質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

一括交付金に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月八日

横山 信一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   一括交付金に関する質問主意書

 政府は、地域のことは地域で決める「地域主権」を実現するため、国から地方への、いわゆる「ひも付き補助金」(以下「補助金」という。)を廃止し、来年度から段階的に一括交付金化することとしている。地方にとっては、地域の実態に即した事業の実現を望めるとして好意的に受け止められている側面があるのは確かである。しかしその一方、一括交付金の制度設計等が不透明であるため、真に地方の自由度を拡大するのか、国の財政再建の手段とされるのではないか等の強い懸念が持たれていることも事実である。
 そこで、地方の不安を解消するため、以下、質問する。

一 補助金を一括交付金化するに当たっては、地方の自由度を拡大する観点から、できる限り大きいブロックに括るべきである。しかし、現行の補助金の中には、社会保障や義務教育といったナショナルミニマム等を維持するため国の財政負担が必要なものや、国家的な視点から必要なニーズに対して重点的・計画的に配分する必要があるものも存在しており、一括交付金化によって、国の財政責任の放棄や地方財政の困窮を招来することがあってはならない。一括交付金化の対象となる補助金の範囲をどのように設定するのか。

二 第五回地域主権戦略会議(平成二十二年五月二十四日)に提出された「一括交付金化の基本的な考え方(試案)」(以下「試案」という。)では、「各府省の枠を超えて」括るとされていたのが、地域主権戦略大綱(平成二十二年六月二十二日閣議決定。以下「大綱」という。)では、「各府省の枠にとらわれず」に変更されている。このように文言が書き換えられた経緯及び目的と、両者の差異を明らかにされたい。

三 大綱においては、試案には存在しなかった「PDCAサイクルを通じて制度の評価・改善を図る。その際、会計検査院の検査も活用する。」との文言が追加されている。

1 この文言を追加した経緯と目的を明らかにされたい。
2 「P」すなわちプランに国が関わることができるようになっており、従来の補助金のように、国の地方に対する事前関与を正当化するものとなっている。一括交付金化が地方の自由度を拡大する趣旨であるならば、国の事前関与を認めるのは背理であると考えるが、政府の見解はどうか。
3 会計検査院がその検査において、国が関与したプランを忠実に実施することを地方に求めることになれば、結果として、国の事前関与を助長するのではないか。

四 一括交付金の総額について、大綱においては「一括交付金化の対象となる補助金・交付金等の必要額により設定する」とされている。一方、菅総理大臣は、本年九月十七日、関係大臣に手交した文書において「一括交付金の創設の際には、一定限度の減額」を指示したとされている。

1 前記菅総理大臣の指示が事実であるのか明らかにされたい。また、「補助金・交付金等の必要額」が明らかでない段階で、なぜ一定限度を減額することが可能であるのか、その根拠を示されたい。
2 大綱には、「効率的・効果的な財源の活用を図る」という試案にはない文言が追加されている。一括交付金化された財源の総額を「効率的・効果的な財源の活用」という名目の下で、国から地方への支出を圧縮するということを一般的に是認するという趣旨であれば、容認できない。この文言が大綱に追加された経緯と目的を明らかにされたい。
3 片山総務大臣は一括交付金化によって「自治体の自由度が増し、創意工夫で施設などの事業費を圧縮できる」と述べたとされる。しかし、地方が創意工夫により「効率的・効果的な財源の活用」を図ることで財源が生じた場合には、当該財源は不要であると国に認識され、次年度の一括交付金総額から当該財源分が減額されるのではないか。地方の自由度拡大という趣旨にかんがみれば、地方の努力により生じる財源については、減額されることなく、地方が自由に使えるようにするのが筋であるが、どうか。

五 片山総務大臣は「社会保障費の圧縮は難しい」、「一括交付金化は削減のツールではない」との発言もしたとされる。地方が最も懸念しているのは、一括交付金化が、財源総額が大幅に削減された「三位一体の改革」の二の舞になることである。地方の不安をなくすためには、一括交付金化は国の財政再建とは無関係であり、国の一方的な財源捻出の手段とはしないことを政府の意思として明確にすべきではないか。

六 以上見たように、一括交付金化が地方財政に重大な影響を与えるにもかかわらず、十分な議論を経ず、また関係者の合意を得ないまま不透明な経緯で大綱の閣議決定に至っていることが、地方の警戒感を醸成している。地方から強い要望のある「国と地方との協議の場」の法制化はなされてはいないが、政府が真摯に地方の理解を得ようとするのであれば、実質的な「国と地方の協議」を早急に開催し、この場で徹底的に議論を積み重ねてしかるべきであると考えるが、どうか。

  右質問する。