質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第五三号

内閣参質一七四第五三号
  平成二十二年四月十六日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出風力発電に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出風力発電に関する質問に対する答弁書

一の1及び二の1について

 風力発電施設の設置基数及び設備容量については、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)が調査を行っているが、平成二十一年度末時点の設置基数及び設備容量については、現時点では未集計であることから、お答えすることは困難である。また、平成二十年度末時点の設置基数は千五百十七基、設備容量は百八十五万四千キロワットであり、調査が開始された昭和六十年度から平成二十一年度までの間に撤去又は休止された風力発電施設の基数は七十三基、設備容量は一万七千キロワットである。なお、撤去又は休止された理由については把握していない。
 風力発電施設による年間発電量実績については、電気関係報告規則(昭和四十年通商産業省令第五十四号)第二条に基づき電気事業者及び自家用電気工作物(出力千キロワット以上の風力発電所に限る。)を設置する者から経済産業省に提出された報告書によると、平成十九年度の発電量実績は二十六億キロワットアワー、平成二十年度の発電量実績は二十九億キロワットアワーである。なお、平成二十一年度の発電量実績については、現時点では未集計であることから、お答えすることは困難である。

一の2について

 御指摘の「「二〇一〇年度末までに三百万キロワット」という目標」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、京都議定書目標達成計画(平成十七年四月二十八日閣議決定)においては、対策が想定される最大の効果を上げた場合における風力発電の導入の目標値を、二千八年度から二千十二年度までの間に原油換算で百三十四万キロリットル(約三百万キロワット相当)としている。また、平成二十一年八月に総合資源エネルギー調査会需給部会が策定した「長期エネルギー需給見通し(再計算)」においては、実用段階にある最先端のエネルギー関連技術が最大限導入された場合における風力発電の導入量は、二千二十年には約五百万キロワット、二千三十年には約六百六十万キロワットになるとの見通しが示されている。
 なお、政府においては、現在、地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ検討会における地球温暖化対策に係る中長期ロードマップに関する検討や、総合資源エネルギー調査会総合部会基本計画委員会におけるエネルギー基本計画の変更に関する検討を行っているところであるが、その結果により、風力発電を含む再生可能エネルギーの今後の導入量の見通しは変動するものと考えている。
 いずれにせよ、政府としては、各種支援策を通じて着実に風力発電の導入を推進してまいりたい。

一の3について

 経済産業省においては、平成九年度から、民間事業者等が風力発電施設を設置する際の費用の一部を補助しており、平成二十一年度までに、合計で千二百九十三億二千六百六十六万八千九百四十一円を交付している。

二の2について

 政府として要望書等により把握している稼働中の風力発電施設から発生する騒音及び低周波音について周辺住民等から苦情のある市町村のうち、平成二十年度以前に把握したものは、静岡県東伊豆町、愛知県豊橋市、愛知県田原市、兵庫県南あわじ市及び愛媛県伊方町、平成二十一年度に把握したものは、静岡県南伊豆町、島根県江津市及び山口県下関市である。なお、景観に関する苦情については把握していない。

二の3について

 御指摘の「計画段階」及び「建設以前」の定義が必ずしも明らかではないことから、お尋ねにお答えすることは困難である。なお、経済産業省においては、民間事業者等が風力発電施設を設置する際の費用の一部を補助するに当たり、申請者に環境影響調査及び地元住民との協議等の実施を求めている。

三の1から4までについて

 風力発電施設の周辺住民の健康影響の原因について、様々な指摘があることは承知しているが、一般に、健康影響と風力発電施設の稼働との間の関係については明らかとはなっていないものと承知している。
 環境省が平成二十一年度に行った調査は、風力発電施設から発生する騒音及び低周波音の実態を把握するため、風車近傍や苦情者の住宅内外において同時測定を行ったものである。また、平成二十二年度からは、平成二十一年度の調査結果等を踏まえて、全国の風力発電施設を対象とした周辺住民の苦情の有無等に関する現況調査や低周波音による苦情のあるすべての風力発電施設を対象とした風車音等に関する詳細調査を行い、低周波音の発生と苦情との関連性を研究するとともに、被験者実験を行い低周波音が人に対して心理的・生理的影響を与えるか否かを研究すること等をその内容とする、「風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」を行うこととしている。
 今後とも、風力発電施設の稼働に伴う騒音等の影響について注視し、仮に健康影響と風力発電施設の稼働との間の関係が明らかになった場合には、適切な措置について検討してまいりたい。
 なお、御指摘の「風力発電のための環境影響評価マニュアル」については、NEDOが風力発電の導入の際のガイドラインの一つとして作成したものであり、現時点で直ちに見直すべきものとは考えていない。また、本年二月の中央環境審議会の答申「今後の環境影響評価制度の在り方について」においては、風力発電施設の設置を環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)の対象事業として追加することを検討すべき旨が明記されており、政府としては、当該答申を踏まえ引き続き検討を行ってまいりたい。

三の5について

 風力発電施設を設置する民間事業者等は、風況及び輸送用の道路の状況、系統連系のための送電線の容量等の様々な要素を基に事業性等を総合的に勘案して、風力発電の適地か否かを決定するものと承知している。また、経済産業省においては、民間事業者等が風力発電施設を設置する際の費用の一部を補助するに当たり、申請者に環境影響調査及び地元住民との協議等の実施を求めている。

四の1について

 平成二十一年度に交付決定された新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金のうち、新エネルギー等事業者支援対策費補助金に関する新エネルギー等ごとの申請件数、採択件数及び交付決定された金額は、それぞれ次のとおりであると承知している。
 太陽光発電 五百九十一件 四百四十九件 五十五億四千四百五十九万九千三百六十三円
 風力発電 六十七件 四十一件 二百十八億六千六百二万八千七百六十三円
 太陽熱利用 十五件 十三件 六千七百六十四万六千五百九十二円
 温度差エネルギー 一件 一件 六百万円
 バイオマス発電 四件 二件 十九億三千九百十九万九千六百八十三円
 バイオマス熱利用 十一件 九件 五億二千四百十四万五千四百八十四円
 バイオマス燃料製造 十六件 十件 三億三千二十三万一千三百二十五円
 雪氷熱利用 二件 一件 一億一千四百八十万四千三百三十二円
 水力発電 十三件 十三件 三億四千二百九十四万一千九百一円
 地熱発電 申請無し
 天然ガスコージェネレーション 十一件 八件 三億八千九百九十三万九千八百四十三円
 燃料電池 申請無し
 また、地域新エネルギー等導入促進対策費補助金に関する新エネルギー等ごとの申請件数、採択件数及び交付決定された金額は、それぞれ次のとおりであると承知している。
 太陽光発電 三百七十四件 二百五十四件 二十二億二千六百万七千八百六十六円
 風力発電 十六件 十五件 八億三百三十六万二千七百五十円
 太陽熱利用 四十二件 三十六件 五億二千四百六万三千七百三円
 温度差エネルギー 申請無し
 バイオマス発電 申請無し
 バイオマス熱利用 十一件 十一件 二億三千五百一万一千百一円
 バイオマス燃料製造 一件 一件 五百二十五万円
 雪氷熱利用 二件 一件 四十一万七千五百円
 水力発電 三十件 二十九件 十二億三千二百四十七万三千八百八十五円
 地熱発電 申請無し
 天然ガスコージェネレーション 十五件 十二件 三億五千三百九十五万三千八百四十六円
 燃料電池 申請無し
 さらに、同年度の第一次補正予算で措置された新エネルギー導入促進基金造成事業費補助金については、太陽光発電設備のみが対象とされたものであるが、二百六十三件の申請のうち二百四十九件が採択され、三十二億一千八百六十三万五百八十五円が交付決定されたものと承知している。

四の2から4までについて

 新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金は、膨大な業務をより効率的に執行するために民間団体による間接補助としたものである。
 当該補助金に係る補助事業者として公募手続を経て決定した一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(以下「NEPC」という。)は、新エネルギーの各分野に関する幅広い技術的知見や、当該補助事業を遂行するために必要な実施体制及び管理体制を備えた団体であると考えている。また、NEPCは、当該補助金の公募要領において、個々の情報の公表・非公表の取扱いについては行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく情報開示に準ずる旨定めており、経済産業省としては、NEPCにおいて適切な情報開示が行われるよう指導してまいりたい。

五の1について

 お尋ねの「計画・設計」について、事業規模から一概にお答えすることは困難である。また、お尋ねの「補助金の積算単価はどのように設定しているのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金については、補助対象経費に対して一定の補助率での交付を行っている。

五の2から5までについて

 政府としては、風力発電施設の設置は、地元の理解を得た上で実施されるべきと考えており、例えば、民間事業者等が風力発電施設を設置する際の費用の一部を補助するに当たっては、申請者に地元住民との協議等の実施を求めている。なお、個々の説明会の対象範囲や、民間事業者等による第三者への個々の対応の適切性等について、政府としてお答えすることは差し控えたい。
 また、御指摘の「六億七千万円」は、平成二十一年度補助金として交付されたものと承知している。

五の6について

 御指摘のような複数年度にわたる補助金の交付が具体的に決定されているという事実はない。また、新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金は、毎年度交付申請を行う必要がある。

五の7について

 日本風力開発株式会社に確認したところ、現在同社には取締役として、元経済産業省職員が在籍しているとのことである。

五の8について

 風力発電施設の設置により、自然環境への影響が生じるとの指摘がなされていることは承知しており、風力発電施設の設置に当たって、自然環境の保全等との両立を図る必要があると考えている。政府としては、例えば、民間事業者等が風力発電施設を設置する際の費用の一部を補助するに当たり、申請者に環境影響調査及び地元住民との協議等の実施を求めている。