質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五八号

朝鮮王朝儀軌についての内閣総理大臣談話に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月二十二日

佐藤 正久   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   朝鮮王朝儀軌についての内閣総理大臣談話に関する質問主意書

 韓国は、丙寅洋擾の際にフランスに流出した儀軌と日本統治時代に日本本土に流出した儀軌に対し、それぞれの政府に返還要求を行っている。
 わが国の公式見解は、昭和四〇年の韓国との請求権・経済協力協定により、両国及び両国民間の財産、請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されており、また、同年の韓国との文化財・文化協定の附属書で、同文書に掲げる文化財を両国政府間で合意する手続に従って協定の発効六ヶ月以内に韓国政府に対して引き渡すと定めたものの、朝鮮王朝儀軌については、この引渡しを行うべき文化財には含まれておらず、さらに、その他の条約によっても引き渡すという法的義務は負っていないため、韓国側に引き渡す法的義務を何ら負っていないとしている。
 平成二二年八月一〇日、わが国政府は、「朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思います」との内閣総理大臣談話を閣議決定した。
 右の点を踏まえ、以下質問する。

一 儀軌の原本はフランス政府が所有していたが、韓国政府からの返還要求に応じて現在は韓国にあるとの情報もある。また、フランス政府は韓国に「返還」ではなく「貸与」したのであって、所有権はフランス政府にあるとの情報もあるように聞いている。
 儀軌の原本は現在どこにあるのか。日本にあるものは原本ではなく複製なのか。また、フランス政府がとった措置について、わが国政府が承知している情報を説明されたい。

二 わが国は、儀軌について韓国に引き渡す法的義務は負っていないので、「返還」という表現はそもそも馴染まないと考える。内閣総理大臣談話では「お渡ししたい」と表現されているが、これは、韓国政府に当該物品を貸与することか、それとも所有権も譲渡することか、政府の見解を問う。

三 内閣総理大臣談話に「儀軌等」とあるが、儀軌以外にどのような物品を想定しているのか。韓国政府から要求されていない物品まで含めた意図はなにか、説明されたい。

四 儀軌の返還については、韓国政府だけでなく北朝鮮政府も要求してきている。
 平成二二年一〇月一八日、菅内閣総理大臣は参議院決算委員会において又市征治議員から、一九一〇年の韓国併合は、「朝鮮半島全体ですから北朝鮮に対しても同様の認識」かと問われ、「当時の韓国という意味は、まさに当時はまだ一つの国でありましたので、そういう意味を含めてだと御理解をいただきたいと思います」と答弁している。
 儀軌の返還要求について、北朝鮮への対応はどうするのか。北朝鮮との外交交渉への影響について見解を問うとともに、政府の今後の対応方針を示されたい。

  右質問する。