質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八七号

鹿児島県奄美地方集中豪雨被害の災害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月九日

秋野 公造   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   鹿児島県奄美地方集中豪雨被害の災害対策に関する質問主意書

 本年十月二十日以降、鹿児島県奄美地方に集中豪雨が起き、甚大な被害を及ぼした。奄美地方の皆様に心からお見舞いを申し上げる。私自身も公明党奄美地方集中豪雨対策本部の一員として、十月二十二日早朝から同二十四日及び同三十一日から十一月一日まで、現地調査を行ったところであるが、被害は想像を超える規模である。三人の方が尊い命を失い、一部の住民は未だに住むべき家を失ったままであるが、道路だけでなく通信も寸断されたことが、未だに被害の全容把握を困難なものとしており、復興の大きな妨げとなっている。
 そこで以下質問する。

一 国の災害復旧支援に取り組む姿勢について

 十月二十日以降、奄美地方に想像を絶する記録的な集中豪雨が起き、高齢者が多い地域を襲い、道路の陥没、堤防の決壊、土砂災害が発生するなど、公共土木施設や農地、社会福祉施設などに甚大な被害を及ぼしている。国は当該被害状況とこれらに対応しているのは小さな自治体であるという事情に留意すべきであり、早期復興のために「激甚災害」の指定により全力で支援を行うべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 迅速な被害掌握への対応について

 被害の全容の掌握が未だに遅れている原因をどのように考えているのか、政府の見解を示されたい。国としても被害の早期掌握に対する支援を全力で行うべきである。また、大和村においては、村職員が徒歩で山中に入って山崩れによる被害の掌握を行っている。災害復興のための査定を受ける準備さえ困難な市町村に対しては、国土総合研究機構・土木研究所の砂防の専門家や都道府県・各地方整備局の技術者等の人的支援を強化して、住民が一日も早く安心して暮らせる災害復興への条件整備の前提となる被害掌握を迅速にすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 奄美の防災通信体制について

 道路が寸断されただけでなく、通信も寸断されたことが被害の掌握を遅らせているが、これまでの奄美の防災通信体制をどのように考えているか、政府の見解を示されたい。また、十月二十日及び二十一日それぞれの段階で防災無線が使用できなかった集落はどこであり、それはどのような理由によるものか、政府の把握しているところを明らかにされたい。
 また、瀬戸内町嘉徳集落は道路が寸断され、二日間孤立をしたが、ここはそもそも携帯電話の通信圏外の地域であり、今回停電を伴ったことから防災無線が機能しなかった。このようなところについては、奄美振興のために、また、防災対策の観点からも、携帯電話の通信可能な地域とするための取組が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

四 被災住民への心のケアと生活支援について

 被災住民のうち、医療や介護等、人による介助を必要とする弱者を掌握し、安全な場所に移すことについては、「結」という地域住民間の強い絆を背景として一段落したものと思われるが、被害の回復には時間を要することが予想され、今後とも被災住民、特に高齢者・障害者に対する心身のケア、生活の支援を全力で行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 被災集落の衛生対策について

 床上浸水等を起こした家屋等においては、後片付けも大きな問題となっている。例えば高齢者が一人で畳を上げることは困難である。今後、被災集落の衛生対策を行うためにもボランティアの力だけでなく、鹿児島県及び奄美市と連携の上、自衛隊員の協力も得て、後片付けの早期執行の支援を行う必要があると考えるが、政府の見解如何。また、市町村における災害ごみへの対応について、国としてできることは何か、政府の見解を示されたい。

六 被災者生活再建支援制度の適用について

 自然被害による被災者がその被害から回復するためには、日常生活の再建とともに、その生活基盤となる「住まい」の再建を欠かすことはできない。また、被災地における住宅再建は、単に個人レベルにおける再建だけでなく、地域社会の迅速な復興のためにも極めて重要である。そのための被災者生活再建支援金支給の前提となる被害認定について、被害の実態に即して適切な運用を図り、被災者生活再建支援制度の早期執行を行うべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 二次災害を起こしうる箇所について

 奄美市笠利町佐仁集落においては、山崩れにより川が堰き止められ、その水が集落に流れ込み水害を起こしている。一方、龍郷町円集落等においては、山崩れにより川に土砂が流れ込み堰き止められることによって、水害を起こしうる危険性がある箇所が見受けられた。このような大規模な二次災害を起こしうる可能性がある地域として国が鹿児島県防災本部に情報提供した場所はどこになるか。また、国が鹿児島県防災本部より情報提供を受けた場所はどこになるか、明らかにされたい。
 土砂や水が集落を襲った一つの理由は、想定を超えた雨量の問題だけでなく不十分な、または老朽化した治山治水ストックである。国はこれまで奄美において深層崩壊の調査を行っているか。河川の堤防が老朽化したことにより堤防下部に穴が開き、土砂が流出することにより、堤防の破壊または道路の陥没が起きている。堤防の決壊により二次災害が起こりうる河川と地域として国が鹿児島県防災本部に情報提供した場所はどこか。また、国が鹿児島県防災本部より情報提供を受けたところはどこか、明らかにされたい。

八 浸水被害対策について

 奄美市笠利町手花部集落等においては、堤防・道路等が集落より高い位置にあったことから、相対的に低地となった集落に河川の氾濫を伴わない浸水被害が起きたところである。これはいわゆるゲリラ豪雨の際に、全国的に発生する性格の問題と考えられる。都道府県や市町村は、堤防・道路等の構造物の位置により集落が相対的に低地になる浸水被害のおそれのある箇所を点検・調査することを地域防災計画で定めるなど、日頃から浸水被害に備えた防災対策を行うことが必要であると思われるが、政府の見解を示されたい。

九 自治体の財政需要に対する支援について

 今回の災害応急対策、災害復旧対策等にかかる経費のうち、国の予算執行前にかかる経費は市町村にとって大きな負担となるため、地元自治体が要した財政需要について国が必要な支援をすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

十 伝統産業の復興対策について

 大島紬等奄美の伝統産業も甚大な被害を受けている。奄美大島の伝統産業である大島紬には様々な工程の中に泥染めという工程がある。これは、泥田において糸を染める工程であり、泥田の鉄分だけではなく、泥田に存在する微生物により染め上がるものである。この泥田に土砂が流れ込むことにより大きな被害を受けた。土砂を取り除くことに加え、微生物を元の状態に戻すことは、困難であり、時間がかかることが見込まれる。また、機織り機等の木工機械は一度浸水すると曲がってしまい、二度と使用ができない。大島紬は分業化され、幾重にも分かれた工程があるため、一度失われた伝統技術を再開させることは困難である。千三百年の歴史と文化に育まれてきた貴重な伝統技術を守り、自立的発展のために奄美特有の豊かな地域資源を一日も早く事業展開できるようにする動きに対しては、国は特別の支援を行うべきと考えるが、政府の見解如何。

十一 災害の再発防止対策について

 今回の災害を機会に、台風常襲地帯である奄美の厳しい自然条件下の治山治水及び交通体系・通信体制を抜本的に見直し、災害に強くかつ安心できる街に復興するために「奄美群島振興開発計画」の見直しも考慮しつつ、離島における想像を絶する記録的な集中豪雨による甚大な被害の再発防止を含めて、国も全力で支援を行うべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

十二 風評被害対策について

 奄美大島は豊かな自然と世界的にも貴重な動植物など他の地域にはない魅力を有しており、その豊富な観光資源により「人と自然が織りなす癒しの島」を目指している。今回の集中豪雨により、甚大な被害が発生するとともに、観光客のキャンセルが相次いだ。一日も早い災害復興を果たすために風評被害を出さないことが必要である。二〇〇一年十一月には、BSE対策と観光振興を目的に沖縄において大臣政務官会議が開催されている。奄美大島の安心・安全をアピールし、風評被害を出さないために、国が主催する会議などを奄美大島で開催することが必要だと考えるが、政府の取組を明らかにされたい。

  右質問する。