第176回国会(臨時会)
質問第一二一号 労災認定状況及び労災認定に係る判断指針に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十二年十一月二十五日 浜田 和幸
参議院議長 西岡 武夫 殿 労災認定状況及び労災認定に係る判断指針に関する質問主意書 国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、平成二十一年に自殺した人が自殺しなかった場合の生涯収入、同年にうつ病に罹患した人に支払われた生活保護費、医療費等を推計すると計約二兆七千億円に上ると推計されており、自殺及びうつ病の社会的影響が大きいことが明らかになっている。また、平成二十一年度には、業務上の理由により精神障害に罹患したとして労災申請がなされた件数が初めて千件を超え、千百三十六件となった。 同年度における精神障害を理由とした労災認定は、決定件数八百五十二件のうち二百三十四件となっており、その認定率は二十七・五パーセントとなっている。他方、労災不認定に対する不服を理由とした行政訴訟において、国が敗訴する事案も報道されている。このことは、労災認定制度が十分機能していないことを示唆するものである。 そこで以下のとおり質問する。 一 精神障害事案において、平成十五年度から平成二十一年度までの間に、労働基準監督署段階で労災不認定となった事案のうち、審査請求段階で労災認定された件数及び労働基準監督署段階で労災不認定となった事案に占める当該認定件数の割合並びに再審査請求段階で労災認定された件数及び労働基準監督署段階及び審査請求段階で労災不認定となった事案に占める当該認定件数の割合について、年度別に明らかにされたい。 二 精神障害事案において、平成十五年度から平成二十一年度までの間に、労災不認定を理由に行政訴訟が提起された事案の件数、行政訴訟が提起された事案が行政段階(審査請求段階・再審査請求段階を含む)で労災不認定となった事案に占める割合について、年度別に明らかにされたい。 三 精神障害事案において、平成十五年度から平成二十一年度までの間に、労災不認定を理由に行政訴訟が提起された事案のうち、国が敗訴した事案の件数及び敗訴率について、年度別に明らかにされたい。 四 精神障害事案において、国が行政訴訟において敗訴した事案について、行政段階、特に労働基準監督署段階で労災認定できなかった理由としてどのようなものが挙げられるか、明らかにされたい。 五 現在、精神障害事案の労災認定について、行政段階では「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平成十一年九月十四日付け基発第五四四号。以下「判断指針」という。)に基づいて判断していると解される。判断指針で心理的負荷強度が「Ⅱ」とされる出来事が複数あった場合には、総合的に「Ⅲ」と判断することがあるのか、明らかにされたい。 六 脳・心臓疾患においては、おおむね一か月の時間外労働時間が八十時間を超えた場合には、労災認定がされる傾向が強いと判断されているが、精神障害事案では、一か月の時間外労働時間が八十時間を超えた場合にも労災不認定となる事案が散見される。精神障害事案の場合において、労災認定の目安となる時間外労働時間数の基準は存在するのか、存在の有無及び有無の理由について明らかにされたい。 七 判断指針が不十分なために、国が行政訴訟において敗訴する事案、すなわち、行政段階で救済できなかった事案が出てきていると考えられるが、今後、判断指針を改定する予定があるのか、明らかにされたい。 八 平成十五年度から平成二十一年度における労災保険の収支状況について、年度別に明らかにされたい。 右質問する。 |