質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一三号

住宅政策における金融支援のあり方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月十八日

秋野 公造   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   住宅政策における金融支援のあり方に関する質問主意書

 現在の経済情勢からの脱却を図る上で、内需拡大による景気回復に向けた取組を行うことが不可欠だと認識している。そのためには、住生活基本法の理念である「真に豊かな住生活の実現」を目指しつつ、関連産業が多岐にわたり、家具などの耐久消費財への消費波及効果も見込めるなど投資効果の高い住宅投資を促進することが重要である。また、一〇〇〇兆円の住宅・土地等実物資産の有効利用を促進することも重要であり、そのためには、長期優良住宅の建設や、消費者が安心して適切なリフォームを行える市場環境の整備が必要である。さらに、急増する高齢者への対応として、医療・介護・福祉サービスと一体となった住宅の供給により、二四時間三六五日安心して暮らせる環境の整備を図っていくことも重要である。これらに対応するために、住宅政策における金融支援の拡充が求められている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 住宅金融支援機構の事業の必要性について

 民主党政権では昨年から事業仕分けを行っているが、国の無駄をなくすことは当然重要なことである。しかし、事業仕分けで廃止と判定された事業の中には、十分な議論がなされておらず、現下の経済状況や社会状況を考えれば、世の中への影響が極めて大きいものがある。国民の住生活やまちづくりにかかわる住宅金融支援機構の「まちづくり融資」、「賃貸住宅融資」、「住宅融資保険事業」の廃止がまさにその例である。現下の経済状況の回復の必要性、国民の住生活の向上の必要性を鑑みるに、これらの事業は、どうしても今廃止しなければならない事業には当たらないと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 住宅金融支援機構の「まちづくり融資」について

 住宅金融支援機構の「まちづくり融資」は、地権者の方々が共同で行う市街地の再開発事業やマンションの建替えを対象とした融資である。また、リーマンショック後の住宅不況に対する経済対策として、分譲マンション等の建設についても、その対象となっている。同融資は、住宅建設を支える資金の確保に大きな役割を果たしてきていることに加え、その利用者の九七%が中小の住宅事業者であることから、民間金融機関の不動産への融資姿勢がいまだ極めて厳しい中、セーフティネットとしても機能している。仮に同融資が廃止されれば、市街地再開発事業やマンション建替えの約三割が事業不可能となる可能性があると聞いている。また、同融資の廃止により、中小分譲住宅事業者のマンション建設事業が困難となることから、当該事業者の多くが倒産など企業経営上の悪影響を受け、地域経済に与える影響も大きいと見込まれる。よって、同融資は廃止すべきでないと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 住宅金融支援機構の「賃貸住宅融資」について

 住宅金融支援機構の「賃貸住宅融資」は、市場では供給されにくい高齢者向けと子育て世帯向けの賃貸住宅の建設資金融資である。民間金融機関ではほとんど行われていない長期固定金利の融資により、良質な賃貸住宅の建設促進に寄与している。特に、地方部や資産を潤沢に保有していない者などについては、民間金融機関の融資姿勢は消極的であり、最近の住宅着工減の中、賃貸住宅のうち「賃貸住宅融資」を利用した割合が一二%と拡大している。今や地方部では同融資がなくてはならないものになっており、賃貸住宅建設の下支えの役割を果たしている。仮に同融資が廃止されれば、賃貸住宅市場が低迷する中、良質な賃貸住宅の供給が困難になり、特に厳しい状況の地方部の経済に大きな打撃になると見込まれる。借家対策はそもそも持家対策に比べて不足しているところであり、また、高齢者対策と子育て対策は今後のわが国の政策の柱となるべきものであることから、これらの対策の要となる「賃貸住宅融資」はさらに拡充すべき政策である。さらに、現政権が本年六月一八日に閣議決定した「新成長戦略」においても「急増する高齢者向けの生活支援サービス、医療・福祉サービスと一体となった住宅の供給を拡大する」と明記されており、同戦略に沿った住宅政策を促進させることが必要であるところ、「賃貸住宅融資」を廃止すれば、同戦略と矛盾し、その実現を阻害する要因となると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 住宅金融支援機構の「住宅融資保険事業」について

 住宅金融支援機構の「住宅融資保険事業」は、民間金融機関の住宅ローンについて、同機構が保険を引き受けることにより、民間住宅ローンを引き出すとともに、「リバースモーゲージ」(高齢者が住宅を担保にして死亡時に一括返済することとして、生存中は利息以下の少ない返済を可能とする制度。民間保証では保証が難しいとされる)や「フラット三五のつなぎ融資」、「フラット三五」との併せ融資が実施されているものである。現在、経済対策として保険料を引き下げる措置を実施中であり、同保険の活用件数が伸びている。また、同保険の付いた「フラット三五のつなぎ融資」は「フラット三五」で新築の持家を建設する方の二割が利用している。仮に同事業が廃止されれば、民間融資への影響が出るだけでなく、つなぎ融資などが行われなくなることにより「フラット三五」自体の供給も阻害されることになる。
 現政権は、前記「新成長戦略」の中で、住宅投資の活性化、住宅の耐震化の促進、高齢者向けの賃貸住宅の供給拡大、リバースモーゲージの活用促進などを掲げている。また、本年一月二十九日に閣議決定した「子ども・子育てビジョン」では、良質なファミリー向け賃貸住宅の供給促進をうたっている。これらの政策を推進するに当たっても、「住宅融資保険事業」を土台とする各融資制度は非常に重要なものと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 住宅金融支援機構の事業の継続について

 住宅金融支援機構の「賃貸住宅融資」はそもそも国費が使われておらず、同機構の他の事業でも経済対策を除くと国費の割合が小さく、事業廃止による国費返還もあまり期待できないと聞いている。
 よって、国民の暮らしの安全・安心、景気対策の観点から見て、是非ともこれらの事業を継続し、景気の回復と国民が安心できる住生活の向上に寄与させるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。