第175回国会(臨時会)
答弁書第三五号 内閣参質一七五第三五号 平成二十二年八月二十日 内閣総理大臣 菅 直人
参議院議長 西岡 武夫 殿 参議院議員山谷えり子君提出子宮頸がんワクチン接種に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員山谷えり子君提出子宮頸がんワクチン接種に関する質問に対する答弁書 一について 平成二十年人口動態統計によると、同年の子宮頸がんによる死亡者数は、二千四百八十六人である。 二について お尋ねの罹患者数は、各都道府県からの最新の報告を基に推計すると、平成十七年において、上皮内がんを含む罹患者数が一万六千四百二十二人であり、上皮内がんを含まない罹患者数が八千四百七十四人である。 三について ヒトパピローマウイルス(以下「HPV」という。)の感染者数を把握しておらず、お尋ねの割合についてお答えすることは困難である。 四について お尋ねについては、性交渉開始時期の低年齢化等の影響があるものと考えている。 五について 平成二十一年十月十六日にHPV十六型及び十八型感染に起因する子宮頸がん(扁平上皮細胞がん及び腺がん)及びその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)二及び三)の予防について承認されたサーバリックスの長期的な効果に関しては、海外の十五歳から二十五歳までの七百七十六例を対象とした試験結果によると、平均追跡期間五・九年の時点では、その予防効果は最長六・四年間持続することが確認されているものの、その予防効果の持続期間については確立していない。 一方、サーバリックスの副反応については、注射部位の疼痛、発赤等のほか、全身性の症状として、疲労、筋痛、頭痛、胃腸症状(嘔吐、下痢等)、関節痛、発疹、発熱等があり、まれに、ショック、アナフィラキシー様症状等があるものと承知している。 また、我が国におけるサーバリックスの費用対効果については、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート(平成二十二年七月七日版)」(平成二十二年七月七日厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会資料)によると、サーバリックスによる免疫維持期間が明らかでないこと、すべての子宮頸がん患者に占めるサーバリックスが感染予防効果を有するHPV十六型及び十八型が検出される子宮頸がん患者の割合が五十パーセントから七十パーセントまでと幅があることから、現時点で正確な評価は難しいとされている。 お尋ねのサーバリックス接種後の経年的な影響の把握については、製造販売業者であるグラクソ・スミスクライン株式会社において、承認申請前に実施した国内の二十歳から二十五歳までの千四十例を対象とした試験に参加した被験者に対し、有効性及び安全性の長期追跡調査を製造販売後においても実施するとともに、千例について延べ三千回接種後の安全性に関する調査を実施することとしている。 六について お尋ねの公費助成の在り方については、御指摘のワクチンの有効性及び安全性を踏まえつつ、今後、検討してまいりたい。 七について サーバリックスを含む新医薬品の製造販売の承認に当たっては、承認前に詳細な資料の提出を求めて厳格な審査が実施されているが、承認時までに集めることのできる臨床試験症例数等にはおのずから制約があることから、承認後も引き続き新医薬品の使用成績等の調査を行い、一定期間経過後にその安全性及び有効性の再確認を行っているところである。 また、御指摘の「任意型」及び「対策型」の意味するところが必ずしも明らかでないが、子宮頸がんワクチンの接種に係る公費助成の在り方については、今後、検討することとしている。 八について サーバリックスの臨床データについては、五についてで述べたとおり、製造販売業者であるグラクソ・スミスクライン株式会社における追跡調査等により把握することとしている。 九について サーバリックスの有効性については、承認審査において、接種時及び接種後六か月後におけるHPV十六型又は十八型の感染の有無、HPV十六型又は十八型に対する血清抗体価、HPV十六型又は十八型に起因する子宮頸がんの前駆病変の有無等により評価を行っており、「抗体価だけでワクチンの効果を評価」したとの御指摘は当たらないものと考えている。 十について お尋ねの無料接種を実施している地方自治体の数及び名称は承知していないが、何らかの公費助成を実施又は実施を予定している市区町村については、厚生労働省のホームページにおいて「法定接種以外のワクチンの公費助成調査について」として公表しているところであり、その数は、平成二十二年七月二十六日時点で百二十六市区町村である。 十一について サーバリックスの海外での接種規模については、グラクソ・スミスクライン株式会社からの報告によれば、平成二十一年十一月時点において、世界百三か国において販売され、平成二十二年一月までの全世界における累積供給数は約九百九十二万接種回数分である。 また、欧米でのサーバリックスの承認日は、欧州連合が平成十九年九月二十日、米国が平成二十一年十月十六日であると承知しているが、それぞれの国又は地域の医薬品の規制当局において、有効性、安全性等を確認の上、承認されたものと考えている。 また、我が国においても、厚生労働省において、サーバリックスの品質、有効性及び安全性を確認した上で、平成二十一年十月十六日に承認したところであり、これを受けて、製造販売業者であるグラクソ・スミスクライン株式会社が販売を開始したものである。 十二について お尋ねの「生命倫理上」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。 十三について 学校教育における性に関する指導においては、児童生徒の発達段階を踏まえることが重要であるが、セクシャルデビューという単語を使用することと性行動との関係について把握しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。 十四について お尋ねのサーバリックスの「基本的情報」は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページにおいてサーバリックスの添付文書として掲載している。 また、御指摘のように子宮頸がんによる死亡者を減少させるためには早期発見による早期治療が重要であることから、独立行政法人国立がん研究センターのホームページ等を通じて、子宮頸がん検診の重要性について周知徹底を図っているところである。 |