質問主意書

第175回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三五号

子宮頸がんワクチン接種に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年八月六日

山谷 えり子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   子宮頸がんワクチン接種に関する質問主意書

 子宮頸がんは遺伝などに関係なく、近年では二十代後半から三十代の若い女性の発症率が増加しているといわれている。
 この子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染であるとされている。近年この子宮頸がんの発症の原因であるHPVの予防ワクチン(以下単に「ワクチン」という。)が開発され、昨年十月に厚生労働省はその販売を承認し、十二月二十二日より一般の医療機関でそれを接種することができるようになった。
 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、子宮頸がんのリスク要因として、低年齢での初交、性的パートナーが多い、多産、他の性行為感染症が報告されている。
 HPVは百種類以上もあり、このうち約十五種類が子宮頸がんになるハイリスクタイプといわれる。厚生労働省が承認した英グラクソ・スミスクライン社のワクチン「サーバリックス」は、子宮頸がんの原因ウイルスHPV十六型と十八型の二種類の感染を予防するとされる。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 我が国における子宮頸がんによる年間の死亡者数を示されたい。

二 我が国において新たに子宮頸がんと診断された年間の罹患者数を示されたい。また、早期発見で切除すれば、それ以上の進行や転移を防げることが多く、生命保険約款でも対象外となっている場合もある上皮内がんとそれ以外の内訳も示されたい。

三 HPVに感染した場合に、子宮頸がんに発展する割合を示されたい。

四 何故、近年二十代後半から三十代の若い女性の子宮頸がん発症率が増加しているのか、政府の見解を示されたい。

五 承認間もないワクチンの長期的な効果及びその副作用についてどのように考えているか。また、ワクチンへの公費助成の検討もされている中で、その費用対効果についての見解を示されたい。さらに、ワクチン接種後の経年チェックについての対応をどのように考えているのか示されたい。

六 HPVの型の流行性には地域差があるといわれている。欧米諸国では、子宮頸がん患者の原因としてHPV十六型と十八型が八十~九十%を占めるのに対して、日本では両者が占める割合は五十~七十%程度と報告されている。五十~七十%程度に有効なワクチンへの公費助成のあり方は、どうあるのが適切か。

七 「サーバリックス」の説明書には「本剤の予防効果の持続期間は確立していない」とある。また、同製品の販売開始は昨年十二月であり、まだ再審査期間中の薬品に対する公費助成のあり方はどうあるのが適切か。現段階で任意型でなく対策型に組み入れるのは適切か。

八 ラットのデータでは、抗HPV十六抗体あるいは抗HPV十八抗体が乳汁中に移行することが報告されている。授乳中のワクチン接種に関する安全性は確立していないと「サーバリックス」の説明書にある。また、同説明書の薬効薬理には、本剤により誘導された血清中抗HPVlgG抗体が子宮頸部粘膜に滲出し、子宮頸がんの主要原因である病原性HPVの持続的な感染を予防していると考えられていると記載されている。
 ワクチンの長期的な効果、副作用の検証が十分でない中で、母乳や子宮頸部に与える影響の情報も当然十分でないと考えられるが、経年チェックの中で臨床データを今後どう集めていくのが適切と考えるか。

九 抗体価だけでワクチンの効果を評価しても大丈夫と考えているか。

十 現在、全国の地方自治体で本ワクチンへの公費助成を表明する動きが広がっており、東京都杉並区では「中学入学お祝いワクチン」と称して区内の医療機関で無料接種を開始した。このような地方自治体はどのくらいあるのか。自治体名を具体的に示されたい。

十一 ワクチンは海外ではどの程度の規模で接種され、効果はどのように考えられているのか。また、長期のフォローアップデータがないうちに、欧米では何故こんなに早く承認したのか。さらに、日本で昨年十二月より販売を開始したのは何故か、政府の考えを示されたい。

十二 ワクチンの主な対象は十一~十四歳の若年層となっているが、ローティーンの女子に接種することは生命倫理上、どのような悪影響をもたらすか、政府の考えを示されたい。

十三 年齢にふさわしい性教育は必要と考えるが、すでに製作されている複数の子宮頸がん予防パンフレットの中に「セクシャルデビュー前に」なる言葉が使われている。セクシャルデビューなる単語を用いての教育は不適切と考える。初交年齢を結果として早めることになりはしないか。政府の見解を示されたい。

十四 政府はワクチンの基本的情報(リスクを含む)を各自治体や国民に提供すべきではないか。また、ワクチンだけでは限界があり、がん検診の受診との併用が肝要であることの周知徹底も必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。