質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二二号

日本郵政グループの運営に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月二十五日

中西 健治   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   日本郵政グループの運営に関する再質問主意書

 先般提出した「日本郵政グループの運営に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一七六第五五号)を受領したが、質問に対して明確な答弁がなされていない事項があることから、以下、再度、質問の趣旨を明確にして質問するとともに、関連して追加質問を行う。

一 二〇〇七年十一月六日「郵政事業の関連法人の整理・見直しに関する委員会」(以下「委員会」という。)の第三次報告(最終報告)(以下「最終報告」という。)において、公益法人との取引については交渉方法などの是正、一般取引化を行うとして、取引関係の見直しを行うべきとされていたものが、二〇一〇年五月七日に日本郵政株式会社が「いわゆる「ファミリー企業」と報じられている法人への対応について」として発表した広報発表(以下「広報発表」という。)では、「その他公益法人」が「措置をしない法人」に分類されている理由を質したところ、「日本郵政から、公益法人は企業としての業務を行っていないことから、「ファミリー企業」に該当しないと考えているためであると聞いている」との答弁であった。

1 最終報告時と広報発表時において、当該公益法人の業務内容に違いはあるのか。政府が把握しているところを示されたい。
2 1で違いがある場合、その違いが方針変更の理由であるのか。そうである場合には方針変更が必要だと判断した根拠は何か。政府が把握しているところを示されたい。
3 日本郵政株式会社の方針変更にあたって、日本郵政株式会社は政府に対して事前に相談をしたのか。相談していた場合、政府はどのような理由で方針変更を了としたのか。相談がなかった場合、政府の諮問機関である委員会が決定した最終報告の方針を、日本郵政株式会社が政府に無断で変更したことになるが、これに対する政府の見解を示されたい。

二 最終報告では子会社化しないとしていた法人について、広報発表では五法人を子会社化するとした方針変更の理由を質したところ、「日本郵政から、民間企業としての日本郵政が、グループ会社とすることが業務上必要と判断した会社については子会社化するという方針の下、御指摘の五法人(中略)を子会社化することと決めたものと聞いている」との答弁であった。

1 最終報告時と広報発表時において、当該五法人の業務内容に違いはあるのか。政府が把握しているところを示されたい。
2 1で違いがある場合、その違いが方針変更の理由であるのか。そうである場合には方針変更が必要だと判断した根拠は何か。政府が把握しているところを示されたい。
3 日本郵政株式会社の方針変更にあたって、日本郵政株式会社は政府に対して事前に相談をしたのか。相談していた場合、政府はどのような理由で方針変更を了としたのか。相談がなかった場合、政府の諮問機関である委員会が決定した最終報告の方針を、日本郵政株式会社が政府に無断で変更したことになるが、これに対する政府の見解を示されたい。

三 日本郵政グループにおける非正規社員の正社員化について質したところ、その目的については、「日本郵政から、その経営判断により、非正規社員の雇用の安定及び労働条件の向上を図り、もって労働力の質及び生産性の向上に資するために実施していると聞いている」との答弁があり、その人件費については、「日本郵政から、正社員としての採用予定者数が未定であることから「正社員化による平成二十二年度人件費増加想定額」は不明であり、そのため、「日本郵政グループ各社の平成二十二年度予算措置」及び「今年度末各社決算見通しにおける当該人件費増加分」は計上していないと聞いている」との答弁であった。

1 採用予定者数も決めず、人件費増加分もわからずに、日本郵政株式会社経営陣はどうやって費用対効果を算出し、もって正社員化の目的を生産性向上に資するためとしたのか。政府が把握しているところを示されたい。
2 日本郵政株式会社の株主である政府は、この方針を了としているのか。
3 2を了とする場合、政府は、正社員化による人件費増加分が不明のまま採用試験を行っている日本郵政株式会社の経常収益に、正社員化が及ぼす影響をどのように分析した上で、了とする判断を行ったのか。

四 三に関連し、日本郵政グループはその後、本年十一月十日に正社員に登用する試験の最終合格者数の発表を行った。これを踏まえ、以下につき質問する。

1 正社員化による平成二十二年度人件費増加想定額について、政府が把握しているところを示されたい。
2 1の増加額について、コスト増とならないようにどのように吸収するのか。政府が把握しているところを示されたい。
3 2に対する答弁と、本年五月二十八日の衆議院総務委員会における亀井郵政改革担当大臣(当時)の「郵政の事業の中でその費用を消化していくのは当たり前であります。それができなかったら、経営をやる資格はありません」という答弁とは、整合性があるのか。

五 政府が提出した「郵政改革法案」(以下「政府提出法案」という。)について、日本郵政株式会社が郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の業務並びに権利及び義務を合併により継承する理由、目的、その理由、目的が現在の形態のままで達成できない理由、その達成できない理由のうち法律上の定めによる制約から現状では実施できない事項について明らかにするよう質したが、「郵政民営化法(平成十七年法律第九十七号)第一条に規定する郵政民営化により、同法第五条第二項の規定に基づき、郵政事業の実施主体が日本郵政、郵便事業株式会社、郵便局株式会社等に分割され各社の業務が法律に規定されたこと等の結果、郵政事業の経営基盤が脆弱となり、郵政事業の役務を郵便局で一体的に利用することが困難となっている事態に対処するため、郵便局において郵便業務と郵便窓口業務を一体的に行えるようにするほか、合併後の日本郵政が銀行窓口業務と保険窓口業務を行うものとすることにより、いわゆる金融業務を含めた郵政事業に係る基本的な役務が郵便局で一体的に利用できるようにすることを目的とするものである」との答弁であった。

1 金融業務を除いた三事業について、各社の業務が法律に規定されたこと等の結果、郵政事業の経営基盤が脆弱となる理由を明らかにされたい。
2 各社の業務が法律に規定されていても、各々の会社が受委託契約を締結すれば、郵政事業の役務を郵便局で一体的に利用することが可能であるが、法的な制約のために一体的な利用が困難となっている具体的な事例を明らかにされたい。
3 金融会社によって郵政全体を運営する、つまり金融会社からの利益によって郵便事業の赤字を埋めるという考えはあるのか否かについて、政府の見解を明らかにされたい。
4 ゆうちょ銀行における現在の流動性リスク、金利リスクについて、政府の見解を明らかにされたい。
5 ユニバーサルサービスを担う関連銀行として、簡易な貯蓄、送金、決済の役割を果たすとされているゆうちょ銀行が、なぜ、流動性リスク、金利リスクを抱えた運用を行う必要があるのかにつき、政府の見解を明らかにされたい。
6 政府提出法案では、関連銀行、関連保険会社の政府保有株式の売却時期が明示されていないことから、場合によっては政府保有株式の売却を行わないこともあると解せる。政府提出法案に売却開始時期あるいは売却完了時期について明示されていない理由を明らかにされたい。

六 郵貯の預け入れ限度額、かんぽの加入限度額の引き上げについて、政府提出法案が成立・施行する前の段階において、現行の郵政民営化法第百七条の規定に基づき、政令を変更し、当該限度額の引き上げを行うことは可能であるのか。政府の見解を明らかにされたい。
 仮に可能である場合、本年三月二十四日の郵政改革担当大臣及び総務大臣の談話「郵政改革に関連する諸事項等について」との整合性につき政府の見解を明らかにされたい。

七 菅総理大臣は本年十一月十九日の参議院予算委員会において、「米国が日本のTPP、まだ参加するしないというところを言っているわけじゃありませんが、まだそういう今申し上げた協議の段階でありますが、そういった条件としていわゆる郵政民営化を求めているという事実は私は聞いておりません。」と発言しているが、本年十一月十六日付け朝日新聞では、「米通商代表部(USTR)のカーク代表は十四日の前原誠司外相との会談で、外資系保険会社の競争条件が不利になる郵政民営化見直しを牽制するとともに、「米国産牛肉の輸入制限を再検討し、国際基準に沿うように取り扱ってほしい」と正式に要求した。」との記事が掲載されている。本年十一月十四日のカーク代表と前原外務大臣との会談において、郵政民営化見直しに関する要求はあったのか。事実関係について明らかにされたい。

八 ゆうちょ銀行を監督する側である金融庁を担当する内閣府特命担当大臣(金融担当)と、監督を受ける側のゆうちょ銀行の事業策定を行う郵政改革担当大臣が、兼任により同一人物であるということは、利益相反の可能性があると思われるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。