質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第六二号

内閣参質一七四第六二号
  平成二十二年五月十一日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出沿岸漁業振興策の見直しの必要性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出沿岸漁業振興策の見直しの必要性に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 沿岸漁業の漁獲量の減少及び資源量の低下は、海水温等海洋環境が変化したこと、沿岸域の開発等により水産動植物の産卵及び育成の場となる藻場・干潟が減少したこと、一部の水産資源について回復力を上回る漁獲が行われたこと等の様々な要因が影響しているものと考えている。
 なお、昭和五十一年度から平成十三年度までの間に漁港法の一部を改正する法律(平成十三年法律第九十二号)附則第二十六条による改正前の沿岸漁場整備開発法(昭和四十九年法律第四十九号)第二条に規定する沿岸漁場整備開発事業により実施した魚礁設置に係る総事業費は、五千四百二億円である。

一の3について

 現在農林水産省が取りまとめている漁業・養殖業生産統計年報においては、漁業種類別・魚種別の漁獲量の統計を作成しているが、お尋ねの統計を作成するためには、さらに、各漁業種類について漁船規模別に分け、データを把握する必要があり、膨大な作業を要し、多大な時間と人員が必要となることから困難である。

二の1について

 平成二十年度に、広域漁場整備事業、水域環境保全創造事業等により整備された藻場及び干潟の面積は合わせて約千三百ヘクタールであるが、藻場の整備は、海底における工事及び海藻の育成を伴うものであるという性質上、干潟の整備と比べより多くの時間と経費を要することから、藻場の整備面積は約百八十ヘクタールとなっている。
 なお、平成二十二年度予算においては、藻場の整備等を内容とする広域漁場整備事業、水域環境保全創造事業等に重点的に配分し、各都道府県からの要望に対応していくこととしている。

二の2について

 平成六年から平成十年にかけて五万八千七百五十四ヘクタールの藻場が減少しているとの御指摘であるが、平成六年に取りまとめられた平成元年から平成三年までの環境庁(当時)の全国を対象とした藻場の分布調査では、水深二十メートル以浅の藻場を対象として面積を集計しており、平成十年に取りまとめられた平成八年から平成九年までの同様の調査では、水深十メートル以浅の藻場を対象としている。また、後者の調査結果では、二県のデータが欠落している。このような調査対象の違いから、この二回の調査データを比較して全国の藻場の増減を検討することは適切でないと考えている。
 なお、藻場の減少は、一般的には沿岸域の開発等によるものと考えられている。
 政府としては、藻場・干潟の減少に歯止めをかけるため、広域漁場整備事業、水域環境保全創造事業等による藻場・干潟の整備や漁業者等が行う藻場・干潟の保全活動に対する支援を行っているところである。

三について

 都道府県等における種苗放流の推進については、都道府県等の裁量の下で、自主的に取組を進めることとされているが、政府としては、都道府県の区域を越えて移動する水産動物について資源回復計画等を効果的に推進する観点から、関係する都道府県間の連携の下に効果的に進めることが重要であると考えており、平成二十二年度予算において、栽培漁業資源回復等対策事業により、適地での放流の推進等海域ごとの効果的な種苗放流体制の構築を図るため財政的な支援を行っているところである。

四の1について

 漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第四条第一項第二号に基づき行う魚礁の設置(以下単に「魚礁の設置」という。)については、平成十一年の会計検査院による改善の処置要求を踏まえ、「並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用について」(平成十二年九月二十一日十二水推第一五八九号水産庁資源生産推進部整備課長通知)を関係都道府県に通知し、魚礁の設置後における実績数値を把握させることとしたところである。

四の2について

 お尋ねの事業については、事業着手前に漁獲量の増加効果について事前評価を実施し、効果が見込まれることを確認した上で、実施しているところである。

四の3について

 魚礁の設置に使用する魚礁の種類は、事業の設計図書においてあらかじめ定められるものであり、事業主体が魚礁の開発業者と契約を結ぶものではないが、事業主体が設計図書を作成するに当たっては、事前に対象魚種や地域の漁業形態等を踏まえ、関係漁業者と調整するなど、適切な手続を経て作成しているものと認識している。

四の4について

 御指摘の「魚礁メーカー」の意味が必ずしも明らかでないが、過去十年間に水産庁を退職し、魚礁の開発業者に再就職した者は五名いる。しかしながら、四の3についてで述べたように、魚礁の選定の際に適切な手続を経ているものと認識しており、事業の在り方に影響を与えることはないと考える。