質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六八号

電磁波による人体への影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月一日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   電磁波による人体への影響に関する質問主意書

 携帯電話の普及や新しい無線システムの実用化など、電波利用の急速な拡大に伴い、人々が日常的に電磁波にふれる機会が増加している。携帯電話の基地局等から発射される電磁波については、「電波防護指針」や「電波防護のための基準への適合確認の手引き」等で、その安全性が示されているところであるが、電波利用の拡大に伴い、一度過敏になると一般の人が問題を感じないほんのわずかな電磁波でも頭痛など多様な症状に苦しむ「電磁波過敏症」の症例を訴える方の増加も懸念される。近年、多くの市民や市民団体から電磁波による健康被害への不安が訴えられており、全国各地で携帯電話の基地局建設をめぐるトラブルや訴訟も発生している。
 平成十七年三月二十七日付けの毎日新聞の記事によると、千葉県の市民団体「電磁波問題市民研究会」が調査した結果、携帯電話の基地局の急増に伴い、健康被害を訴えたり、健康への影響を心配する住民と携帯電話会社間のトラブルが全国で少なくとも二百件以上起きているという。また、鎌倉市では、電磁波への不安や景観をめぐり事業者と住民の間で起きている紛争の防止を目的として、携帯電話などの中継基地局を設ける際、事業者が住民に事前に説明することなどを定めた条例案が、平成二十二年三月二十五日の市議会で可決された。
 総務省においては、平成二十年六月から「生体電磁環境に関する検討会」を開催し、電波による人体への影響に関する国内外の研究成果の評価・分析、我が国が取り組むべき研究課題等を検証しており、平成二十二年頃を目途に報告書を取りまとめるとしている。
 今後も更なる電波利用の急増が見込まれる中、政府は、早急に電磁波による人体への影響についての対策を強化することが求められている。
 そこで以下のとおり質問する。

一 現在、わが国の携帯電話、PHS及び公衆無線LAN等の通信事業者は何社あるか、それらの企業名とともに明らかにされたい。また、それら企業の基地局は、全国にそれぞれ何基設置され、今後最終的に何基の増加を見込んでいるのか、明らかにされたい。

二 携帯電話の基地局等の周辺における電磁波の影響による健康被害の訴えがあった地域、人数について、政府が把握しているところを明らかにされたい。また、国民からの健康被害の訴えに関する政府の窓口はどこかについても明らかにされたい。さらに、電磁波過敏症についての疫学調査の実施状況及びその結果について、政府が把握しているところを明らかにされたい。仮に、健康被害の発生状況を把握しておらず、また、疫学調査を実施していないのであれば、政府として早急に調査を実施すべきと考えるが、政府の見解如何。

三 我が国では電波の安全性についての基準として「電波防護指針」を策定しているが、規制を強化している欧州に比べ、基準が緩やかであるとの指摘もある。そこで、「電波防護指針」と諸外国における電波の安全性に関する基準を比較した上で、「電波防護指針」に対する政府の評価を明らかにされたい。また、現在、総務省の「生体電磁環境に関する検討会」において「電波防護指針」の検証が行われているが、今後の「電波防護指針」の見直しの方向性と改訂の時期を明らかにされたい。

四 現在、総務省は、携帯電話事業者に対して携帯電話の基地局が発射する電波の安全性について住民に説明を行うことを指導しているが、実際には住民の電磁波への不安が解消されず、携帯電話の基地局建設をめぐる事業者と住民間のトラブルや訴訟が起こっている。そこで、政府が把握しているトラブルや訴訟について、その件数及び概要を明らかにされたい。また、総務省は、携帯電話事業者に対する指導を強化すべきと思うが、政府の考えを明らかにされたい。さらに、携帯電話の基地局建設に当たっては、住民への説明及び住民との合意を義務付けるべきと考えるが、政府の見解如何。

五 平成十二年に発表されたWHOのファクトシートでは、「幼稚園、学校、遊び場の近くに基地局を選ぶ際には特別な配慮が必要」と指摘されている。また、平成二十一年四月、欧州議会でもすでに「電磁界の潜在する危険性を避けること」という以下のプレスリリースを出している。「ヨーロッパ議会によって採択された報告書によると、アンテナや携帯電話塔や他の電磁界を放射する装置は、学校や健康関連施設からある程度の特別な距離だけ離して設置されるべきである。委員会は、良くわからないと感じている市民に、電磁界の被ばく影響について利用できるような情報を多く提供しようとしている。」(翻訳 加藤やすこ)そこで、携帯電話の基地局建設に当たって、立地条件等についての基準を法令で定めることについての政府の見解如何。

六 スウェーデンでは医学的審査で機能障がいがあると確認され、支援の必要性が認められた場合、他の障がい者と同様に、法律で認められた範囲内で必要なケアが受けられる。平成二十一年四月には、欧州議会も、「加盟国に対して次の要求をする。スウェーデンの例を手本として、電磁界に過敏になって苦しんで働けないでいる人たちを認知し、彼らに同じような機会を与えると同様に適切な防護を認めること」とする内容の報告書を採択している。電磁波過敏症について、わが国では、社会的な理解が広まっておらず、専門医も少ない状況にある。そこで、わが国も、すでにいる発症者の人権保護のため、電磁波過敏症に対する知識の啓発、相談窓口の設置、健康保険の適用等、発症者に対する支援を行うべきと考えるが、電磁波過敏症に対する取組の現状と今後の取組強化について政府の見解如何。

  右質問する。