質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三四号

ヒートアイランド現象の解明とヒートアイランド対策大綱に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月十五日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   ヒートアイランド現象の解明とヒートアイランド対策大綱に関する質問主意書

 二〇一〇年の北半球の夏は、極めて異常高温な夏であった。また同時に、南半球の冬は大寒波となり多数の死亡者が発生した。
 ロシアでは、森林火災の延焼面積が、北海道の二倍の面積に相当し、モスクワでは濃いスモッグ(ヘイズ)の影響で市民の健康が危ぶまれた。ロシアに続き、アマゾン、アフリカ、アジアでも異常気象により森林火災が連続して発生するなど、地球規模で極めて深刻な事態にあることを指摘する。とりわけ深刻なことは、泥炭層、炭化成分の多い土壌での燃焼で、その結果、膨大な二酸化炭素が発生した。
 中国大陸においては、三峡ダムが世紀の大放流をしなければならないほどの豪雨の連続で大水害が発生し、同様の大洪水は、バングラデシュにおいても発生した。
 そして、日本列島においても記録的な猛暑であった。各地で猛暑日の記録更新が相次ぎ、日本の最高気温の記録に頻繁に名前がでてくる館林市のある群馬県では、県下の高崎市、太田市、安中市、沼田市などの一二市を始め、その他町村においても厳しい暑さの連続であった。
 館林市は、四〇日を超える猛暑日になったと言われ、日本列島の猛暑による熱中症の大量発生は、各種統計を確認すると、大災害とも言うべきものである。
 これら猛暑都市を安全・安心な都市にする上で、対処療法的な対応では市民の健康、生命を守ることは困難な状況にある。従って、(1)熱中症への対応はもとより、(2)ヒートアイランド現象への機敏、かつ的確な対応、また、より根本的には(3)気候変動への対応が重要である。これらの三者の一体的、計画的なパッケージ政策が必要である。
 以上の基本的視点を、改めて重視・認識すべきことと同時に、関係府省庁及び関係府省庁連絡検討会が一層強力な暑熱対策を推進することを強く求めるものである。
 以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
 日本学術会議の研究等によれば、ヒートアイランド現象について、次のことが言われている。問題を明確にするために引用する。
 都市のヒートアイランド現象に関しては、一八五〇年代ごろからヨーロッパで観測されていたが、一九六〇年代から近代建築の冷房や車の増大がシカゴやニューヨークで顕著になり、排熱を河川に捨てるなどの対策がとられてきた。しかし、欧米先進諸都市に比べ、東京首都圏や近畿圏の都市規模の人工排熱は比較にならない程に大きい。二〇世紀の一〇〇年間で東京首都圏の市街地面積と人工排熱はそれぞれ一〇〇倍になった。これがヒートアイランドの直接的原因であるが、その対策に最も有効なグリーンベルトが一九三〇年当時、二万ヘクタールが計画されていたが、その形骸すら残っていない。木造密集危険市街地が二万ヘクタール以上、さらに都市内河川の八〇%が埋め立てられてしまった。一二万ヘクタールあった東京湾の二万ヘクタールが工業用地として埋め立てられ、火力発電所や石油・鉄鋼コンビナートが立地した。このような状況から、必然的に生じたヒートアイランド現象の解明は社会的にも急務である。
 二〇世紀、日本の平均気温が約一℃上昇したのに対し、日本の大都市の気温は二~三℃も上昇していることが報告されており、今夏の事態を予想し得たところである。平成一四年三月に閣議決定された「規制改革推進三か年計画(改定)」において、ヒートアイランドについて関係各省が参加した対策の推進体制の構築や、ヒートアイランド対策大綱の策定が盛り込まれ、平成一六年三月三〇日、政府はヒートアイランド対策関係府省連絡会議において、「ヒートアイランド対策大綱」を決定した。同大綱では、クーラーなどによる排熱の増加、コンクリートなど乾いた素材での地面の被覆、温度調節機能を持つ緑地の喪失など複合的要因によってもたらされる都市部の気温上昇現象などを指摘している。
 そこで、以下質問する。

一 政府のヒートアイランド対策大綱などの実績等について

 ヒートアイランド対策大綱は、(1)人工排熱の低減、(2)地表面被覆の改善、(3)都市形態の改善、(4)ライフスタイルの改善の四つをその対策としている。さらに、それぞれの対策で実施すべき具体的施策や、その施策により達成すべき数値目標をまとめている。
 数値目標としては、平成一一年度には五%であった新築住宅の省エネルギー化率を二〇年度までに五割に引き上げること、平成一四年度に一人あたり一二平方メートルだった都市域における水と緑の公的空間確保量を一九年度までに一三平方メートルに増加させることなどが挙げられている。
 そこで、同大綱に挙げた各数値目標と目標達成状況を全て示されたい。また、四つの対策は、ヒートアイランド現象に如何なる効果を及ぼすことができたのか、全体的な結果について政府の見解を示されたい。さらに、今後の目標年、各数値目標などについて、数値的にはどのように考えているのか、政府の見解を示されたい。

二 広域的なヒートアイランド対策について

 ヒートアイランドは市や県をまたぎ解決すべき課題であることを考えたとき、地形学的、気象学的な視点からの広域的なヒートアイランドの調査・研究に取り組むべきであると思うが、政府の見解を明らかにされたい。

三 基礎的な熱環境の情報収集及びデータベース等の整備について

 昨今の猛暑は、ヒートアイランドの影響を無視できない。これを和らげるためには都市のクールスポットを整備することが重要である。そのため、緑被率、水面率や排熱・廃熱ポテンシャル等、また、自然エネルギー存在量(雨水・地下水などの水調査を含む)といった都市基礎データの整備が必要である。さらに、CASBEE-HI(建築物総合環境性能評価システムのヒートアイランド評価ツール)の普及、自治体の環境計画における都市環境気候図の策定、熱・流体解析などを支えるデータの整備も欠かせない。
 また、新成長戦略の「環境未来都市構想」に見合う「猛暑対策モデル都市事業(仮)」を実施することによって、前記のデータの収集、整備の機会をつくるべきである。また、環境未来都市構想の法制化の過程で、前記のデータの収集、整備を促進する条文を盛り込むことが必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
 さらに、消防庁、厚生労働省、警察庁等における熱中症統計の統一的整備や「熱中症ハザードマップ」の策定、熱中症指標(WBGT)による「定置型熱中症指標計」の設置による自動計測の推進(アメダス測定点の数倍以上の観測点の配置)を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。