸足を移したとの印象を強く受けるが、他方でTPPについて、APECでは、タイ、中国からはTPPを牽制する発言も出ている。今後の我が国の方針、そして関係各国との協議をどのように進めていくのか、見解を示されたい。

二 TPP交渉参加と国内対策の見通しについて

 TPPについて、米国は、その強い主導により来年のハワイでの交渉妥結を目指していると言われている。日本の交渉参加について、仙谷官房長官は記者会見で来年六月にも判断するとの見解を示しているが、そのためには農業問題など国内調整をわずか半年でまとめ上げなければならない。来年六月には、農業構造改革に関する基本方針の策定を予定しているが、既に農水省の試算によれば、TPP参加によりGDPで年間七・九兆円程度の影響が出るとのことであり、国内調整も予断を許さない。
 今回の政府のTPPの協議開始決定は、文字どおり見切り発車の場当たり的印象を否めず、国民間の議論が無視された形となっている。まずは、政府より今後の交渉参加に向けた見通しについて国民に対し明確な説明と見解を示されたい。
 また、報道では、農業支援に関し、与党民主党は来年度予算に盛り込む方向で動いているとのことであるが、わずか半年で決断が迫られる状況で、予算措置の裏付けのある国内対策をTPP交渉参加の前にとり得るのか、その見通しについても明確に示されたい。

三 日中首脳会談について

 尖閣諸島をめぐる日中間の対立の中、ようやく漕ぎ着けた日中首脳会談ではあったが、その会談時間はわずか約二十三分間であり、加えて中国側の発表では公式な首脳会談ではなく、正式会談に準ずるものとの位置付けに過ぎず、日中の関係修復の困難さを見せつける結果となった。
 同会談では、長期的に安定した日中戦略的互恵関係の発展が、両国国民の利益に合致するとともに、地域・世界の平和と発展にとっても重要であるとの認識で一致した。しかし、今後、両国の関係修復に向けては、当面の懸案課題であるレアアース(希土類)の輸出停滞問題、そして条約交渉が一方的に延期となった東シナ海ガス田の共同開発問題が解決されなければならない。
 これらの点について、福山官房副長官は、会談で取り上げられたのかを含め内容の紹介について「控えたい」と発言したようである。他方、レアアース問題については、中国側からは、「近いうちに適切に対応する」との発言もあり、最近では改善しつつあるとの報道もあるようである。しかし資源安全保障の観点から、我が国はモンゴルとの連携についても積極的に進めていくとともに、この種の問題についても協議していくべきである。
 中国との間のレアアースの輸出停滞問題及びガス田の共同開発問題、モンゴルとの積極的連携について、今後、具体的にいかなる取組を進めていくのか、政府の見解を示されたい。

四 日露首脳会談について

 ロシアの最高指導者であるメドベージェフ大統領による国後島訪問は、前例のない暴挙であり、日本国民の心情に極めて深刻な影響を与えるものであり、厳重に抗議すべきものである。
 そこで、今般の日露首脳会談において、菅総理大臣はメドベージェフ大統領に対して、厳重な抗議を行ったのかを確認したい。
 また、これに対してロシア側からはどのような反応があったのかについても明らかにされたい。

五 情報収集体制について

 メドべージェフ大統領による国後島訪問直前の十月末、この件について在モスクワの日本大使館から外務省欧州局に伝えられたが、菅総理大臣らの耳には届かなかった。外務省から官邸に至る情報伝達ルートのどこかで途絶した可能性がある。当時、菅総理大臣とメドべージェフ大統領はともにハノイに滞在していた。情報が伝われば日露首脳の直接交渉も可能だっただけに、日本側は国後島訪問阻止の絶好機を逸したことになる、との報道がある。もし本当ならば、政権内の意思疎通と問題処理能力が問われる問題である。事実であるか確認したい。
 また、このような事態が今後も生じないような対応策を示されたい。

六 メドベージェフ大統領の国後島訪問の背景と認識について

 メドベージェフ大統領の国後島訪問については、政府は、いかなる理由で実施されたと考えているのか、明らかにされたい。報道等では、ロシア側の国内事情、特に大統領選挙に向けたアピールなどとの指摘もされているが、他方で、昨今の日本政府の対応にも原因があるのではないかとの指摘もある。
 特に、鳩山前政権での普天間問題による日米同盟の動揺や尖閣諸島に見られる政府の領土に対する毅然とした態度の欠如、加えて、政権交代後、北方領土問題を含め対露関係において、民主党政権が目立った外交の取組を怠ったことに起因するとの声も多い。
 政府は、こうした点を率直に反省するとともに、国後島訪問の背景をどのように分析しているのか、認識如何。

七 北方領土問題解決に向けた今後の取組について

 今般の日露首脳会談において、北方領土問題について、菅総理大臣はメドベージェフ大統領との間でいかなる議論を行ったのか、明らかにされたい。
 また、この問題について、日本政府は、従来より四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針を示しているが、領土問題の打開に向けては、この方針を堅持しつつも、今後は一層具体的な道筋を日本側から探っていく必要もある。
 同首脳会談では、経済協力を主とする日露協力についても議論されたと承知しているが、今後、経済協力と領土問題との関係の在り方を含め、北方領土問題解決に向けていかなる方針で望むのか、見解を示されたい。

  右質問する。