質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一二号

年金記録問題の現状に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月十八日

渡辺 猛之   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   年金記録問題の現状に関する質問主意書

 民主党は、二〇〇九年衆議院総選挙のマニフェスト(以下「衆院選マニフェスト」という。)において、年金記録問題への対応、新たな年金制度の創設を柱とする「年金制度の改革」を掲げ、平成二三年度中までに〇・二兆円をかけて年金記録問題への集中的対応をし、平成二四年度からの二年間で新たな法案作成を含む新制度設計を行うとしている。また、本年行われた第二二回参議院選挙の民主党マニフェスト(以下「参院選マニフェスト」という。)では、「「消えた年金」「消された年金」に二〇一一年度まで集中的に取り組むとともに、「納めた保険料」「受け取る年金額」がわかる「年金通帳」などの仕組みをつくります」、「年金保険料の流用はさせません」、「年金制度の一元化、月額七万円の最低保障年金を実現するためにも、税制の抜本改革を実現します」などと記載されている。しかるに、政府の対応を見ると、年金制度改革に対する取組は遅れ、迷走しているようにも見受けられる。
 年金受給者が高齢であることや昨今の厳しい財政事情に鑑みると、適正な年金制度の検討は待ったなしの状況である。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 平成二二年一〇月二一日の参議院厚生労働委員会における我が党の石井準一議員の質疑に対する政府答弁によれば、これまでに回復した年金記録件数は、政権交代前が一二五七万件、政権交代後が二四七万件であるという。つまり、平成一八年六月から平成二二年九月までの統合済みの年金記録件数は一五〇四万件であるが、民主党政権になってからの統合はその一六%の二四七万件にすぎず、この結果を見ると政権交代後の年金記録回復のペースは落ちている。民主党は衆院選マニフェストで、「「消えた年金」「消された年金」問題への対応を「国家プロジェクト」と位置づけ、二年間、集中的に取り組む」としていたが、果たしてこのペースで、「「国家プロジェクト」と位置づけ、二年間、集中的に取り組」んでいると言えるのか。政府としての見解を問う。

二 民主党の衆院選マニフェストは「「国家プロジェクト」と位置づけ、二年間、集中的に取り組む」としているが、民主党政権は、「統合済みの年金記録」を具体的に何万件に引き上げる目標で取り組んでいるのか。

三 年金記録の回復によって、無年金だった方が年金受給者になったケースは何件か。政権交代前と政権交代後に分けて示されたい。

四 年金記録問題の解決に当たっては、費用対効果が重要なポイントとなる。平成一八年度以降の各年度における「年金記録の統合一件に要した費用」を示されたい。

五 厚生年金の記録に、長期間にわたり標準報酬月額の収録誤りがある場合が報告されている。年金記録確認第三者委員会においては申立人が給与明細等を持っていた期間に限って記録の訂正を認める一方で、給与明細等の証拠がない期間については、申立人からすれば自分に責任がないのにもかかわらず当該期間分の記録の訂正が認められていないようである。しかし、申立人に残された給与明細を見れば、給与の変動は少なく、年を追うごとに給与が上昇していることが明らかだという事例もある。

1 こうした事例への画一的な対処は、「明らかに不合理ではなく、一応確からしいこと」を判断の基準とする「年金記録に係る申立てに対するあっせんに当たっての基本方針」に外れていると考える。給与明細等の証拠がなくても救済すべきと考えるが、政府の認識を問う。
2 こうした事例は今までに何件報告されているのか。また、給与明細等の証拠を持ち合わせていなくとも、当該期間分の年金額が増額されたケースは存在するのか。

六 民主党の参院選マニフェストにおいては、「「消えた年金」「消された年金」に二〇一一年度まで集中的に取り組むとともに、「納めた保険料」「受け取る年金額」がわかる「年金通帳」などの仕組みをつく」ることとされている。一方、事業仕分け第三弾において、ねんきん定期便事業は、できるだけ早期にオンラインの仕組み「ねんきんネット」に移行し、予算要求は三割圧縮することとされた。

1 この事業仕分けの論理では、ねんきんネットを構築すれば「年金通帳」も無駄と仕分けられることになり、参院選マニフェストと整合性が取れなくなることは明らかである。ねんきん定期便、ねんきんネット、年金通帳のそれぞれの意義と必要性について、政府の見解を問う。
2 事業仕分け第三弾の結果は、今後の年金制度改革にどれほどの拘束力を持つのか。すなわち、ねんきん定期便事業をいつまで存続させるのか。ねんきんネットへの移行を本格的に考えているのであれば、いつから、どの機関で議論を始め、いつまでに結論を出すのか。明確に示されたい。

  右質問する。