質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第三六号

内閣参質一七四第三六号
  平成二十二年三月九日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員加藤修一君提出稀少な水資源にかかる水源林など国土資源保全のための戦略的取り組みに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出稀少な水資源にかかる水源林など国土資源保全のための戦略的取り組みに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「いわゆる「総合安全保障」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、我が国の食料安全保障については、世界の穀物等の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせ、食料自給率の向上を図ることを旨として、総合的な食料安全保障を確立することが必要であると考えている。
 この一環として、世界の食料安全保障への貢献及び我が国の農産物輸入の安定化・多角化を図る観点から、海外農業投資を支援することとしている。また、気候変動問題への適応としては、農作物に対する高温障害を回避するための技術開発等を進めているところである。

二について

 林地における国土調査法(昭和二十六年法律第百八十号)に基づく地籍調査(以下「地籍調査」という。)の実施については、森林管理の情報を地籍調査に活用する等、国土交通省と林野庁が連携してその促進を図っているところであり、政府としては、このような連携を強化することにより、今後とも林地の地籍調査の進捗率の向上に努めてまいりたい。

三について

 御指摘の「オープンな林地市場を創設」の意味するところが必ずしも明らかではないが、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)においては、森林の土地の売買について特段の規制を設けておらず、森林の土地の売買は他の土地の売買に比して取引の透明性等を欠いているものではないことから、現在のところ、森林の土地であることに着目して新たに取引に係る市場の創設等を行う必要はないものと考えている。
 また、森林の土地の価格については、国土利用計画法施行令(昭和四十九年政令第三百八十七号)第九条の規定により、都道府県知事は自由な土地取引において通常成立すると認められる価格である単位面積当たりの土地の標準価格を判定することとなっており、森林の土地についても、その判定の対象となっていることから、現在のところ、森林の土地のみについて取引価格の適正化を図るための制度を設ける必要はないものと考えている。

四及び五について

 御指摘の「重要水源林」の意味するところが必ずしも明らかではないが、森林の土地の利用に関しては、国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)に基づく土地取引規制制度、森林法に基づく保安林制度や民有林における開発行為に対する許可制度等が設けられており、これらの制度等により適正かつ合理的な土地利用の確保、水源のかん養を始めとする森林の有する公益的機能の維持が図られているところである。

六について

 政府としては、木材の品質の安定化と安定供給を図ることが重要であると考えており、森林施業の集約化、作業道の整備、高性能林業機械の導入等を進めるとともに、品質の確かな木材製品の供給が可能な施設の整備や専門家による製材工場に対する技術・経営指導等を進めているところである。
 また、森林法に基づく森林施業計画制度を通じた森林施業の実施や受委託が進むよう、森林施業計画に基づく森林施業に対する補助、税制上の優遇等の措置を講じているところである。
 さらに、農林水産省においては、適切な森林施業を確保するため、森林計画制度や支援の在り方について検討しているところである。

七について

 政府としては、林業及び木材産業の発展を図る上で地域材の利用を促進することが重要であると考えており、地域材を低コストで安定的に供給する体制の整備のほか、森林所有者から住宅生産者までの関係者が一体となって消費者が納得する地域材を使用した家づくりを行う「顔の見える木材での家づくり」への支援等に取り組んでいるところである。
 なお、御指摘の「地域認証材の利活用」に対する支援措置については、地方公共団体が地域の実情に応じて取り組んでおり、政府としては、こうした取組を全国に紹介することで地域認証材の利用の促進に努めているところである。

八について

 政府としては、林業労働力の確保を促進し、林業労働者の雇用の安定を図るためには林業労働の社会的評価の向上が重要であると考えており、このため、林業労働力の確保の促進に関する法律(平成八年法律第四十五号)に基づき都道府県知事が指定する林業労働力確保支援センターにおける林業労働者に対する技術の研修、林業労働の重要性について国民の関心及び理解を深める広報活動等の実施に取り組んでいるところである。
 さらに、政府としては、公共職業安定所における職業紹介及び職業指導の実施のほか、「緊急人材育成支援事業」、「建設業と地域の元気回復助成事業」等の活用により、雇用保険を受給できない者の林業への就業や建設業者の林業への参入を促進する等、林業にかかわる人材の確保、育成等に努めているところである。