質問主意書

第175回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一九号

内閣参質一七五第一九号
  平成二十二年八月二十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員福島みずほ君提出菅直人内閣における死刑執行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出菅直人内閣における死刑執行に関する質問に対する答弁書

一、二、六及び八について

 個々具体的な死刑執行の判断にかかわるお尋ねについては、答弁を差し控えたい。
 法務大臣は、法務省の関係部局に関係記録の内容を十分に精査させた上で、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等につき、慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、死刑執行命令を発しているところであり、御指摘の本年七月二十八日の執行についても、同様の精査・検討を経て、これらの事由等がないと認め、死刑執行命令を発したものであって、御指摘のように、「執行停止の状態が一年を超えてはいけないという政治的な理由」により、「議員資格を失う前にということで」、又は「死刑の存続を結論づけるために意図的に」死刑執行命令を発したものではない。

三及び四について

 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四百七十五条第一項は「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」と規定しており、法務大臣は、その職にある限り、法に定められた職責を誠実に遂行すべきであり、御指摘の本年七月二十八日の執行についても、その職責に基づいて、適切に判断したものである。

五について

 法務大臣が御指摘の死刑執行命令書に署名したのは、本年七月二十四日であるところ、法務大臣が御指摘のように同月二十八日の死刑の執行に先立ち、枝野民主党幹事長に対してこれを告げたという事実はなく、政府としては、同幹事長が御指摘の発言をした根拠については、お答えする立場にない。

七について

 お尋ねの勉強会については、法務大臣を座長とし、法務副大臣及び法務大臣政務官並びに法務省内の関係部局の職員によって構成する法務省内の勉強会であり、本年八月六日に第一回会合を開催した。
 同勉強会は、法務省内部の勉強会であり、その議事については、公開することを予定していないものの、今後、法務省においては、傍聴もできる開かれた場で死刑存置論者や死刑廃止論者を含む様々な立場の方から幅広く意見を聴取することを検討している。
 また、同勉強会の成果を発表する時期については、現時点では未定である。

九について

 東京拘置所の刑場について、本年八月中に、マスメディアの取材の機会を設けるべく法務省の関係部局において検討を進めているところであり、現時点でその計画内容を具体的にお示しすることはできない。
 東京拘置所以外の刑場について、現時点でマスメディアの取材の機会を設ける予定はない。

十について

 死刑確定者に対する取材の可否については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)その他の関係法令に基づき、当該死刑確定者を収容する刑事施設の長において適切に判断するものと考えている。

十一について

 個々具体的な死刑執行にかかわるお尋ねについては、答弁を差し控えたい。

十二について

 お尋ねの点については、法務大臣の職にある者それぞれの判断にゆだねられているものと考えている。

十三について

 死刑に関して国民の間で幅広い観点からの議論が行われることが望ましいという法務大臣の考えに変わりはないが、死刑執行命令を発することは法務大臣に課された重要な職責であり、法務大臣の職にある限り、法に定められた職責を誠実に遂行すべきものと考えている。

十四及び十五について

 死刑は、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であるとともに、死刑制度の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題であるので、国民世論の動向に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えている。
 この問題については、諸外国における動向等も参考にする必要があるものの、基本的には、各国において、当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討し、独自に決定すべきものであると考えているところ、七についてで述べた勉強会においては、この問題に関する国内外の動向にも留意しつつ、検討を行うことといたしたい。