質問主意書

第175回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二一号

口蹄疫問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年八月四日

紙 智子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   口蹄疫問題に関する質問主意書

 本年四月二十日に発生が確認された宮崎県の口蹄疫は、発生農場の家畜二十一万千六百八頭、ワクチン接種農家の家畜七万六千七百五十六頭の殺処分という空前の畜産被害をもたらしただけでなく、関連産業、地域経済に深刻な打撃を与えて、七月二十七日に移動制限と搬出制限が解除され、終息を迎えた。
 そして、いよいよ、畜産復興、地域復興に取り組む段階となった。また、二度とこのような甚大な被害を生じさせない口蹄疫予防対策の確立も急がれる。ついては、以下のとおり質問する。

一 畜産農家の経営再建について

1 当該地方自治体や地域経済は畜産業に深く依拠しており、被害畜産農家がもれなく経営再建をすることが、当該地方自治体の財政や地域経済の再建にとって不可欠であると考えるが、政府はどのようにこの問題を認識しているか。
2 被害畜産農家の中には精神的打撃も受け、経営再建に向けて悩みを抱えている畜産農家もある。政府が精神的サポートも含めて経営再建に向けて支援すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 口蹄疫対策特別措置法は、被害畜産農家の経営再建について、その第二十二条で「当該者に対し事業の再建等に必要な資金の無利子の貸付け、当該事業に係る施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他の必要な措置を講ずるものとする」としているが、被害畜産農家に対する経営支援としては、資金の無利子貸付けに限定する考えなのか。
4 畜産経営は、収入になるまでの飼育期間が長く、経営が回転している場合は良いが、今回のように飼育している家畜がすべて淘汰された場合は、経営が軌道に乗るまで数年かかり、家畜の種類によって一年から三、四年の無収入期間が生じる。養豚では、親豚を導入して、妊娠させ、子豚が生育して、販売できるまで、一年半かかる。この間は、無収入なだけでなく、エサ代や施設固定費などの経費がかかる。牛の場合は、三年から四年程度の無収入期間が生じる。この無収入期間の生活費や経費のめどが立たなければ、経営再開は出来ない。また、多くの畜産農家は、多額の負債を抱えているとともに、デフレ経済の中で飼料高と販売価格の低迷に苦しんでいた。それだけに、新たな借金と言える融資による経営再建はとてもできないというのが畜産農家の共通した声である。この点について政府はどのように認識しているのか。
5 口蹄疫対策特別措置法第二十二条では「その他の必要な措置を講ずる」としているが、この規定に基づいて被害畜産農家の経営再建のために、政府は直接財政支援を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
6 被害畜産農家には、預託畜産農家も存在する。それらの預託畜産農家については、何の被害補償もなされていない。このままでは、預託畜産農家は、経営存続ができない。政府として、経営再建できるような支援をすべきであるが、見解を明らかにされたい。

二 地域再生のための支援について

1 口蹄疫対策特別措置法第二十三条の「基金の設置」について、これは、政府が設置するのか、宮崎県が設置するのか、政府の見解を明らかにされたい。
2 仮に宮崎県が設置をした場合、政府はその基金に対して財政支援をするべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 宮崎県下の当該市町村が基金を設置した場合も、政府が財政支援をするべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 基金の運用として、被害畜産農家の経営再建支援にも使われるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
5 畜産業に密接した経営をしている家畜人工授精師、牛削蹄師、農業ヘルパーなどは、今回の口蹄疫被害で仕事を失っており、経営支援措置が求められているが、政府の対応を明らかにされたい。

三 口蹄疫予防対策について

1 全国に口蹄疫を拡散させないための口蹄疫情報ネットワークの確立について
 宮崎県における口蹄疫発生に限らず、アジア全体で口蹄疫は発生しており、日本への侵入の可能性は絶えずあるといえる。口蹄疫の症状がでた家畜の情報をいち早く掴み、迅速な防疫措置をとれるように、農家や獣医が直接国に情報伝達する情報ネットワークを早急に確立すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
2 口蹄疫の日本への侵入を極力抑えるための検疫の強化と、アジアの口蹄疫を押さえ込むための国際協力の強化について
 口蹄疫の検疫は、従来、生きた家畜と肉製品を中心としているが、飼料の稲ワラなどの検疫も強化するとともに、人によるウイルスの侵入も可能性としてあり、空港や港湾などでの口蹄疫発生地域からの入国者の靴底の消毒の徹底などの検疫も強化すべきである。また、アジアにおける口蹄疫の押さえ込みのために国際協力を強化するべきである。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。